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43話
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一人残った水神は湖へ。そこには黒色が広がっていた。その穢れを取ろうと行動をするが、減衰のたまにヒビが入る。
「くっ、この玉を用いても穢れはとれぬか」
まだ黒い澱みのようなものが残っていた。水神は湖を睨み、雫の形をしたものを掲げるが、パキパキと割れていく。力を使っているからか、湖から穢れが取り除けないためか、水神は苦し気に呻いた。そこへ、ククリとシズクが走ってくる。水神の近くまで行き、立ち止まる二人。息がゼエゼエとしていた。
「なぜここへ? 村長をおびき出すと意気込んでいたのにどうしたんだ?」
「とある事情があって戻って来たんですよ」
「水神、胸抑えてるけど大丈夫?」
「いいから説明をしろ」
村長のところへ行こうとして話している中、急に妖艶な女の人が現れたこと。シズクが攻撃されて、ククリが捕まったこと。そこに村長が現れて女の人が止められていたこと。その隙にククリとシズクは逃げたことを話していた。
「村長とその女の関係は?」
「わかんない。知り合いぽかったけど。二人を相手にするのは厳しかったから逃げてきた」
「うふふふふふふふふふふふっ」
説明に時間がかかったのか、追いつくのが早かったのか。コトハと呼ばれていた妖艶な女が湖にやってきた。おどろおどろしい雰囲気を纏っており、不気味な笑いをしていた。また、どろりとした濁ったような瞳をしていた。ただ、怪我をしているようで、血まみれだ。出血している箇所を抑えて歩いている。
「あら? まだ残っているのね。穢れを撒いたかいがあったわ」
流れる血を止めていた手が離れた。コトハは懐から短剣を取り出す。それを片手に歩き出した。ククリを害そうとしているのだろうとシズクが守るように前に進みでる。しかし、コトハはゾッとするような笑みを浮かべて彼らの側を通り抜けた。湖へと近づいていく。水神に直接攻撃をしようとしているのだろうか。緊張が走った。
「弱っているとはいえ、手負いの人間にやられる私ではない」
ギロリッとコトハを睨みつけた水神。警戒心が強まっている。
「うふふふふっ。あなたを相手にする気なんてないわ。そんなことよりもっと楽な方法があるもの。レイラの大切な人が傷つき、幾重もの苦しみに抵抗できず、亡くなるのはなんて最高なのかしら! それを見られないのが残念でならないわ」
短剣を心臓へ刺した。湖へ身を投げる。コトハの強い恨み、強い憎しみは血と共に流れる。湖の穢れが徐々に濃くなっていった。
「これで、あなたのもとへ行けるわね。ずっと一緒よ」
その柔らかな声を聞いたものはいない。
体が消えていった。
「くっ、この玉を用いても穢れはとれぬか」
まだ黒い澱みのようなものが残っていた。水神は湖を睨み、雫の形をしたものを掲げるが、パキパキと割れていく。力を使っているからか、湖から穢れが取り除けないためか、水神は苦し気に呻いた。そこへ、ククリとシズクが走ってくる。水神の近くまで行き、立ち止まる二人。息がゼエゼエとしていた。
「なぜここへ? 村長をおびき出すと意気込んでいたのにどうしたんだ?」
「とある事情があって戻って来たんですよ」
「水神、胸抑えてるけど大丈夫?」
「いいから説明をしろ」
村長のところへ行こうとして話している中、急に妖艶な女の人が現れたこと。シズクが攻撃されて、ククリが捕まったこと。そこに村長が現れて女の人が止められていたこと。その隙にククリとシズクは逃げたことを話していた。
「村長とその女の関係は?」
「わかんない。知り合いぽかったけど。二人を相手にするのは厳しかったから逃げてきた」
「うふふふふふふふふふふふっ」
説明に時間がかかったのか、追いつくのが早かったのか。コトハと呼ばれていた妖艶な女が湖にやってきた。おどろおどろしい雰囲気を纏っており、不気味な笑いをしていた。また、どろりとした濁ったような瞳をしていた。ただ、怪我をしているようで、血まみれだ。出血している箇所を抑えて歩いている。
「あら? まだ残っているのね。穢れを撒いたかいがあったわ」
流れる血を止めていた手が離れた。コトハは懐から短剣を取り出す。それを片手に歩き出した。ククリを害そうとしているのだろうとシズクが守るように前に進みでる。しかし、コトハはゾッとするような笑みを浮かべて彼らの側を通り抜けた。湖へと近づいていく。水神に直接攻撃をしようとしているのだろうか。緊張が走った。
「弱っているとはいえ、手負いの人間にやられる私ではない」
ギロリッとコトハを睨みつけた水神。警戒心が強まっている。
「うふふふふっ。あなたを相手にする気なんてないわ。そんなことよりもっと楽な方法があるもの。レイラの大切な人が傷つき、幾重もの苦しみに抵抗できず、亡くなるのはなんて最高なのかしら! それを見られないのが残念でならないわ」
短剣を心臓へ刺した。湖へ身を投げる。コトハの強い恨み、強い憎しみは血と共に流れる。湖の穢れが徐々に濃くなっていった。
「これで、あなたのもとへ行けるわね。ずっと一緒よ」
その柔らかな声を聞いたものはいない。
体が消えていった。
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