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31話
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『ククリ、あなたは……私たち理性あるものと怨念の強い想いから生まれたの。私たちの願いがあなたという存在を生んだのよ。だから、どうか、あの子たちを怖いと思っていても嫌いにならないで』
私の精神世界には、理性あるものと怨念がいるようだ。私は理性あるものたちのもとへと連れてこられた。私をここへ案内した人はどこかへ消えてしまっている。一体あの人は誰だったのだろうか。この世界にいるものは私と関係があると考える。だって『私はあなた』と言っていた。まだ理解してはいないが、私自身は蚊帳の外ではいられないのかもしれない。
「ねぇ、聞こえてる? あなたはあなたの中にいる怨念たちに乗っ取られそうになっている」
「だから、この世界であなたは怨念たちを抑えなければならないの。そうじゃないと、あなたという存在が沈み、この世界にいる負の部分を持ったあなたが浮かび上がる」
「このままではいずれあなたの体は乗っ取られます。そうなる前に、怨念たちを押さえ込むのです」
どうやら現実の私は熱を出して弱ったところで隙を突かれたようだ。私の中の怨念たちはここぞとばかりに私の器を奪おうとしているらしい。それに気づいた理性あるものたちは私を呼ぶことにしたそうだ。
意識してもこれるのは稀だが、意識しないとこれない精神世界。私がこの世界に来たのは理性あるものたちのやったこと。ただ怨念たちも関わってはいるらしい。私を乗っ取ろうとしていたのは怨念たち。理性あるものたちに会う前に遭遇してしまったし、全く無関係ではないだろう。理性あるものたちと怨念たちは私とは切り離せない存在だと言われているし。
「それで私の中の怨念たちを抑えるにはどうすればいいの? 私はそんな力持ってないよ」
「うーん、どうしよう?」
え、呼んでおいて、何も考えてなかったの? まさかの無計画。本当に大丈夫なのかな。
「私たちだって怨念を抑えていたわ。でも、私たちが使える力は少しだけ。あなたの手助けをするくらいしかできないの。たくさんの力を使うなら、あなたがいないとだめ」
「あなたは私たちの主人格。私たちの強い想いから生まれたとはいえ、私たちはあなたの意識を作ったのではありません。それはあなたがあなたの義母親のもとで培ってきた心です。私たちはあなたであなたは私たちとはいえ、私たちはあなたに変わることなどはできません」
理性あるものや怨念たちは私とはいえ、私の真似はできない。私の心を感じ取ることはできても、私と全員が同じことを思うかと言われたら、それは違うと言えるだろう。私たちの性格がそれぞれ異なるように、ね。
私の体は私のものである。たとえ、たくさんの私が私の中にいるとしても、私の体は私のものであり、私の中にいる私のものではない。だから――。
「あなたの中にいる怨念たちをどうにかできるのはあなたしかいない。いや、実際にはもう一人いるんだけど」
理性あるものたちにそう言われた。説明が難しいけど、怨念たちを抑えるには私がどうにかするしかないということだろう。
「まあ、一時的に抑えることしかできないけど、やらないよりはマシかな?」
「怨念をどうにかするにしても一体私はどうすればいいの!?」
「さて、どうしましょう。初代巫女の力を借りることができれば、なんとかなるかもしません」
初代巫女って誰ですか? 思わず遠い目をしてしまった。誰か、何も知らない私に説明をください。
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「うーん、どうしよう?」
え、呼んでおいて、何も考えてなかったの? まさかの無計画。本当に大丈夫なのかな。
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