猫は恋したので、カフェに行く(仮)

月詠世理

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先生の話ともらった飲み物(30話)

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 今回の実技授業で優秀な成績を収めたものは些細な賞金が与えられるらしい。神妙な表情を浮かべている先生。

「お金欲しさに賞金がある場所に侵入しないように! 先生たちが協力した強固なセキュリティを解除するなんてことはしないように! 変な気は絶対に起こさないでください」

 釘を刺された。凄む様子に前例があったのかもしれないと思った。案の定、どうやって解かれたのかいまだにわからないなんて、とボソッとした呟きがあった。このことを聞いたことにより、実際にあったのだと信憑性が増した。お金が欲しくて侵入するという点で思い当たる人が一人いる。この思い浮かんでいる人が実際にそんなことをしていたのかはしらないけれど。

「賞金は実力で勝ち取ってくださいね! 留年になるよりも酷い罰になりますから」

 侵入した生徒は賞金が欲しくてセキュリティを解除に至ったのであって、一応学年で優勝はしていたそうだ。そのため、留年で済んだだけだそう。本来ならもっと重い罰であるらしい。賞金を盗もうとしているのだから、普通なら留年決定で終わるはずないよね。優勝しているなら賞金を渡されるまで待てばよかったのに。ちなみに、賞金は譲渡されてが、即座に没収されたそうだ。

「今回の実技授業は成績評価があります。今週中にメンバーを探してください。不参加は最低評価に加えて留年確定です。では、皆さん頑張ってくださいね」

 ホームルームが終わり、先生が教室から出ていった。ザワザワと騒がしくなる。四人集まるのか、チームを作れるのか、不安だ。とりあえず、飲み物を買ってこよう。すぐにチームを作れるわけでもないし、考えるのはあとでも良いだろう。

「かえで」
「あ、舞凛まりちゃん。どうかしたの?」
「ハイ、コレ」

 机に置かれたのは、お水だった。先読みでもしているのかと思うほど私のことを理解しているようだ。丁度喉が渇いていたので、助かる。

「ありがとう、舞凛ちゃん!! 待って、いくらだった?」

 カードを用意して、金額を入力してポイントを渡そうとした。そこで舞凛ちゃんに止められた。

「別に返さなくていいわ。時間があったから買っておいただけだもの。それより、実技授業のことよ」
「四人って集まらなさそうだよね。少なくとも留年する人はいそう」
「それはわからないけど、私たちで二人だから、あとの二人はかえでがどうにか勧誘して来なさい」
「えっ!?」

 舞凛ちゃんの中で私とチームと組むことは決定事項のようだ。それは嬉しいことだが、舞凛ちゃんよりも友達が少ない私にどうしろと言うんだ。無茶振りがすぎる。私と組みたい人なんているとは思えないし。どうやって他の人を引きいれるか頭を抱えていたところ、耳元で呟かれる。くすぐったい。

「そこら辺の近寄ってくる変なのはダメよ。断りなさい。かえでの足を引っ張ることしか考えてないから」

 自分自身の成績を引き換えにしてまで私のことを邪魔したい人がいるとは思えないから、それは考えすぎではないだろうか。舞凛ちゃんの意図が読めなかった。それに私が誘えそうな人がいるとは思えないのだが。

「わからないフリしてないで、いるでしょう。奥村さんとあんたの幼馴染が。近しい人であるかえでなら良い返事をもらえるはずよ。そのためのお水でもあるんだから頼んだからね」

 賄賂だったらしい。それを知らずに水を飲んだ私はすでに罠にはめられていた。あの二人に相談もしていないのにチームを組むことができるのだろうか。でも、他の人とチームを作ってたら誘うことはできない。そのため、「期待しないでよ」とコソコソ返事をした。後が怖いので、やるしかない、とは思っている。
 この話をするのに、なんで舞凛ちゃんは耳元で呟いたのか疑問だ。隠し事を話すように小さな声でやり取りをしていたが、普通に話すのではダメだったのかなと今更ながら思った。
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