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問い詰める(25話)
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山城先輩が椅子ごとぐるぐる巻きにされている人に近づいた。
「あなたの推しがあなたのことを大嫌いと言ってました。もう二度と来ないでください、だそうです」
これを聞いた石英さんは顔を勢いよく上げ、起きた。
「ねぇ!? それホント!? え? マジ?」
目覚めたばかりだが元気な様子。騒がしいくらいだ。たぬき寝入りでもしていたのかと疑うが、眠らせたのは夕羽だし、道中に起きる気配もなかったし、それはないだろうと結論が出る。必死な様子の石英さんの質問。
「知りません」
山城先輩が淡々とした答えていた。
「さーちゃん、冗談でもそんな怖いこと言っちゃだめだよ。知らないならホントやめてね!?」
「真実にするので問題ありません」
「真顔で問題しかねーこと言うな!」
涙目になりながら意見した石英さんに追い打ちをかけるように声をかけた奥村先輩。その先輩の言葉に鋭い突っ込みがされた。
ふと、寒気でもしたのか、夕羽のトゲトゲしい視線に気づいて、息を呑む石英さん。
「ミッチー次第で現実にもなるし、夢にもなる。だから、洗いざらい吐きなよ」
推しに嫌われるとメンタルがやられるのかもしれない。そういうことはわたしにはわからないけれど、好きな人に嫌われるのは傷つくよね。それが現実になるかもしれないなんて気分が落ち込むよ。
体全体を使ってガタガタと椅子を揺らしながら抗議する石英さん。
「さっちゃん、りっちゃんに続き、ゆっちゃんまで。この道が何をしたって言うんだ!! 悪ふざけは良くないぞ。いじめならなお良くない」
「知らないフリですか? 心当たりありますよね?」
「そんなのあるわけねーでしょ。ホントになんも知りません。早くこの縄外してよ。学園のアイドルに会いに行ける時間が過ぎちゃうじゃないか!」
縄から抜け出そうとする石英さん。それを冷ややかに見つめる私以外の人。
夕羽からの情報によると、カフェの様々なトラブルはこの人のせいらしいが、知らないと否定している。この人は利用されただけで、自らの意思でやっていない可能性もあるのだろうか。
「信じられないので、あなたが推しに会いに行ける予定は今のところナイです」
「正直に話してくだされば、その縄をほどくことを考えます」
「推しを選ぶか、依頼人を選ぶか」
「なんでよっ! みんな信じてって! 道はホントに何もしてないの。無罪。無罪を主張する。ほら、そこの子も何か言って」
私に話を振られても困る。首を左右に振って拒否すると、疲しそうな表情をされた。捨てないで、と言っているようで。
「猫宮さん、ソレに構うことはないです。あれの用意を」
石英さんに傾きかけた気持ちが山城先輩の言葉によって、皆側へ戻ってくる。私を味方にしようとしたのだろうが、上手くいくことはなかった。危なかった。夕羽が声に出してはいないけれど、アホ、と口を動かしてるのが見えた。それにたじたじとなるが、今回はどう考えても私が悪いよなと思う。
机に近づく私。お昼休憩の時に、こんなのあったかなと思うような大きな紙袋と小さな紙袋が複数置かれていた。その一つの袋の中に私は手を入れ、触れたものを取り出す。片手では難しかったので、両手を使って。出てきたのは、箱に入ったミニフィギュアみたいなものだった。
「あっ!? それ!! なんで!?」
「あなたは金と推しの味方。だから、素直に言いたいことが言えるように僕たちがあなたの部屋から持って来ました」
「りっちゃんの悪魔! プレミアム品も持って来てないよね? 僕が大事に大事に保管してるものとか!!」
「目についたもの片っ端から持ってきたからわかんね。ゴメンナ、ミッチー」
「謝るならやるなよ、ゆっちゃん。それに、こんなことが許されるわけがない!」
「ミッチーのルームメイトの人が許してくれたし、許されるでしょ。あ、俺たちミッチーにお願いされて持ち出すことになったって言ったから責めんなよ」
石英さんの目が泳ぎ出した。日は動いているが、縄から抜けるのに動かしていた体は止まっている。
「そ、そこの君。それ、丁重に扱ってよ。壊されたらガチでなくからね!?」
「それはあなた次第です。嘘をついたらここにある品は燃えるか、塵になるか、売られるか、潰されるかします。あっ、試すとこんな感じです。奥村くん」
先輩がいつの間にかポスターを取っていたらしい。それが燃やされた。
「ギャーーーー!!!!」
ショックで悲鳴を上げて、暴れていた。そのせいで、椅子ごと倒れた。
「ミッチー大丈夫?」
「ゆっちゃん、これが大丈夫に見えるのか? 僕の心はボロボロだぞ?」
「先輩、大丈夫だって。それに、ちゃんと息してる」
「倒れる前に衝撃が軽くなるようにしておいたし、どこか痛むってことはないと思うよ。ここに連れてくるまでの夕羽にやられた傷は酷いけど」
夕羽と奥村先輩は倒れた椅子を立てた。ボロボロと泣き出した石英さん。
「胸が痛いっつーの!!」
大声で先輩に言葉を返していた。
「あなたが嘘を吐く度にあなたが汗水垂らしてかき集めたグッズがどうなるか理解できたでしょう。これからの質問に嘘偽りなく答えてくださいね? 一つ目、妖精の隠れ家に何かしましたか?」
「な、なんもしてないってさっきから……」
先程の元気な様子はなく、怯えている感じの石英さん。震える声で返事をしたものの私が持っていた箱が山城先輩に持ち上げられて、床に落とされた。そして、箱ごと潰される。
予想通り、「ギャー」という大きな悲鳴が上がった。
「猫宮さん、じゃんじゃん持って来て。奥村くんも風間くんも遠慮はいらないから、好きにやりなさい」
これがまだまだ続くとか控えめに言っても言わなくても地獄でしかない。石英さんのグッズは最後には何が残るのだろうか。この勢いだと全てなってそうな気もする。
「あなたの推しがあなたのことを大嫌いと言ってました。もう二度と来ないでください、だそうです」
これを聞いた石英さんは顔を勢いよく上げ、起きた。
「ねぇ!? それホント!? え? マジ?」
目覚めたばかりだが元気な様子。騒がしいくらいだ。たぬき寝入りでもしていたのかと疑うが、眠らせたのは夕羽だし、道中に起きる気配もなかったし、それはないだろうと結論が出る。必死な様子の石英さんの質問。
「知りません」
山城先輩が淡々とした答えていた。
「さーちゃん、冗談でもそんな怖いこと言っちゃだめだよ。知らないならホントやめてね!?」
「真実にするので問題ありません」
「真顔で問題しかねーこと言うな!」
涙目になりながら意見した石英さんに追い打ちをかけるように声をかけた奥村先輩。その先輩の言葉に鋭い突っ込みがされた。
ふと、寒気でもしたのか、夕羽のトゲトゲしい視線に気づいて、息を呑む石英さん。
「ミッチー次第で現実にもなるし、夢にもなる。だから、洗いざらい吐きなよ」
推しに嫌われるとメンタルがやられるのかもしれない。そういうことはわたしにはわからないけれど、好きな人に嫌われるのは傷つくよね。それが現実になるかもしれないなんて気分が落ち込むよ。
体全体を使ってガタガタと椅子を揺らしながら抗議する石英さん。
「さっちゃん、りっちゃんに続き、ゆっちゃんまで。この道が何をしたって言うんだ!! 悪ふざけは良くないぞ。いじめならなお良くない」
「知らないフリですか? 心当たりありますよね?」
「そんなのあるわけねーでしょ。ホントになんも知りません。早くこの縄外してよ。学園のアイドルに会いに行ける時間が過ぎちゃうじゃないか!」
縄から抜け出そうとする石英さん。それを冷ややかに見つめる私以外の人。
夕羽からの情報によると、カフェの様々なトラブルはこの人のせいらしいが、知らないと否定している。この人は利用されただけで、自らの意思でやっていない可能性もあるのだろうか。
「信じられないので、あなたが推しに会いに行ける予定は今のところナイです」
「正直に話してくだされば、その縄をほどくことを考えます」
「推しを選ぶか、依頼人を選ぶか」
「なんでよっ! みんな信じてって! 道はホントに何もしてないの。無罪。無罪を主張する。ほら、そこの子も何か言って」
私に話を振られても困る。首を左右に振って拒否すると、疲しそうな表情をされた。捨てないで、と言っているようで。
「猫宮さん、ソレに構うことはないです。あれの用意を」
石英さんに傾きかけた気持ちが山城先輩の言葉によって、皆側へ戻ってくる。私を味方にしようとしたのだろうが、上手くいくことはなかった。危なかった。夕羽が声に出してはいないけれど、アホ、と口を動かしてるのが見えた。それにたじたじとなるが、今回はどう考えても私が悪いよなと思う。
机に近づく私。お昼休憩の時に、こんなのあったかなと思うような大きな紙袋と小さな紙袋が複数置かれていた。その一つの袋の中に私は手を入れ、触れたものを取り出す。片手では難しかったので、両手を使って。出てきたのは、箱に入ったミニフィギュアみたいなものだった。
「あっ!? それ!! なんで!?」
「あなたは金と推しの味方。だから、素直に言いたいことが言えるように僕たちがあなたの部屋から持って来ました」
「りっちゃんの悪魔! プレミアム品も持って来てないよね? 僕が大事に大事に保管してるものとか!!」
「目についたもの片っ端から持ってきたからわかんね。ゴメンナ、ミッチー」
「謝るならやるなよ、ゆっちゃん。それに、こんなことが許されるわけがない!」
「ミッチーのルームメイトの人が許してくれたし、許されるでしょ。あ、俺たちミッチーにお願いされて持ち出すことになったって言ったから責めんなよ」
石英さんの目が泳ぎ出した。日は動いているが、縄から抜けるのに動かしていた体は止まっている。
「そ、そこの君。それ、丁重に扱ってよ。壊されたらガチでなくからね!?」
「それはあなた次第です。嘘をついたらここにある品は燃えるか、塵になるか、売られるか、潰されるかします。あっ、試すとこんな感じです。奥村くん」
先輩がいつの間にかポスターを取っていたらしい。それが燃やされた。
「ギャーーーー!!!!」
ショックで悲鳴を上げて、暴れていた。そのせいで、椅子ごと倒れた。
「ミッチー大丈夫?」
「ゆっちゃん、これが大丈夫に見えるのか? 僕の心はボロボロだぞ?」
「先輩、大丈夫だって。それに、ちゃんと息してる」
「倒れる前に衝撃が軽くなるようにしておいたし、どこか痛むってことはないと思うよ。ここに連れてくるまでの夕羽にやられた傷は酷いけど」
夕羽と奥村先輩は倒れた椅子を立てた。ボロボロと泣き出した石英さん。
「胸が痛いっつーの!!」
大声で先輩に言葉を返していた。
「あなたが嘘を吐く度にあなたが汗水垂らしてかき集めたグッズがどうなるか理解できたでしょう。これからの質問に嘘偽りなく答えてくださいね? 一つ目、妖精の隠れ家に何かしましたか?」
「な、なんもしてないってさっきから……」
先程の元気な様子はなく、怯えている感じの石英さん。震える声で返事をしたものの私が持っていた箱が山城先輩に持ち上げられて、床に落とされた。そして、箱ごと潰される。
予想通り、「ギャー」という大きな悲鳴が上がった。
「猫宮さん、じゃんじゃん持って来て。奥村くんも風間くんも遠慮はいらないから、好きにやりなさい」
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