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思い浮かばないので17話とだけ(17話)
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現在、店内は非常に落ち着ている。慌ただしさはなくなった。そろそろ開店間近であることもその理由の一つとしてはあるだろう。まだお客様はいるが、店内利用は時間的に厳しいため説明をした上で持ち帰りとなるはずだ。
ベルの音が四回鳴り響いた。通常であれば営業は終了だ。本日はいろいろなことがあり、少数のお客が残っている。商品を受け取り、お店の外に出るまでは終わることはない。注文票の品を用意しつつ、片付けも並行していた。
「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」
あの注文が本日最後のものであったのだろうか。注文票は届かない。遠くからお客を見送る声が聞こえてきた。この後、注文票が送られてこなければ営業は終了すると思われる。
「あ一疲れた。アプリ落ちてるとかふざけんなし。レジも機能しなくて諦めて予備の端末で対応したわ。あの陰険メガネ何してくれてんだよ!!」
怒り気味で裏へやって来た夕羽。これで終わったんだなと思った。今頃、山城先輩がCLOSEの札をして鍵を閉めているところだろう。
「夕羽、お疲れ様。何か知ってるみたいだね」
「このカフェのことだし、俺たち全員に関わることな。あの金好きがやらかしたんだよ」
陰険メガネとか金好きとは一体誰のことだろうか。この二つのワードは同じ人物を指していると思うが。気になりつつも、助けてもらったことのお礼をするのは今しかないと話の流れを切る。私の事情で申し訳ない。
「あの、夕羽……あの時交代してくれてありがと」
ギロッと睨まれる。
「お前さ、なんでもかんでもやろうとしすぎな。コードも口頭の注文もなんてやってたらそれこそ時間かかるだろ。ああいう場合はあえてひとつに集中して対処するのがやりやすいんだよ。ミスも減らせるだろうしな。わかったか? ポンコツ」
ダメだしからの悪口はいかがなものかと思うが、その指摘は正しく学ぶこともあった。悔しさがこみ上げてくる。失敗も不甲斐なさも自己処理することでここで吐き出すことではないので、今は我慢だ。唇を噛んだ。
「まあまあ、そのくらいにしておきなよ。かえでちゃんは良くやってくれたよ。だから、そんなに思い詰めない」
奥村先輩が私の頭をポンポンと優しく叩き、撫でた。そんなことで私の心臓はバクバクと音を立てるし、涙腺が緩みそうになるものだから困ってしまう。この音も泣きそうな表情も見られていないことを願う。負の感情でいっぱいだったのに、先輩のなぐさめで少し心が軽くなったように思えた。私は相当おかしくなっているのかもしれない。
「そんなブス、甘やかすことねーぞ」
この夕羽の一言でいろいろな感情は吹っ飛んでしまう。ジト目で見つめるが、相手にはされなかった。
「夕羽、本心でそう思ってないのに、そういうことを言うから――」
「うるせーよ。口出ししてくんな! ああもうっ! こうすればいいんだろっ!!」
夕羽の手が私の頭に伸びた。咄嗟に避ける。何をするつもりだ、と戸感う。それが顔に出ていたのだと思う。
「普段の行いだね」
奥村先輩は夕羽に言った。その相手はプルプルと震えている。
「お前避けてんじゃねーよ。なぐさめて欲しかったんだろうが!!」
「いや、何されるかわからないし怖いじゃん!!」
「このやろう!!」
頭をグリグリされて痛い。やっぱり、あの手は避けて正解だった。手が離れてすぐに奥村先輩の後ろに行き、隠れさせてもらう。
「ちっ! あの金好き陰険メガネの話するぞ」
「すねたな」
ムッとした夕羽。顔が赤く染まっているが、熱でも出たのだろうか。そもそも何に拗ねたのかも不明だ。この疑問は解決することはないだろう。どもりながらも夕羽の大きな一声が響く。
「う、うるさいっ! いいから聞け! あのバカはレジに細工して使えないようにしたし、アプリもわざと使えないようにしたんだよ」
「追撃されたくなくて必死」
「陸斗黙れ。口挟まずに聞けよ」
すかさずに言い返した夕羽。奥村先輩はため息を吐いて、先を促す。
「わかったよ。どうぞ」
「アイツなんか宣伝して、ココにたくさんの客が来るように仕向けてたぜ。通常運営できてたらちょー喜べたな」
仕組まれたことだったのだろうか。バタバタすることが決められている中で、お客が多く来てしまうようにされてしまうのは、混乱を生みそうだ。
奥村先輩は何かを考えてから、口を出す。
「何を宣伝していたんだ?」
「詳しくは知らねーけど、この店に害が被るようなことはなかったと思うぜ。痛い目みるのはあいつだけのはずだ。クーポンが後日配られるとか聞いてないときに言われてたらわかんねーけど」
「そこは最後まで聞いとけよ。それに、はず、じゃ困るんだよな~」
そこに突然バンッと大きな音が響いた。肩がはねる。びっくりして心臓がドクンドクンと忙しなく音を立てている。勢いよく扉が開かれた音だったようだ。私はゆっくりと呼吸をした。
「あなたたち、話しは後にしなさい。先に片付け。ご飯抜きになるわよ」
寮で夕食が用意されるのだが、その時間に聞に合わなくなるということ。それはまずい。慌てて片付けを再開しようと動き出そうとしたら、待ったをかけられた。
「山城先輩。時間も時間ですし、今日は僕に任せてみんなで先に帰っていいですよ」
「えっ? 一人じゃ――」
「いいから帰るぞー、ポンコツ」
夕羽に腕を引っ張られて、私は引きずられていく。
「悪いわね。じゃあ、頼んだわ。奥村くん」
「任せてください」
二人がいなくなったところを見て、声をかけた山城。奥村はそれに頷き、返事をした。この場に残っているのは彼のみとなる。
「さて、みんなよろしくね」
彼の掛け声で小さな光の玉が次々と出現した。
ベルの音が四回鳴り響いた。通常であれば営業は終了だ。本日はいろいろなことがあり、少数のお客が残っている。商品を受け取り、お店の外に出るまでは終わることはない。注文票の品を用意しつつ、片付けも並行していた。
「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」
あの注文が本日最後のものであったのだろうか。注文票は届かない。遠くからお客を見送る声が聞こえてきた。この後、注文票が送られてこなければ営業は終了すると思われる。
「あ一疲れた。アプリ落ちてるとかふざけんなし。レジも機能しなくて諦めて予備の端末で対応したわ。あの陰険メガネ何してくれてんだよ!!」
怒り気味で裏へやって来た夕羽。これで終わったんだなと思った。今頃、山城先輩がCLOSEの札をして鍵を閉めているところだろう。
「夕羽、お疲れ様。何か知ってるみたいだね」
「このカフェのことだし、俺たち全員に関わることな。あの金好きがやらかしたんだよ」
陰険メガネとか金好きとは一体誰のことだろうか。この二つのワードは同じ人物を指していると思うが。気になりつつも、助けてもらったことのお礼をするのは今しかないと話の流れを切る。私の事情で申し訳ない。
「あの、夕羽……あの時交代してくれてありがと」
ギロッと睨まれる。
「お前さ、なんでもかんでもやろうとしすぎな。コードも口頭の注文もなんてやってたらそれこそ時間かかるだろ。ああいう場合はあえてひとつに集中して対処するのがやりやすいんだよ。ミスも減らせるだろうしな。わかったか? ポンコツ」
ダメだしからの悪口はいかがなものかと思うが、その指摘は正しく学ぶこともあった。悔しさがこみ上げてくる。失敗も不甲斐なさも自己処理することでここで吐き出すことではないので、今は我慢だ。唇を噛んだ。
「まあまあ、そのくらいにしておきなよ。かえでちゃんは良くやってくれたよ。だから、そんなに思い詰めない」
奥村先輩が私の頭をポンポンと優しく叩き、撫でた。そんなことで私の心臓はバクバクと音を立てるし、涙腺が緩みそうになるものだから困ってしまう。この音も泣きそうな表情も見られていないことを願う。負の感情でいっぱいだったのに、先輩のなぐさめで少し心が軽くなったように思えた。私は相当おかしくなっているのかもしれない。
「そんなブス、甘やかすことねーぞ」
この夕羽の一言でいろいろな感情は吹っ飛んでしまう。ジト目で見つめるが、相手にはされなかった。
「夕羽、本心でそう思ってないのに、そういうことを言うから――」
「うるせーよ。口出ししてくんな! ああもうっ! こうすればいいんだろっ!!」
夕羽の手が私の頭に伸びた。咄嗟に避ける。何をするつもりだ、と戸感う。それが顔に出ていたのだと思う。
「普段の行いだね」
奥村先輩は夕羽に言った。その相手はプルプルと震えている。
「お前避けてんじゃねーよ。なぐさめて欲しかったんだろうが!!」
「いや、何されるかわからないし怖いじゃん!!」
「このやろう!!」
頭をグリグリされて痛い。やっぱり、あの手は避けて正解だった。手が離れてすぐに奥村先輩の後ろに行き、隠れさせてもらう。
「ちっ! あの金好き陰険メガネの話するぞ」
「すねたな」
ムッとした夕羽。顔が赤く染まっているが、熱でも出たのだろうか。そもそも何に拗ねたのかも不明だ。この疑問は解決することはないだろう。どもりながらも夕羽の大きな一声が響く。
「う、うるさいっ! いいから聞け! あのバカはレジに細工して使えないようにしたし、アプリもわざと使えないようにしたんだよ」
「追撃されたくなくて必死」
「陸斗黙れ。口挟まずに聞けよ」
すかさずに言い返した夕羽。奥村先輩はため息を吐いて、先を促す。
「わかったよ。どうぞ」
「アイツなんか宣伝して、ココにたくさんの客が来るように仕向けてたぜ。通常運営できてたらちょー喜べたな」
仕組まれたことだったのだろうか。バタバタすることが決められている中で、お客が多く来てしまうようにされてしまうのは、混乱を生みそうだ。
奥村先輩は何かを考えてから、口を出す。
「何を宣伝していたんだ?」
「詳しくは知らねーけど、この店に害が被るようなことはなかったと思うぜ。痛い目みるのはあいつだけのはずだ。クーポンが後日配られるとか聞いてないときに言われてたらわかんねーけど」
「そこは最後まで聞いとけよ。それに、はず、じゃ困るんだよな~」
そこに突然バンッと大きな音が響いた。肩がはねる。びっくりして心臓がドクンドクンと忙しなく音を立てている。勢いよく扉が開かれた音だったようだ。私はゆっくりと呼吸をした。
「あなたたち、話しは後にしなさい。先に片付け。ご飯抜きになるわよ」
寮で夕食が用意されるのだが、その時間に聞に合わなくなるということ。それはまずい。慌てて片付けを再開しようと動き出そうとしたら、待ったをかけられた。
「山城先輩。時間も時間ですし、今日は僕に任せてみんなで先に帰っていいですよ」
「えっ? 一人じゃ――」
「いいから帰るぞー、ポンコツ」
夕羽に腕を引っ張られて、私は引きずられていく。
「悪いわね。じゃあ、頼んだわ。奥村くん」
「任せてください」
二人がいなくなったところを見て、声をかけた山城。奥村はそれに頷き、返事をした。この場に残っているのは彼のみとなる。
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