上 下
6 / 33

マイペースな子たちと街へ(6話)

しおりを挟む
「おい、オッカ。大きくなれるか?」

 毛繕いが終わったのか、丸くなって眠っている猫がいた。戦力外だ。再度、ふわりふわりと僕の周りを飛んでいる蝶に尋ねた。意思疎通ができるか怪しいものだ。肯定や否定するような動作はなく、蝶は大きくなることもなく、勝手に飛んでいく。

「みんなマイペースすぎないか?」

 ぼんやりと蝶を眺めていると、足に爪を立てられた。鋭い爪が布越しに刺さり、痛みに悶絶する。伏せて寝ていたのに、いつ起きたのか。オッカは後ろ足でカリカリと自分の耳の裏を掻いて、一鳴きした。オッカが向いている方を見ると、留まる蝶がきる。どうやら着いてこいということみたいだ。伝えるにしても他に方法はなかったのだろうか。乱暴すぎる。パートナーチェンジできるならしてほしいものだ。今後やっていけるか不安しかない。

 僕は待っている蝶に向かってゆっくりと歩いているオッカの後を追った。途中、走って追い抜いたらムキになったオッカが全力で蝶の下へと走っていった。別に競争してるわけじゃないんだからおせえなって感じで見つめてくるのやめような。絶対僕のこと見下してるだろ。凶暴でおっかなくてムカつく猫だ。自己主張が激しいやつより、蝶は頼りになるな。道案内してくれているみたいだし。これで違ったら路頭に迷うけどね。僕は一応スマホの地図をちょくちょく確認しながら彼らと一緒に歩いた。

 ***

 小人ノ事務所に着いた。街に着くのに思ったより時間がかかるし、ここに来るまで歩きっぱなしだった。これまで、街に行くまでに辿ってきた道が元から存在していないとでもいうように消えてしまったり、その道が地図上から消えていたりという不思議なことが起こった。オッカと蝶は遠くあるため、とても小さく見えている門を見つけた時にスマホに吸い込まれてしまった。その後に道がなくなっていることに気づいたのだが、考える余裕もなかったので、不思議は不思議として片づけることにした。目的地として示されていた街、その前にある門に辿り着けたのだから、気にしないことにする。

 街に入る前には門があり、列ができていた。門番が通行証または住民証の提示を求めて、1人1人を確認しているようだった。僕はそれらの証明書を持っているわけもなく、入る人たちの邪魔にならないように横に放り投げられた。人を避けるにしても対話で対処してほしい。門番、乱暴だな。僕は悪態をつきながらスマホを見る。地図が更新されていた。『小人ノ事務所』という場所に矢印がある。パッと画面が切り替わった。

 ハウスと書かれた小屋の中にオッカと蝶がいた。彼らは寝ていたり、花に留まっていたりしていた。プツンッと音がして画面が真っ白になる。『小人ノ事務所』に行くことを門番に伝えると街に入れると文字が浮かび上がった。行く宛もなく、他に方法があるわけでもないので、僕はもう一度門へ続く列へ向かった。様々なことを確認の上で人を通しているようで、時間はかかりそうだが、わりとサクサク進んでいるように思った。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異種族キャンプで全力スローライフを執行する……予定!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,736pt お気に入り:4,740

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:376pt お気に入り:235

【完結】投げる男〜異世界転移して石を投げ続けたら最強になってた話〜

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:607

自由を求めた第二王子の勝手気ままな辺境ライフ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,427pt お気に入り:2,581

処理中です...