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集まり(20話)
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それは突然のことだった。誰かが私を呼びに教室まで来たらしい。その人から話を聞いた人が知らせてくれた。私は貴重品を含め、いろんなものが入っているカバンを持つ。物が紛失することが多いから用心しておいて悪いことはない。扉へと足を進めた。
「あれ? いない」
キョロキョロと辺りを見回すも見つからなかった。悪戯だったのかなと教室の中へ戻ろうとした時、腕を引っ張られる。
「ちょっと!!」
こんなことをするのは一人しかいない。引っ張って進んでいく相手に抗議した。
「いいから、いくぞ。集合場所」
一体何の集まりだ。事前にお知らせはなかったのだろうか。それとも私にだけは直前に知らされることなのだろうか。全くわからないままついていくことになる。
逃げようとしているわけではないので、いい加減引っ張るのはやめてほしい。腕が疲れるから。普通に歩かせて。できれば説明を求める。
そうしているうちに徐々に進んでいき、到着したところは防音機能がある教室。ある装置に魔力を流すことで、防音機能が展開されるらしい。
教室の使用には許可がいるはず。勝手に入って問題ないのかと心配になった。
「よしっ、あいつらが来る前に適当に机と椅子並べるぞ」
やっと腕を話されたと思ったら少しの労働が待っていた。あいつら、とは誰のことだろうか。わからないまま、近くにあった机と椅子を運ぶ。
「これでいいだろ。おい、もう運ばなくていいぞ」
四つの机と四つの椅子。この数からして、私と夕羽の他にあと二人いるということだ。夕羽が意地悪して私の席を除いていなければの話だが。
「それで、夕羽。どういうこと? 誰が来るの?」
「あ? 知らせてなかったっけ? 陸斗と山城先輩だよ。あいつら来るまで待機」
「教えてもらってないよ。強引に連れてこられただけで。で? なんの集まり? それも説明してほしいんだけど」
「あとでわかる。あいつら来るまで待ってればいいの!」
もしかしてコイツ何の集まりがあるのか知らないのだろうか。私の考えを悟っているかのように、タイミングよくギロリと睨まれてしまった。この反応からすると夕羽は知っていそうだ。説明が面倒で省いているらしい。私はため息を吐いた。
「かえでちゃん、夕羽、お待たせ」
「こんにちは」
急なことで肩がはねた。ぐるっと振り向くと、そこには奥村先輩と山城先輩がいた。中身がいっぱいに詰まっている袋を両手に持っている奥村先輩。
「こんにちは。えーと、それ重くないですか?」
「平気だよ。ありがとう」
山城先輩に挨拶を返し、袋を指して尋ねた。奥村先の爽やかな笑顔が見られた。反則だ。心の準備ができていなかったよ。
「おいっ! 陸斗。そんなポンコツ相手してないで、さっさと置けよ。重いだろ?」
バンッと机を叩かれた音が響いた。それに驚きつつ、視線を多羽へ向ける。それは先輩方も同じようで、目を見開いていた。
「夕羽。僕重くないって言ったよ」
「平気って言っただけだろ。重くないとは聞いてない」
「屁理屈ごねるなよ」
困ったように笑う先報は袋を机に乗せた。その様子を見て、気まずそうに尋ねる夕羽。
「あれ、買ってきた?」
「なるほど。早くお目当てのものを食べたかったわけか。人のこと言えないくいしんぼう」
「山城先輩。俺をコイツと一緒にしないでください!」
別に私もくいしんぼうではない。失礼だ。このやり取りの間に袋の中に手を入れて、ゴソゴソと何かを探している奥村先輩。
「あ、はい。あったよ。当日数量限定スペシャルビッグパン。その分のお金は返してね」
「へぇ~風間くんはそのパンが好き、と。それにしてもよく入手できたね。それ、競争率が高いらしいじゃない。狙う人多かったのでは?」
「すごいですね。奥村先……くん。何度も食べたくなる美味しいパンを買えるなんて。値段高くて毎日は買えないから特別な時に食べるのが丁度いいんですよね」
「かえでちゃん、食べたことありそうだね。幸せそうな表情してた。まあ、僕はもういいかな。山城先輩が言うように人がたくさんいて大変だったし。ただでさえお昼時は混むのに。このおつかいは今回限りとさせてもらうよ。それじゃ、ハイ。味わって食べなよ」
奥村先輩は夕羽にスペシャルビッグパンを差し出した。だが、夕羽はそれを受取ろうといしない。それどころか顔を真っ赤にしている。
「それ、おれのじゃなくて……ソイツのっ!!」
「えっ?」
夕羽が頼んだものなのになんで私のものになるのだろうか。
「ふーん、そういうこと……ひねくれてるな」
「優しさがわかりにくくて伝わってないところが哀れね。猫宮さん、戸惑ってるし」
「あーうるさいな!とりあえず、お前はこれでも食ってろ!!――本題に入りましょう!!」
どうやら夕羽のことを理解していないのは私だけのようだ。口を開いてどういうことなのかを尋ねようとしたところ、パンを突っ込まれる。変な声が出てしまった。
やっぱり、このパン具沢山だし、生地がサクサクしていて食感がいいし、美味しいや。もぐもぐと口を動かしていた。
「あれ? いない」
キョロキョロと辺りを見回すも見つからなかった。悪戯だったのかなと教室の中へ戻ろうとした時、腕を引っ張られる。
「ちょっと!!」
こんなことをするのは一人しかいない。引っ張って進んでいく相手に抗議した。
「いいから、いくぞ。集合場所」
一体何の集まりだ。事前にお知らせはなかったのだろうか。それとも私にだけは直前に知らされることなのだろうか。全くわからないままついていくことになる。
逃げようとしているわけではないので、いい加減引っ張るのはやめてほしい。腕が疲れるから。普通に歩かせて。できれば説明を求める。
そうしているうちに徐々に進んでいき、到着したところは防音機能がある教室。ある装置に魔力を流すことで、防音機能が展開されるらしい。
教室の使用には許可がいるはず。勝手に入って問題ないのかと心配になった。
「よしっ、あいつらが来る前に適当に机と椅子並べるぞ」
やっと腕を話されたと思ったら少しの労働が待っていた。あいつら、とは誰のことだろうか。わからないまま、近くにあった机と椅子を運ぶ。
「これでいいだろ。おい、もう運ばなくていいぞ」
四つの机と四つの椅子。この数からして、私と夕羽の他にあと二人いるということだ。夕羽が意地悪して私の席を除いていなければの話だが。
「それで、夕羽。どういうこと? 誰が来るの?」
「あ? 知らせてなかったっけ? 陸斗と山城先輩だよ。あいつら来るまで待機」
「教えてもらってないよ。強引に連れてこられただけで。で? なんの集まり? それも説明してほしいんだけど」
「あとでわかる。あいつら来るまで待ってればいいの!」
もしかしてコイツ何の集まりがあるのか知らないのだろうか。私の考えを悟っているかのように、タイミングよくギロリと睨まれてしまった。この反応からすると夕羽は知っていそうだ。説明が面倒で省いているらしい。私はため息を吐いた。
「かえでちゃん、夕羽、お待たせ」
「こんにちは」
急なことで肩がはねた。ぐるっと振り向くと、そこには奥村先輩と山城先輩がいた。中身がいっぱいに詰まっている袋を両手に持っている奥村先輩。
「こんにちは。えーと、それ重くないですか?」
「平気だよ。ありがとう」
山城先輩に挨拶を返し、袋を指して尋ねた。奥村先の爽やかな笑顔が見られた。反則だ。心の準備ができていなかったよ。
「おいっ! 陸斗。そんなポンコツ相手してないで、さっさと置けよ。重いだろ?」
バンッと机を叩かれた音が響いた。それに驚きつつ、視線を多羽へ向ける。それは先輩方も同じようで、目を見開いていた。
「夕羽。僕重くないって言ったよ」
「平気って言っただけだろ。重くないとは聞いてない」
「屁理屈ごねるなよ」
困ったように笑う先報は袋を机に乗せた。その様子を見て、気まずそうに尋ねる夕羽。
「あれ、買ってきた?」
「なるほど。早くお目当てのものを食べたかったわけか。人のこと言えないくいしんぼう」
「山城先輩。俺をコイツと一緒にしないでください!」
別に私もくいしんぼうではない。失礼だ。このやり取りの間に袋の中に手を入れて、ゴソゴソと何かを探している奥村先輩。
「あ、はい。あったよ。当日数量限定スペシャルビッグパン。その分のお金は返してね」
「へぇ~風間くんはそのパンが好き、と。それにしてもよく入手できたね。それ、競争率が高いらしいじゃない。狙う人多かったのでは?」
「すごいですね。奥村先……くん。何度も食べたくなる美味しいパンを買えるなんて。値段高くて毎日は買えないから特別な時に食べるのが丁度いいんですよね」
「かえでちゃん、食べたことありそうだね。幸せそうな表情してた。まあ、僕はもういいかな。山城先輩が言うように人がたくさんいて大変だったし。ただでさえお昼時は混むのに。このおつかいは今回限りとさせてもらうよ。それじゃ、ハイ。味わって食べなよ」
奥村先輩は夕羽にスペシャルビッグパンを差し出した。だが、夕羽はそれを受取ろうといしない。それどころか顔を真っ赤にしている。
「それ、おれのじゃなくて……ソイツのっ!!」
「えっ?」
夕羽が頼んだものなのになんで私のものになるのだろうか。
「ふーん、そういうこと……ひねくれてるな」
「優しさがわかりにくくて伝わってないところが哀れね。猫宮さん、戸惑ってるし」
「あーうるさいな!とりあえず、お前はこれでも食ってろ!!――本題に入りましょう!!」
どうやら夕羽のことを理解していないのは私だけのようだ。口を開いてどういうことなのかを尋ねようとしたところ、パンを突っ込まれる。変な声が出てしまった。
やっぱり、このパン具沢山だし、生地がサクサクしていて食感がいいし、美味しいや。もぐもぐと口を動かしていた。
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