猫は恋したので、カフェに行く(仮)

月詠世理

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話しの前なのに混乱に陥る(35話)

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 温かい飲み物と冷たい飲み物を間違え、作り直すということがあったが、何事もなく閉店となった。お客様に届く前に気づけて良かった。アイツには注意されたけど、それはごもっともな意見だったので、受け入れた。各々が片付けをしたり、掃除をしたり、レジ締めをしたりしていた。それらの作業を終えると、スタッフルームに人が集まった。山城先輩は「あとはよろしく」と言って、先に帰ってしまったけれど。

「あの、話って何? 私も話したいことがあるからそっちの話が終わってからちょっとだけでも時間を作ってもらえると……」
「はぁ!? 何それ聞いてねーよ」
「今言ったもん!」
「もん、じゃねーつーの。そういうのは早めに言っておくことだろ?」

 そんなこと話すタイミングがあったら、言ってると思い、ジロリと睨んだ。その私の反応にピクリっと眉を動かした夕羽に、睨み返される。険悪になりそうであった。

「まあまあ、2人とも落ち着いて。はい、2人とも深呼吸深呼吸」
「あっ、すみません!!」
「邪魔すんなよな」

 奥村先輩がいるのに、醜態を晒してしまった。 夕羽コイツのせいで。ふと、湧き上がってきた怒りと先輩に対して威圧的な態度をとっているヤツに足を踏んでやろうと思ったけれど、先輩がいるから我慢した。これ以上、ムキになってはいけない。先輩にそんな姿は見せられない。そうだ、深呼吸して落ち着こう。

「夕羽。僕たちの話を聞いてもらうんだから、かえでちゃんの話を聞くくらいいいじゃないか」
「そういうことじゃないんだよ。俺は早く寮に帰りたいんだ」
「仕事終わったし、早く帰れるなら帰りたいのは、僕もかえでちゃんも同じだと思うけど。」
「俺たちとコイツを一緒にすんなよ。それに、コイツは俺のものだから、気を遣わなくていいんだ」

 いや、ぜんっぜん、違うから。誰がアンタのものにいつなったんだ、と疑問しかない。それに、私のことをあんなに責めてきてたけれど、私情だったことがわかって、アンタが私に気を遣え、とさえ思った。だから、なぜ私には気を遣う必要がないことになるのか、意味がわからない。

「夕羽、いくらなんでも暴論すぎやしないか?」
 (そうだ、そうだー!! 先輩のおっしゃる通りだー!!)
「ぜんっぜん!! そんなことねぇ!! だって、コイツは俺の……俺の……彼女だし?」
「はっ?」
「え? そうなの?」

 バッと勢いよく私の方を向く奥村先輩。困惑しているようだった。私は夕羽との関係を誤解されては困るので、激しく左右に首を振って、否定した。
 好きな人に好きじゃない人と付き合ってるのかとさらっと確認されて、必死に否定するのはどんな状況なんだろうか。もうすでにパニックだよ。そもそもアイツが彼女と言い出したことさえ、変なことやらかすための言動じゃないかとヒヤヒヤしている。

「あのさー、お前ら、俺のこと仲間はずれにしないでくんない? そろそろ本題にいくぞー」

 平然と言い出すヤツに。

「夕羽、ふざけすぎだ。かえでちゃんに失礼だし、なによりそんなことばっかりやってると嫌われるぞ」

 奥村先輩が淡々と指摘していた。夕羽はそれをものともせず、飄々とした態度であったけれど。

 ――ありがとうございます。そして、ごめんなさい、先輩。ソイツのことはわりと嫌いです。流石に、口に出しては言う場の流れではないから言えないよね。
 先輩は優しい。でも、先輩の優しさはきっと……。

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