猫は恋したので、カフェに行く(仮)

月詠世理

文字の大きさ
上 下
12 / 41

カフェでトラブル発生(12話)

しおりを挟む
 営業時間になり、順調に接客をしていたところ。問題が発生する。店内が一瞬暗くなり、すぐさま明かりがついた。突然のことで店内が騒然としていたが、数秒のことであったため混乱は少なそうだ。

 私はパニックになりそうだったので、深呼吸をして気持ちを落ち着かせようとする。きっと電気が落ちただけだろう。レジの画面が暗くなっていた。使えるように電源を入れる。なかなか立ち上がらない。少し時間がかかりそうだ。先輩に助けを求めようとお客様に一声かけて呼びにいこうとする。

「猫宮さん、――レジが使えないようね。この調子だとすぐに使用できるようにはならなさそうだし、他にも問題もあるかもしれない。先生にアナウンスを入れてもらえるように言ってくるわ。猫宮さんはお客様の対応をお願い」
「は、はい」

 椿先生の用事が終わっているといいけど。
 山城先輩は電子決算について話すと急ぎスタッフルームに向かった。可能であればアプリから精算を行なってもらい、無理そうなら予備の電子決算用の機器で精算してもらう。精算に関してはこのように言われた。私は大丈夫かなと不安を押し殺して、お客様に向き直る。

「お待たせして申し訳ございません。コードの提示をお願いいたします」

 レジ付近にある機械での読み取りはできなさそうだ。予備の端末を取り出してカメラを起動させてコードを読み取る。どうやら上手くいったらしい。

「ありがとうございます。店内ご利用でしょうか? お持ち帰りでしょうか?」
「持ち帰りで」
「承知いたしました。お手数おかけしますが、アプリから精算は可能でしょうか?」
「やってみるわ」

 すんなりとこちらの要望を受け入れてくれた。お客様自身の電子端末を操作している。決済画面に進むことができただろうか。

「何回やってもエラーになる。画像で保存したあるコードは使えると思うけど、アプリ自体は使えなさそうね」
「情報提供ならびにご協力ありがとうございます。では、こちらで精算をお願いいたします」

 保存してあるコードがあるかを聞くのはよさそうだが、アプリが開けないようなので精算はこちらで行うしかなさそうだ。お客様は指し示した機器にカードをかざした。ピコンッと電子音鳴る。精算は終わりだ。

「ありがとうございます。右側こちらでお待ちくださいませ」

 お客様は隣の閉まっているレジのところに移動した。まだ持ち帰りであることを伝えていないのに、いつのまにか奥村先輩は受け渡しをしようとしていた。カップは持ち帰り用ものだった。なぜわかったのかと疑問に思うと同時に先輩は優秀だとも思う。

「お待たせしました。冷たいアップルティです。袋はご入用ですか?」
「このままでいいわ。ありがとう」

 隣の会話が耳に入ってきた。その間にも次のお客様の対応へと移る。読み取って店内か持ち帰りかを聞いて、精算を行う。今までその流れができていたが、アプリが使えないので不便だ。コードの提示が不可能なこともあり、この場合は口頭での注文をお願いしている。

 山城先輩が先生のところへ行っているのもあり、表一人、裏一人で対応している状態のため大変だ。予期せぬトラブルもあるし。

 新しく注文していたコードではなく、古いコードを保存していた人がいて、提供時に注文ミスであると気づいた。一つのミスがタイムロスを生むし、本来注文しようと思ったものと違う注文になっていて欲しかったものが届かなかったし、本当に申し訳なかった。作り直すと言ったら、自分のミスでもあるから今回はこれでいい、みたいな感じのことをおっしゃった。とても申し訳なかった。このようなことがあり、コードがあっても注文の確認を行うことにした。

 いつもと勝手が違うから大変だ。アプリなどのものに頼っているのに慣れているので尚更そう感じる。アプリが落ちてしまったトラブルについて説明することもあり、手間が増えている。起こったトラブルはお客様からしたらこちらの問題であるため関係ない。管理ができていない、などの厳しい声をいただくこともあった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

処理中です...