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呼びに行く(22話)
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縄でぐるぐる巻きにされた一人の男がいた。
「ずびばぜんでじだ。ゆるじで。もう勘弁じでぐだざい」
泣いて謝っている。一体彼の身に何が起こったのだろうか。そして、彼は誰なのだろうか。
***
奥村先輩が私のクラスに来て、妖精の隠れ家が臨時休業であることを話してくれた。再開日は週明けを予定している。そのためには皆が話していた『石英』という人が頑張らないといけないらしい。システム面はその人に任せているそうだから。返金する人の調査もしないといけないだろうし、大変そうだと思う。自業自得であるらしいが。
多くの人の前に立って話す先輩はすごい。私だったら声が小さくなる。接客しているから度胸はついたと思うが、複数人の前で話すのは苦手だ。先輩によるお知らせは終わりを迎えて、軽くお群儀をして教室を退出した。
先生の話が少しあってホームルームが終わる。私はお知らせの紙を掲示板に張って、皆が言っていた教室 に行けばいい。
「猫宮さん、ちょっといい? 話があるんだけど」
想定してなかったことが起きた。紙を張りつけたところ、私は数人に囲まれた。それで代表の子に話かけられてたよう。一対複数だし、集まっている子たちは敵を見るような憎たらしい人を見るような目で私を見てくるし、怖い。ジャンプして逃げようにも、空間が足りない。どうにかして切り抜けようと口を開こうとする。そこにある人が現れた。
「おいっ! お前何してんだよ。これから行くところあるんだぞ。友達と談笑してないでさっさと行くぞ」
大きな声を出して、人をかき分けてやってきた夕羽。呼ばれて助けられたのは事実だが、どう見たら楽しそうに見えるのだろうか。コイツ目はおかしいのかもしれない。
急いでるのはわかったから、グイグイ引っ張っていくのやめて。力強いし、腕がもげそう。
「すみません! また今度!!」
後ろを見て、これを言うことしかできなかった。あの人たちにこの声が聞こえているだろうか。できることなら話したくないので、相手をする日が来ないことを祈ろう。あの目で私を射抜くんだよ。それを受け止めないといけないのは精神的にやられそうだし。知らず知らずのうちに恨まれるようなことでもしたのかなと思ったが、何かした心当たりは全くない。
「お前さ、ホント気をつけろよ。何かあったら俺でもいいし、山城先輩でも陸斗でもお前の信頼できる友達でも最悪椿先生でもいいから、ちゃんと相談しろ。溜め込もうとするなよ」
唐突に、いつになく真面目なことを言い出したので、調子が狂う。茶化す雰囲気でもなく、素直に聞き入れることしかできなかった。夕羽がいつもと違う様子なので、ペースを乱されて戸感っているうちに、例のあの人がいるだろう教室の近くににやって来たみたいだ。
「あの教室な。じゃあ、健闘を祈る」
私はそれに頷いて、教室に向かった。開いている扉から中を覗く。そこで教室から出ようとした人と遭遇したので、声をかける。
「すみません。石英さんという方はいらっしゃいますか?」
「石英? あっ、まだいるよ。呼んでくればいい?」
急に話しかけられたため、戸惑った様子ではあったが、対応してくれるようだ。
「お願いします」
勢いの良い返事が出た。声をかけた相手は再び教室へ戻り、誰かを引きずってくる。引きはがそうと抵抗した姿がみられたが、無理だったようだ。
「石英、いつこんな綺麗な子と知り合いになったんだよ。紹介くらいしろよな」
「えー、こんな子知らないよ。誰?」
「え? 知らないの?」
手を離されて、立ち上がり、制服を叩く。黒縁の丸眼鏡をかけていて、髪は茶色で目は橙色。他の男の人と比べると背が低めのような人だ。
この人に確認をする。
「はじめまして。こんにちは。あなたが石英さんで合っていますか?」
「はじめまして。こんにちは。うん、合ってるよ。――ほら、この人も僕のこと知らなかったでしょ。――それで? 何か用? 早めに終わらせてね。行くところあるから」
途中、石英さんを連れてきた人への質問に対する答えのような言葉も挟んでいたが。この人が私がお
連れする相手で合っているようだ。私は素早く手を取った。
「えーと……すみません! 一緒にきてください!!」
手首に手錠をつける。あっけにとられて反応できていなかった石英さん。
「まさかっ!!」
何かを察したように抵抗する。すでに遅いとわかったのか、今度は手錠を壊そうと動く。無理だったようで憔悴していた。
石英さんより私の方が背は低い。抵抗されて、なかなか前に進めず、逆に引っ張られて徐々に引きずられていくので、手首が折れるかと思った。手錠は壊れないものだし。そんな中、夕羽がやってきて、手伝ってくれる。
「ミッチーごめんな。山城先輩と陸斗から確保命令でてるから。罪状は心あたりあるだろうし、覚悟しておけよ」
石英さんの顔面に香水のようなものを何回も吹きかけていた。
「夕羽、それ何?」
「癒しの香りで眠りを誘う液体らしい。これで安眠できるってやつ。一度に三回まで吹きかけるものなんだけど、この人だし、使用量守らなくてもだいじょぶか』
使用量は守ろうよ。副作用があったら大変だし。
「あいつまた何かやらかしたんだな。何も見てない、何も聞いてない。ここで何かが起こったなんてことは一切なかった。――よし、帰ろう」
この一部始終を見ていた石英さんを呼びにいってくれた人は、何かを察したようで。関わらないことにしたらしい。妥当な判断だろう。
あの人の反応からも思うが、度々問題を起こしているように取れる発言があるから、石英さんは相当な問題児なのかもしれない。
「ずびばぜんでじだ。ゆるじで。もう勘弁じでぐだざい」
泣いて謝っている。一体彼の身に何が起こったのだろうか。そして、彼は誰なのだろうか。
***
奥村先輩が私のクラスに来て、妖精の隠れ家が臨時休業であることを話してくれた。再開日は週明けを予定している。そのためには皆が話していた『石英』という人が頑張らないといけないらしい。システム面はその人に任せているそうだから。返金する人の調査もしないといけないだろうし、大変そうだと思う。自業自得であるらしいが。
多くの人の前に立って話す先輩はすごい。私だったら声が小さくなる。接客しているから度胸はついたと思うが、複数人の前で話すのは苦手だ。先輩によるお知らせは終わりを迎えて、軽くお群儀をして教室を退出した。
先生の話が少しあってホームルームが終わる。私はお知らせの紙を掲示板に張って、皆が言っていた教室 に行けばいい。
「猫宮さん、ちょっといい? 話があるんだけど」
想定してなかったことが起きた。紙を張りつけたところ、私は数人に囲まれた。それで代表の子に話かけられてたよう。一対複数だし、集まっている子たちは敵を見るような憎たらしい人を見るような目で私を見てくるし、怖い。ジャンプして逃げようにも、空間が足りない。どうにかして切り抜けようと口を開こうとする。そこにある人が現れた。
「おいっ! お前何してんだよ。これから行くところあるんだぞ。友達と談笑してないでさっさと行くぞ」
大きな声を出して、人をかき分けてやってきた夕羽。呼ばれて助けられたのは事実だが、どう見たら楽しそうに見えるのだろうか。コイツ目はおかしいのかもしれない。
急いでるのはわかったから、グイグイ引っ張っていくのやめて。力強いし、腕がもげそう。
「すみません! また今度!!」
後ろを見て、これを言うことしかできなかった。あの人たちにこの声が聞こえているだろうか。できることなら話したくないので、相手をする日が来ないことを祈ろう。あの目で私を射抜くんだよ。それを受け止めないといけないのは精神的にやられそうだし。知らず知らずのうちに恨まれるようなことでもしたのかなと思ったが、何かした心当たりは全くない。
「お前さ、ホント気をつけろよ。何かあったら俺でもいいし、山城先輩でも陸斗でもお前の信頼できる友達でも最悪椿先生でもいいから、ちゃんと相談しろ。溜め込もうとするなよ」
唐突に、いつになく真面目なことを言い出したので、調子が狂う。茶化す雰囲気でもなく、素直に聞き入れることしかできなかった。夕羽がいつもと違う様子なので、ペースを乱されて戸感っているうちに、例のあの人がいるだろう教室の近くににやって来たみたいだ。
「あの教室な。じゃあ、健闘を祈る」
私はそれに頷いて、教室に向かった。開いている扉から中を覗く。そこで教室から出ようとした人と遭遇したので、声をかける。
「すみません。石英さんという方はいらっしゃいますか?」
「石英? あっ、まだいるよ。呼んでくればいい?」
急に話しかけられたため、戸惑った様子ではあったが、対応してくれるようだ。
「お願いします」
勢いの良い返事が出た。声をかけた相手は再び教室へ戻り、誰かを引きずってくる。引きはがそうと抵抗した姿がみられたが、無理だったようだ。
「石英、いつこんな綺麗な子と知り合いになったんだよ。紹介くらいしろよな」
「えー、こんな子知らないよ。誰?」
「え? 知らないの?」
手を離されて、立ち上がり、制服を叩く。黒縁の丸眼鏡をかけていて、髪は茶色で目は橙色。他の男の人と比べると背が低めのような人だ。
この人に確認をする。
「はじめまして。こんにちは。あなたが石英さんで合っていますか?」
「はじめまして。こんにちは。うん、合ってるよ。――ほら、この人も僕のこと知らなかったでしょ。――それで? 何か用? 早めに終わらせてね。行くところあるから」
途中、石英さんを連れてきた人への質問に対する答えのような言葉も挟んでいたが。この人が私がお
連れする相手で合っているようだ。私は素早く手を取った。
「えーと……すみません! 一緒にきてください!!」
手首に手錠をつける。あっけにとられて反応できていなかった石英さん。
「まさかっ!!」
何かを察したように抵抗する。すでに遅いとわかったのか、今度は手錠を壊そうと動く。無理だったようで憔悴していた。
石英さんより私の方が背は低い。抵抗されて、なかなか前に進めず、逆に引っ張られて徐々に引きずられていくので、手首が折れるかと思った。手錠は壊れないものだし。そんな中、夕羽がやってきて、手伝ってくれる。
「ミッチーごめんな。山城先輩と陸斗から確保命令でてるから。罪状は心あたりあるだろうし、覚悟しておけよ」
石英さんの顔面に香水のようなものを何回も吹きかけていた。
「夕羽、それ何?」
「癒しの香りで眠りを誘う液体らしい。これで安眠できるってやつ。一度に三回まで吹きかけるものなんだけど、この人だし、使用量守らなくてもだいじょぶか』
使用量は守ろうよ。副作用があったら大変だし。
「あいつまた何かやらかしたんだな。何も見てない、何も聞いてない。ここで何かが起こったなんてことは一切なかった。――よし、帰ろう」
この一部始終を見ていた石英さんを呼びにいってくれた人は、何かを察したようで。関わらないことにしたらしい。妥当な判断だろう。
あの人の反応からも思うが、度々問題を起こしているように取れる発言があるから、石英さんは相当な問題児なのかもしれない。
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