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35話(内容変更済)
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初代巫女の力を借りて、怨念を抑えることができた。淡い光に囲まれた檻ができ、怨念たちは弱まっているようである。その檻には、乗っ取り予防が付与されたようだ。効果はあるが、私の意志が弱まればその隙をつかれるかもしれないとのことだった。どんなに抑えることができても、私と怨念たちは繋がっている。だから、その繋がりから意識を乗っ取ることができるらしい。心を強く持てとのことだった。今まで怨念に意識が変わらなかったのは何故だかはわからない。ただ、私の中の私達が抑えていてくれたのだろう。
目が覚めた。私の顔の近くには顔がある。そのことを実感できたときにはもうパニックになっていた。私を覗き込むように見ていた者と頭がぶつかった。声にならない声が出た。思いっきり衝突して発生した痛みに耐える。痛いものは痛い。私は痛みが走っている箇所をおさえた。きっと涙目になっているだろう。
「なんであんな近くで人のことを見ていたの!?」
「……熱を測ろうとしただけだ。まさか頭突きされるとは思わなかった」
「いやいや、鼻が触れてたから! お、お、……起き上がろうとしたのも離れようとしただけで……。わざとではないデス」
ゴツンッ!ってすごい音でてたよね。私自身もいまだに痛みが引かないもの。水神も痛みを感じていそうだ。それにたいそう不機嫌な声音だった。今も鋭い目で私を睨みつけている。部屋の温度が下がっていっているような気がするんだ。これは気のせいだろうか。私は悪いことをしたな、とは思っている。水神の様子を伺うと「小娘……」と忌々しそうに呟いた。え、私、水神に仕返しされるのかな? ビクビク怯えて、唾を飲み込み、水神の言葉を待つ。
「はぁ、わざとではないのはわかっている」
水神がため息とともに呆れたように言ったことに、ほっとした。私に仕返しをしてくるのかと思った。ほんと何もなくてよかった。
「水神、い、痛かったよね? 大丈夫?」
「ああ、痛かったな。大丈夫ではない。その石のように硬い頭は人の頭を割ることができそうだ」
「そんなことできるわけないでしょ! 変なこと言わないで」
石頭で悪かったね。でも、熱がないかを確認するのは顔を近づけてこなくてもできることよ。手があるんだから、手で額に触れればわかったはずだし。
「小娘。それで、どうするんだ? 何か私に言うことがあるはずだ」
「えっ! 何がです?」
急な問いかけ。何のことかわからなくて咄嗟に返事してしまった。水神は何を私に求めているのだろうか。考えてみる。だが、答えは出てこない。うん、考えても何も浮かんでこない。
「何知らないフリしてるんだ。小娘、悪いことをしたら人に謝るべきではないか?」
「あ、私まだ水神に謝ってなかった? え、ごめん!」
「なぜそんなに軽いんだ……。謝られた気がしない」
「睨まないで! えと、頭突きしてごめんなさい!!」
私は頭を下げて謝った。許してくれるだろうか、と落ち着かない心で返事を待った。水神は口を開く。
「おい、仕方なく謝られたように感じるんだが、私の思いこみか?」
それは思い込みだと思うよ。ほんとに悪いと思ってるし。言われるまで謝ってなかったことに気づかなかったことも含めて、ごめんなさいって思ってるから。水神はしばらくじーっと恨めしそうに私を見つめていた。私は居心地の悪さに目が合わないようにササッと顔を逸す。
「まあ、反省しているようだから許そう。まだぶつかったところに痛みはあるのか?」
「あるけど?」
「どれ、見せてみろ」
水神に許されて安心した私はすぐに痛みがあるところを見せた。優しく患部を見てくれるのかと思ったが、どうやら水神はまだ許してはなかったらしい。私は痛みがある箇所を何回か軽く押された。口では許すって言ったけど、全然許してないじゃんか! 楽しそうに笑いやがって!
後にシズクが声をかけてくるまで、水神と私の攻防は終わらなかった。私たち本人にとっては真面目なことだったが、シズクには「じゃれあいしてて仲良いのはわかったから」と言われた。すぐに「仲良くない!」って反論した。それが水神と同じタイミングだったから「ほら仲良し」と面白そうにシズクは言った。私はその言葉に納得はしていない。きっと水神も同じことを思っているだろう。
目が覚めた。私の顔の近くには顔がある。そのことを実感できたときにはもうパニックになっていた。私を覗き込むように見ていた者と頭がぶつかった。声にならない声が出た。思いっきり衝突して発生した痛みに耐える。痛いものは痛い。私は痛みが走っている箇所をおさえた。きっと涙目になっているだろう。
「なんであんな近くで人のことを見ていたの!?」
「……熱を測ろうとしただけだ。まさか頭突きされるとは思わなかった」
「いやいや、鼻が触れてたから! お、お、……起き上がろうとしたのも離れようとしただけで……。わざとではないデス」
ゴツンッ!ってすごい音でてたよね。私自身もいまだに痛みが引かないもの。水神も痛みを感じていそうだ。それにたいそう不機嫌な声音だった。今も鋭い目で私を睨みつけている。部屋の温度が下がっていっているような気がするんだ。これは気のせいだろうか。私は悪いことをしたな、とは思っている。水神の様子を伺うと「小娘……」と忌々しそうに呟いた。え、私、水神に仕返しされるのかな? ビクビク怯えて、唾を飲み込み、水神の言葉を待つ。
「はぁ、わざとではないのはわかっている」
水神がため息とともに呆れたように言ったことに、ほっとした。私に仕返しをしてくるのかと思った。ほんと何もなくてよかった。
「水神、い、痛かったよね? 大丈夫?」
「ああ、痛かったな。大丈夫ではない。その石のように硬い頭は人の頭を割ることができそうだ」
「そんなことできるわけないでしょ! 変なこと言わないで」
石頭で悪かったね。でも、熱がないかを確認するのは顔を近づけてこなくてもできることよ。手があるんだから、手で額に触れればわかったはずだし。
「小娘。それで、どうするんだ? 何か私に言うことがあるはずだ」
「えっ! 何がです?」
急な問いかけ。何のことかわからなくて咄嗟に返事してしまった。水神は何を私に求めているのだろうか。考えてみる。だが、答えは出てこない。うん、考えても何も浮かんでこない。
「何知らないフリしてるんだ。小娘、悪いことをしたら人に謝るべきではないか?」
「あ、私まだ水神に謝ってなかった? え、ごめん!」
「なぜそんなに軽いんだ……。謝られた気がしない」
「睨まないで! えと、頭突きしてごめんなさい!!」
私は頭を下げて謝った。許してくれるだろうか、と落ち着かない心で返事を待った。水神は口を開く。
「おい、仕方なく謝られたように感じるんだが、私の思いこみか?」
それは思い込みだと思うよ。ほんとに悪いと思ってるし。言われるまで謝ってなかったことに気づかなかったことも含めて、ごめんなさいって思ってるから。水神はしばらくじーっと恨めしそうに私を見つめていた。私は居心地の悪さに目が合わないようにササッと顔を逸す。
「まあ、反省しているようだから許そう。まだぶつかったところに痛みはあるのか?」
「あるけど?」
「どれ、見せてみろ」
水神に許されて安心した私はすぐに痛みがあるところを見せた。優しく患部を見てくれるのかと思ったが、どうやら水神はまだ許してはなかったらしい。私は痛みがある箇所を何回か軽く押された。口では許すって言ったけど、全然許してないじゃんか! 楽しそうに笑いやがって!
後にシズクが声をかけてくるまで、水神と私の攻防は終わらなかった。私たち本人にとっては真面目なことだったが、シズクには「じゃれあいしてて仲良いのはわかったから」と言われた。すぐに「仲良くない!」って反論した。それが水神と同じタイミングだったから「ほら仲良し」と面白そうにシズクは言った。私はその言葉に納得はしていない。きっと水神も同じことを思っているだろう。
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