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辛辣??(33話)
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僕にとって悪魔のウサギが危険を回避するのに奥へ逃げていった。対して、僕たちは来た道を引き返していた。オッカたちは引っ掻いても動かなかった木の近くにでもいるのだろうとそこへ走って向かった。見つけた、思った。そこで驚くことがあった。オッカが傷つけても動くことのなかった木。それがあったところがぽっかりと空いて、道が開いていた。大きな音にでもびっくりしてどこかへいってしまったのだろうか。
木があったところに留まっているオッカたち。そこには騒動を起こした元凶である金色のリスもいた。たぶん、タルトのことを追って来たのだと思う。タルトをじっと見つめているだけで木の実を出す様子はなかったため、一旦放置だ。僕は彼らのもとへと行き、先に腕の中にいるウサギに処置することにした。僕は地面にウサギを下ろす。両手が塞がったままでは何もできないので。水で洗って布で覆うくらいしかできないが、やらないよりは良いだろう。飲み水を少々怪我をしている足にかけ、持っていたハンカチでキュッと結んだ。
「このままお前を放置するのはな~。お前はこれからどうしたい?」
首元をなでながら聞いた。ウサギは僕の指をカプリッと噛む。口を開いた時にはヒヤリとして手を引っ込めようとしたが、それは間に合わなかった。ただ軽く噛まれただけですんだため、あまり痛みは感じなかった。黒化したウサギを知っているので、僕の指が噛みちぎられなくてなかったと安堵した。そのままウサギを観察する。伝えようとしていることがわからない。オッカとタルトに助けを求めようと視線を向けたが、あちらはあちらで金色のリスの相手をしている。僕は1人でどうにかするしかない、と腹をくくった。言っていることが伝わっているかもわかってないし。
「う、うーん、とりあえず、僕と一緒に来るか? その怪我が治るまでは面倒見たいし……」
コクンッとウサギの首が動いた。頷いている。どうやら僕の言葉を理解しているようだ。着いてきてくれるらしい。
「こ、こ、これ! つけてもいいか? もし仲間のところに帰りたかったら、その近くに連れていった上で外すから」
言葉が通じているという感動のあまり変なテンションになったが、説得は上手くいったようだ。ウサギは自ら僕が取り出した首輪に擦り寄ってきた。その行動に驚きつつ、それがウサギに付くところを見つめていた。
「よしっ! 連れ歩くわけにもいかないからコッチでゆっくり休んでてくれ」
まんまるな目を向けられたが、それは僕の持っているスマホに移った。ウサギはじーっと見つめた後、それに触れ、吸い込まれていった。
「あの凶暴な巨大蜘蛛とは絶対別のところな。食べられるのはダメーー!! 保護した意味なくなるー!!」
スマホに向かって叫んだ。
『安心してください。大きさが異なるため、同じところに入ることはありません。専用の小屋で休めるように手配しておきます。では、さようなら』
ブツンッと画面が消えた。本日のスマホはご機嫌ナナメの模様。冷たい。少し機嫌を取っておくか。
「さすが僕のスマホ! 優秀! 気遣いができる子!!」
『そんなのはわかりきっていることです。褒めるのであれば多少なりともひねりがほしいものです。わかりきったことを言われても嬉しくありませんからねっ!?』
そう書かれていたが、少し嬉しそうなのは気のせいだろうか。
『気色悪いですよ。そのニヤケ顔。今度こそさようならです』
素直じゃないな、と思ってたのが表情に出ていたらしい。再びブツンっと画面は消えた。
木があったところに留まっているオッカたち。そこには騒動を起こした元凶である金色のリスもいた。たぶん、タルトのことを追って来たのだと思う。タルトをじっと見つめているだけで木の実を出す様子はなかったため、一旦放置だ。僕は彼らのもとへと行き、先に腕の中にいるウサギに処置することにした。僕は地面にウサギを下ろす。両手が塞がったままでは何もできないので。水で洗って布で覆うくらいしかできないが、やらないよりは良いだろう。飲み水を少々怪我をしている足にかけ、持っていたハンカチでキュッと結んだ。
「このままお前を放置するのはな~。お前はこれからどうしたい?」
首元をなでながら聞いた。ウサギは僕の指をカプリッと噛む。口を開いた時にはヒヤリとして手を引っ込めようとしたが、それは間に合わなかった。ただ軽く噛まれただけですんだため、あまり痛みは感じなかった。黒化したウサギを知っているので、僕の指が噛みちぎられなくてなかったと安堵した。そのままウサギを観察する。伝えようとしていることがわからない。オッカとタルトに助けを求めようと視線を向けたが、あちらはあちらで金色のリスの相手をしている。僕は1人でどうにかするしかない、と腹をくくった。言っていることが伝わっているかもわかってないし。
「う、うーん、とりあえず、僕と一緒に来るか? その怪我が治るまでは面倒見たいし……」
コクンッとウサギの首が動いた。頷いている。どうやら僕の言葉を理解しているようだ。着いてきてくれるらしい。
「こ、こ、これ! つけてもいいか? もし仲間のところに帰りたかったら、その近くに連れていった上で外すから」
言葉が通じているという感動のあまり変なテンションになったが、説得は上手くいったようだ。ウサギは自ら僕が取り出した首輪に擦り寄ってきた。その行動に驚きつつ、それがウサギに付くところを見つめていた。
「よしっ! 連れ歩くわけにもいかないからコッチでゆっくり休んでてくれ」
まんまるな目を向けられたが、それは僕の持っているスマホに移った。ウサギはじーっと見つめた後、それに触れ、吸い込まれていった。
「あの凶暴な巨大蜘蛛とは絶対別のところな。食べられるのはダメーー!! 保護した意味なくなるー!!」
スマホに向かって叫んだ。
『安心してください。大きさが異なるため、同じところに入ることはありません。専用の小屋で休めるように手配しておきます。では、さようなら』
ブツンッと画面が消えた。本日のスマホはご機嫌ナナメの模様。冷たい。少し機嫌を取っておくか。
「さすが僕のスマホ! 優秀! 気遣いができる子!!」
『そんなのはわかりきっていることです。褒めるのであれば多少なりともひねりがほしいものです。わかりきったことを言われても嬉しくありませんからねっ!?』
そう書かれていたが、少し嬉しそうなのは気のせいだろうか。
『気色悪いですよ。そのニヤケ顔。今度こそさようならです』
素直じゃないな、と思ってたのが表情に出ていたらしい。再びブツンっと画面は消えた。
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