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集まり2 (21話)
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本日のカフェは臨時休業だ。アプリのことなどがあり、お休みすることにしたらしい。山城先輩と夕羽が昨夜の帰り道で決めたことで、奥村先輩は夕羽の連絡で集まって話すことを知ったようだ。私は説明なく連れてこられたのに、先には説明してたのか。ジーッと夕羽を見ると、そっぽを向いて逃げられた。
「学園の掲示板にお知らせの紙を張っておいたし、各クラスにも配っておいた。あなたたちのクラスはあなたたちに任せようと思って、これ渡すわ
ね」
山城先輩から臨時休業とその理由が書かれた紙を受け取った。これをクラスの掲示板に張ったり、みんなに知らせたりすれば良いのだろうか。
「めんどっ! せんぱーい。みんなに見えるところに張っておくだけでいいですか?」
「風間くん。大事なお知らせなんだからめんどくさがらない。ちゃんと話しておいてよ」
「はあ、わかりました。めんどい……」
げんなりとした表情で紙を睨んでいる夕羽。奥村先輩は彼らのやり取りをニコニコと微笑んで眺めていた。
「じゃあ、僕はかえでちゃんのクラスの人たちにも話しておくよ」
「えっ? 人前で話すのは苦手ですけど私伝えられますよ? 奥村先……くんの手を借りることでは――」
「うん、かえでちゃんならしっかりみんなに話せると思ってるよ。でも昨日のことがあったし――あ、いや、僕個人の事情だから気にしないで」
途中何か言っていたようだが、なんと言っていたのだろうか。声が小さくて聞き逃してしまった。気にしないでと言われてもこういうことは気になってしまう。信用はされているのだろうが、任されないのはなぜなのかと思う。先輩の笑顔の守りで聞くことができる雰囲気でもなかったので、口をつぐんだ。
「じゃあ、猫宮さんのクラスは奥村くんにお願いするわ。――ウチも現状はそうするのがいいと思うし」
「そんな不満そうにすんなよ。陸斗がお前の分もやりたいって言ってんだからやらせとけよ。そういうことで、俺の分もよろしくな。面倒なことは他人に任せられるときは任せるに限る」
良いことがひらめいたとでもいうような得意げな表情で、奥村先輩を見る。それに対して、やれやれと首を緩く左右に振っている先輩。
「夕羽は自分でやれって言いたいとこだけど、それがいいかもね。先生に他のクラスに行くことを前もって伝えておかないとな」
「わーありがとう陸斗。よろしくな」
棒読みなお礼に先輩はニッコリと笑う。夕羽を見る目が恐ろしいと思うのは気のせいだろうか。
「はい、二人ともそれくらいにして。あのどうしようもないやつを捕まえないといけないんだから!!」
「どうしようもないやつ?」
首を傾げた。私以外の人たちはその人のことが思い浮かんでいるようだ。
「そんなのコイツに任せるしかないだろ。俺たちじゃ逃げられるだろうし」
「そこは夕羽の言う通りだね。あの人呼ぶのが最大の難関みたいなとがあるし。騙し騙しでやっていくしかないからなぁ」
「そういうことで猫宮さん、お願いできる? これはあなたにしかできないことよ」
山城先輩の策士。後半の魅力的な言葉にぐっと顔を寄せてしまう。机越しなので遠くはあるけれど。それにみんなの役に立てるなら物によるが、できることはやりたいと思うし。
「全くもって難しくねーから。あるクラスに行って石英てやつを呼べばいいだけ」
「風間くんの言う通りよ。呼んだ後に逃げられないようにこの手錠をつければ完璧よ。ふふふふふふふふ、特別製だから壊れる心配もない」
「や、山城先輩?」
「あ、山城さんそれできてたんですか? 僕も一つ欲しいです」
不気味な笑みを浮かべる人と爽やかな笑みを浮かべている人がいた。両者共に怖く感じて、近寄りがたい雰囲気をしている。
「俺は網が欲しい。狙い定めて飛んでいくやつ」
夕羽だけはおもちゃを欲しがる子のように瞳を輝かせていた。
不穏な雰囲気を醸し出していたのだが、いち早く、正気を取り直した山城先輩。
「ということで、初対面で警戒されにくいあなたにあのどうしようもない男を連れてくることを任じます」
「わ、わかりました。そ、それで、どこにお連れすれば良いのでしょうか?」
「この教室に連れてくればいいよ。かえでちゃん、気負うことはないから。最終兵器もあるし」
「いや、絶対連れて来いよ。この昼飯の金払ってもらわないとだし」
たくさん入っている袋の中身の支払いはその人がするらしい。知らせていないのに大丈夫なのだろうか。
「気にすることないわ。あいつに慈悲はなくていいの」
「そうそう。特にかえでちゃんは怒っていいことだと思うし」
皆でお昼ご飯を食べながらその人について話していた。私が怒っていいというのは良くわからないが、任されたことは成し遂げたい。
休憩の終わりが迫ってきた時に、放課後に備えて、ある道具を渡された。
「学園の掲示板にお知らせの紙を張っておいたし、各クラスにも配っておいた。あなたたちのクラスはあなたたちに任せようと思って、これ渡すわ
ね」
山城先輩から臨時休業とその理由が書かれた紙を受け取った。これをクラスの掲示板に張ったり、みんなに知らせたりすれば良いのだろうか。
「めんどっ! せんぱーい。みんなに見えるところに張っておくだけでいいですか?」
「風間くん。大事なお知らせなんだからめんどくさがらない。ちゃんと話しておいてよ」
「はあ、わかりました。めんどい……」
げんなりとした表情で紙を睨んでいる夕羽。奥村先輩は彼らのやり取りをニコニコと微笑んで眺めていた。
「じゃあ、僕はかえでちゃんのクラスの人たちにも話しておくよ」
「えっ? 人前で話すのは苦手ですけど私伝えられますよ? 奥村先……くんの手を借りることでは――」
「うん、かえでちゃんならしっかりみんなに話せると思ってるよ。でも昨日のことがあったし――あ、いや、僕個人の事情だから気にしないで」
途中何か言っていたようだが、なんと言っていたのだろうか。声が小さくて聞き逃してしまった。気にしないでと言われてもこういうことは気になってしまう。信用はされているのだろうが、任されないのはなぜなのかと思う。先輩の笑顔の守りで聞くことができる雰囲気でもなかったので、口をつぐんだ。
「じゃあ、猫宮さんのクラスは奥村くんにお願いするわ。――ウチも現状はそうするのがいいと思うし」
「そんな不満そうにすんなよ。陸斗がお前の分もやりたいって言ってんだからやらせとけよ。そういうことで、俺の分もよろしくな。面倒なことは他人に任せられるときは任せるに限る」
良いことがひらめいたとでもいうような得意げな表情で、奥村先輩を見る。それに対して、やれやれと首を緩く左右に振っている先輩。
「夕羽は自分でやれって言いたいとこだけど、それがいいかもね。先生に他のクラスに行くことを前もって伝えておかないとな」
「わーありがとう陸斗。よろしくな」
棒読みなお礼に先輩はニッコリと笑う。夕羽を見る目が恐ろしいと思うのは気のせいだろうか。
「はい、二人ともそれくらいにして。あのどうしようもないやつを捕まえないといけないんだから!!」
「どうしようもないやつ?」
首を傾げた。私以外の人たちはその人のことが思い浮かんでいるようだ。
「そんなのコイツに任せるしかないだろ。俺たちじゃ逃げられるだろうし」
「そこは夕羽の言う通りだね。あの人呼ぶのが最大の難関みたいなとがあるし。騙し騙しでやっていくしかないからなぁ」
「そういうことで猫宮さん、お願いできる? これはあなたにしかできないことよ」
山城先輩の策士。後半の魅力的な言葉にぐっと顔を寄せてしまう。机越しなので遠くはあるけれど。それにみんなの役に立てるなら物によるが、できることはやりたいと思うし。
「全くもって難しくねーから。あるクラスに行って石英てやつを呼べばいいだけ」
「風間くんの言う通りよ。呼んだ後に逃げられないようにこの手錠をつければ完璧よ。ふふふふふふふふ、特別製だから壊れる心配もない」
「や、山城先輩?」
「あ、山城さんそれできてたんですか? 僕も一つ欲しいです」
不気味な笑みを浮かべる人と爽やかな笑みを浮かべている人がいた。両者共に怖く感じて、近寄りがたい雰囲気をしている。
「俺は網が欲しい。狙い定めて飛んでいくやつ」
夕羽だけはおもちゃを欲しがる子のように瞳を輝かせていた。
不穏な雰囲気を醸し出していたのだが、いち早く、正気を取り直した山城先輩。
「ということで、初対面で警戒されにくいあなたにあのどうしようもない男を連れてくることを任じます」
「わ、わかりました。そ、それで、どこにお連れすれば良いのでしょうか?」
「この教室に連れてくればいいよ。かえでちゃん、気負うことはないから。最終兵器もあるし」
「いや、絶対連れて来いよ。この昼飯の金払ってもらわないとだし」
たくさん入っている袋の中身の支払いはその人がするらしい。知らせていないのに大丈夫なのだろうか。
「気にすることないわ。あいつに慈悲はなくていいの」
「そうそう。特にかえでちゃんは怒っていいことだと思うし」
皆でお昼ご飯を食べながらその人について話していた。私が怒っていいというのは良くわからないが、任されたことは成し遂げたい。
休憩の終わりが迫ってきた時に、放課後に備えて、ある道具を渡された。
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