猫は恋したので、カフェに行く(仮)

月詠世理

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サラッと結果を報告する先生(3話)

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 時々、紅茶を飲んではケーキを食べ、を繰り返してどちらもなくなってしまった。持ってきた書類でも片付けるか、と思った時にチラッと一人の女の子が見えた。監視カメラの映像だ。学園のセーラー服を着ている。白の一本線がある黒の襟に青のリボンがあり、他は全て白。スカートは黒一色だ。ハイソックスとローファーを履いていた。顔は見えにくいため、詳しくはわからない。ただ、長い明るめの灰色の髪は見えた。

 音を特殊な方法で拾ってみる。緊張しているのか音にならない声もあった。少々待って、聞こえてきた「先輩になってください」の一言。女の子と対応している男、陸斗の二人に一体何があった、と疑問を持つ。それと同時にこの意味のわからなさに面白さも感じた。

 彼女はどうやらこのカフェで活動したいらしい。良し良し。彼女の所属を認めるか認めないかを決めるのはあたしだし、気楽なもの。

「面白そうなことが起こるなら大歓迎だよ」

 女の子が言ったことに対して陸斗は間抜けそうな表情をしていただろうから、それを見れなかったのは残念。

***

 スタッフルームの扉が開いた。音のした方向を見ると、端正な顔立ちにワインレッドの髪と澄んだ翡翠の瞳の男がいた。陸斗だ。きっと女の子のことを伝えに来たのだろう。

「先生、面接希望の子が来てます」
「聞いてた、聞いてた。こっちに連れてきてよ」
「え? それいいんですか?」
「あたしが良いって言ってるんだから良いんだよ」

 予想通り、女の子のことだった。どうしようもないとでもいうような歪んだ表情で、はぁ、とため息を吐かれたのは心外だが。今はその不敬な態度も大目に見てやろう。陸斗は「連れてきます」と踵を返した。数分後、陸斗に案内されてやってきた明るめの灰色の髪をした女の子。

「僕、戻るんで、椅子出してあげてください」

 颯爽と陸斗は仕事に戻った。彼女は硬い表情をしている。知らない人と二人きりだし、これからのこともあって強張っているのだろう。複数対一よりは断然マシだとは思うが、これはあたしの意見だからね。とりあえず、カチコチになっている彼女に伝えることは一つ。

「君、合格ね!」

 ピタッと動きを止めて固まった体。首を傾げて、小さく「合格」と呟く。急展開の出来事に脳が追いついていないのだろう。この間にあたしはコップに紅茶を入れ、机に置いた。折りたたみの椅子を広げて座れるようにもしておく。可愛いよりも綺麗めの彼女。理解が追いつくのはいつになるだろうか。瑠璃色をした猫のような目がパチパチと瞬く。ぶつぶつと呟いている。ショートでもしそうだ。あたしは彼女の手を引き、座らせた。もう一度、伝えれば流石にわかるはず。

「君、合格だよ!!」

 ヒュッと息を飲み込む音。「嘘」という声。そして、喜び。

「私、やればできる子。おめでとう」

 たぶん、これ彼女自身でも何を言っているのかわかってなさそう。衝撃が強すぎたみたい。落ち着くのを待とう。あたしはこのおかしな子を眺めていられるし、退屈はしなさそうだ。紅茶を一口飲んだ。
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