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ドリドリモグラとウゴキソウ(14話)

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「近づいただけで土まみれは嫌だな。あと、怖いから踏まないようにしよう。……ロルルさん、あの草は?」

 おかしなことに、細長の草が歩いていた。さっきまではそんなのいなかったはずだ。

「あっ! あれはね、ウゴキソウっていう草だよ。心地良い住処を探してるんじゃないかな?」
「えーと、そうなんですか? そのウゴキソウというのはどのような草なんでしょう??」
「危険を感じると逃げる。とっても速くて捕まえるのが困難。的も小さいし、動き回られると厄介」
「そんなに速いんですか?」

 僕は疑いの目をウゴキソウに向けてしまう。ただ歩いているだけの草が走ると速いというのが信じられなかった。それに、見た目が弱々しいというか、なんというか。

「まあ、機会があればわかるよ。それと、ウゴキソウはね、引っこ抜こうとしても全然抜けないんだ。細かい網目のネットを留まっているウゴキソウにかけて抜こうとしたところ、全然抜けなくて切り傷だけが手に残ったって話もあるよ」
「え!? でも、歩いてますよ?」
「捕まるのが相当嫌なんだろう。身の危険を感じると根を張るからね。ちなみに、さっきのモグラはドリドリモグラと呼ばれている」

 ロルルさんの話を聞いていると、これからやることが一筋縄ではいかないような気がしてきた。僕はクエストをクリアできるか不安だ。これ以上借金が増えるのは嫌だ。フーラさん、貧弱な僕でもできるクエストだって言ってたの信じますからね。

「森エリアの手前。君がクエストを行うところはココだよ。奥に進めば、森エリアだ。そこに入ってしまわないように進みすぎちゃダメだよ。制限時間は夕方まで。クエストが完了したら支給された通信機で連絡してね。僕は門にいるから。――じゃあ戻ってるね!! 頑張れ!!」

 そういえば、通信機について聞くの忘れてた。それについて気を取られて、最後の方は何を言っているのか聞いていなかった。僕が説明を求めようとした時にはロルルさんはおらず、トリドリモグラとウゴキソウが視界に入っているだけだった。振り返ると、小さくなっていくロルルさんらしき人。現地でクエストについての説明なんてないじゃんか、と悪態をつく。僕が持ってないといけなさそうな通信機もない。

 頭を抱えて座り込んだ。どうしよう、どうしよう
、と悩んでいたが、悪戯に時間が過ぎるのはまずいと思った。そこで、僕はオッカと蝶のタルトを呼び出すことにする。1人ではどうしようもないことも、彼らがいればなんとかなるかもしれないもの。スマホよ、お前も頼りにしてるぞ。
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