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40話
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目が覚めると、私のことを覗き込んでいる水神とシズクがいた。私は何があったんだろうと思い、彼らに尋ねようとした。その時、頭に流れる映像。どうやら初代巫女のレイラが私の体を勝手に使って、水神にキスをしたらしい。とんでとなく恥ずかしい。私の他は熱くなった。
「小娘で合ってるか?」
「……近づいてこないで!!」
顔をこっちに向けられると困る。本当に無理。思わず手が出てしまいそうなくらいには動揺してるし、正常じゃない。心臓がどくんっどくんって鳴ってる。あの人私の体で何してるんだ。話しかけられたら、文句の一つや二つや三つ、いやもっと出ていただろう。
「あー、ククリ。もしかして、覚えてるの? 二人とも僕もいたのに、人目を気にせずに、恥ずかしげもなく、口付けっ!? ……いたい! いっ! いたいから!」
シズクは面白そうにニヤニヤしていた。きっと私を揶揄っているのだろう。やめてほしい。そう思って言葉が出ないように、シズクの頬を抓り、ぎゅーっと引っ張ってやった。
「そ、そ、そんなことよりっ!! 私が誘き出せばいい?」
「ええ~~!? そんなことって言われた。痛いのに」
「ちょっと静かにしてて」
「え~」
そんな不満そうな顔しないでよ。半分、笑っているように見えるし、抓っただけじゃ足りなかったのかな。もう一度頬を引っ張ろうとしたら、避けられた。キッと睨みつけるが、大して気にした様子は見えない。ただ、口角があがっていた。私は忘れた頃にシズクに仕返しをしようと思った。ふと、浮かぶ映像をあわあわとかき消す。一旦、き、き、キスのことは頭の片隅に置いておいて今は忘れることにする。切り替えないとね。数回、深呼吸をした。
「あの、私がレイラさんの代わりにカイトを誘き出すのはどう?」
「小娘……やめておけ。身を守る術もないのにやるのは無謀でしかない」
「湖の穢れをどうにかすることは私にはできなさそうだもの。何か力になれるとしたら、村長を連れてくることだけ」
「いや、小娘は私と共に行動をする。その方が安全だ」
小娘小娘と言ったり、鬱陶しそうにしたりする水神が私のことを考えてくれるとは思わなかった。これは守ってくれるということだろうか?
「それに、村長を誘き出すのは小僧でもできる。小僧の方がささっと動いてくれそうだしな」
「えっ?」
「まあ、安心しろ。守りはするさ。捕まったらそのまま放っていくが……」
「むっ! 私にだって村長を連れてくるくらいできるから!」
ちょっとは見直したのに、酷い。放っておくって置いていくってことよね。見捨てるってことよね。
「はぁぁぁぁぁぁ。……捕まってもう逃げられないように首輪をつけられたくなかったら、私と来い。余計な手間をかけさせるな」
「一言余計!」
「まあまあ、ククリ。水神様はククリのことを心配してるんだよ。ここは言うことを聞いておこうよ~」
「心配? そんなものは一切していない。捕まった時に助けるのが面倒なだけだ」
「えーっと、水神様?」
シズクは困ったように水神と私を交互に見た。私は水神に冷ややかな目線を送る。水神は怠そうな顔をしていた。私はむっとした。たしかに私は水神とシズクみたいにチカラを持ってない。捕まったら逃げる術はないだろう。でも、――。
「村長のところに行ってくる」
「はっ? 死にたいのか?」
「うるさいっ! 私だって村長を連れてくることくらいできる。もし捕まっても助けてくれなくていいから!!」
私は水神の家から飛び出した。あんな人を虐めて楽しむような場所に帰るのは嫌だ。でも、私だって二人の力になりたい。それが私でもシズクでもできることなら私がやったっていいはずだ。水神の冷たさにムカついてカッとなって出てきたところもある。けれど、私だけ何もしないなんてやだ。
「あ、ククリ待って!! ……もう! 水神様、なんであんなこと言ったんですか!!」
「そんなことはどうでもいい。早く小娘を追え!」
「僕にククリを追わせるくらいならはじめからどうでもよさそうな態度しないでください!!」
小僧は私に向かって一言告げると、走り出した。私は小僧の言葉に対して、別にどうでもいいなんて思ってないと心の中で呟く。
「たとえ霊力があっても私の力は弱っている。助けようと思っても私では助けられないかもしれない」
だから、どうか小娘を頼んだ。
「小娘で合ってるか?」
「……近づいてこないで!!」
顔をこっちに向けられると困る。本当に無理。思わず手が出てしまいそうなくらいには動揺してるし、正常じゃない。心臓がどくんっどくんって鳴ってる。あの人私の体で何してるんだ。話しかけられたら、文句の一つや二つや三つ、いやもっと出ていただろう。
「あー、ククリ。もしかして、覚えてるの? 二人とも僕もいたのに、人目を気にせずに、恥ずかしげもなく、口付けっ!? ……いたい! いっ! いたいから!」
シズクは面白そうにニヤニヤしていた。きっと私を揶揄っているのだろう。やめてほしい。そう思って言葉が出ないように、シズクの頬を抓り、ぎゅーっと引っ張ってやった。
「そ、そ、そんなことよりっ!! 私が誘き出せばいい?」
「ええ~~!? そんなことって言われた。痛いのに」
「ちょっと静かにしてて」
「え~」
そんな不満そうな顔しないでよ。半分、笑っているように見えるし、抓っただけじゃ足りなかったのかな。もう一度頬を引っ張ろうとしたら、避けられた。キッと睨みつけるが、大して気にした様子は見えない。ただ、口角があがっていた。私は忘れた頃にシズクに仕返しをしようと思った。ふと、浮かぶ映像をあわあわとかき消す。一旦、き、き、キスのことは頭の片隅に置いておいて今は忘れることにする。切り替えないとね。数回、深呼吸をした。
「あの、私がレイラさんの代わりにカイトを誘き出すのはどう?」
「小娘……やめておけ。身を守る術もないのにやるのは無謀でしかない」
「湖の穢れをどうにかすることは私にはできなさそうだもの。何か力になれるとしたら、村長を連れてくることだけ」
「いや、小娘は私と共に行動をする。その方が安全だ」
小娘小娘と言ったり、鬱陶しそうにしたりする水神が私のことを考えてくれるとは思わなかった。これは守ってくれるということだろうか?
「それに、村長を誘き出すのは小僧でもできる。小僧の方がささっと動いてくれそうだしな」
「えっ?」
「まあ、安心しろ。守りはするさ。捕まったらそのまま放っていくが……」
「むっ! 私にだって村長を連れてくるくらいできるから!」
ちょっとは見直したのに、酷い。放っておくって置いていくってことよね。見捨てるってことよね。
「はぁぁぁぁぁぁ。……捕まってもう逃げられないように首輪をつけられたくなかったら、私と来い。余計な手間をかけさせるな」
「一言余計!」
「まあまあ、ククリ。水神様はククリのことを心配してるんだよ。ここは言うことを聞いておこうよ~」
「心配? そんなものは一切していない。捕まった時に助けるのが面倒なだけだ」
「えーっと、水神様?」
シズクは困ったように水神と私を交互に見た。私は水神に冷ややかな目線を送る。水神は怠そうな顔をしていた。私はむっとした。たしかに私は水神とシズクみたいにチカラを持ってない。捕まったら逃げる術はないだろう。でも、――。
「村長のところに行ってくる」
「はっ? 死にたいのか?」
「うるさいっ! 私だって村長を連れてくることくらいできる。もし捕まっても助けてくれなくていいから!!」
私は水神の家から飛び出した。あんな人を虐めて楽しむような場所に帰るのは嫌だ。でも、私だって二人の力になりたい。それが私でもシズクでもできることなら私がやったっていいはずだ。水神の冷たさにムカついてカッとなって出てきたところもある。けれど、私だけ何もしないなんてやだ。
「あ、ククリ待って!! ……もう! 水神様、なんであんなこと言ったんですか!!」
「そんなことはどうでもいい。早く小娘を追え!」
「僕にククリを追わせるくらいならはじめからどうでもよさそうな態度しないでください!!」
小僧は私に向かって一言告げると、走り出した。私は小僧の言葉に対して、別にどうでもいいなんて思ってないと心の中で呟く。
「たとえ霊力があっても私の力は弱っている。助けようと思っても私では助けられないかもしれない」
だから、どうか小娘を頼んだ。
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