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28話
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小娘が倒れてきた。私はそれを受け止めてやる。熱い。熱くて、手が焼けてしまいそうだ。
息も荒い小娘。穢れの影響を受けていたのかもしれない。小僧がくれば小娘を助けることができそうだが、あれは小娘の救いの手となるかは知らん。とりあえず、適当なところへ転がしておくか。
「水神様。何してるの~~?」
「見ていて分からんのか?」
「病人を床に寝かせてるってことだけはわかるよ」
契約の準備ができたのか? 先程出て行ったばかりなのに、戻るのが早いことだ。そう思いながらも小僧の様子を見る。小僧は小娘に手を伸ばしていた。額に触れる。
「熱が出てるね」
「熱とはなんだ?」
「人間の体温が上がることだよ。病原菌から身体を守るのに、免疫力を上げようとするらしいよ。あったかくして寝る必要があるな~。水神様~、布団ある?」
「布団? 小娘が知っているのではないか? 私はどこにあるのか、そもそもココにあるのかも知らぬ」
人が使うものであって、私はそんなものを使わないからな。物がある場所を知らなくても無理はない。そう思っていると、小僧は私を信じられないものを見るような目で見ていた。さらに、ため息を吐いた。私はその小僧の態度に少々イラッとする。
「水神様~、殺風景すぎる部屋だとは思いましたが、まさか布団さえないということはありませんよね? もしなかったら寝るとき困りますね~~」
「知るか! 私は神だ! そんなものなくても問題ない」
「それもそうだね~。……はぁ、使えない」
ヘラヘラと笑う小僧。どうやら馬鹿にされているらしい。最後にボソっと呟いた声、聞こえてるからな。小僧のくせに生意気な! お前たちは私という神を敬うべきだ。
私は人間の姿をしていても人間とは違う。病気などなるわけがない。神域が穢されて弱ることはあっても、私が病気というもので弱ることはない。苦しむこともない。
「人間は脆くて弱そうだ」
「神様に比べたら、誰でも弱いと思う。でも、ククリが弱かったらすでに死んでたよ。育ての親のおかげでいままで酷いことされても、生きていられたんだろうけど、普通なら死んでるね」
「……そんなことはどうでもいい」
「そんなことって言っちゃうの!? 最低だ~~ぁ! 冷徹だ~~!!」
満面の笑みで私を罵っているようだが、そんなに楽しいのか。イラッとするが、まともにとりあったら余計に疲れそうだ。だから、何も言わないことにした。意趣返しはさせてもらおう。
「早くこの小娘をどうにかしろ。死なれては困る」
「放置しといても死なないよ~? ククリ、特殊だから~~」
「特殊?」
「うん、ククリは人間じゃないから平気だよ」
この小僧は何を言っている? 小娘は人間のはずだ。人間でなかったら、なんだというのだ。人の姿をしている化け物か。だが、そんな危ないやつには見えない。
「水神様~。ククリってね、可哀想なんだよ。ククリってね、人から生まれてないんだよ」
「人は人からしか生まれてこないはずだ」
「うんうん、そうだね。水神様でもそれくらいは知ってるんだね~」
「小僧……」
「わー怒らないで! はい、深呼吸。あのね、ククリが生まれたのは、水神様の棲家の近くなんだよ~~」
いちいちうっとおしいやつだな。私をたびたびおちょくる小僧は一度痛い目を見させるべきだろうか。機会があったら、小僧に泣いて謝ってもらえるようにやるか。まあ、それは後にして、いったい小僧は何が言いたいのか。要領を得ない。自分自身の顔は見えないが、表情が歪んでいくのがわかる。私の知らないことを小僧が知っているということに面白さを感じでいないからな。
「だからなんだ?」
「あはははは~~っっ!!! わからないの? 水神様の棲家の近くで生まれたんだ。ククリはね、生贄にされた巫女たちの――」
小娘は私の棲家の近くで生まれた。私の湖には溜まりに溜まった怨念があった。人々の意思が残留していた。捧げられる贄はなんだった? 霊力を持った人間だった。
「巫女たちの願いから生まれたんだ。巫女たちの意思の集まりだよ。生きたかった、死にたくなかった、許さない、復讐してやる、会いたい、まだやりたいことがある。全部全部、死に際に巫女たちが願ったから、願いが数多にもおよんだから、叶ってしまったんだろうね」
人間とは恐ろしい生き物だ。一つ一つの想いは弱くても、たくさん集まれば、強い想いになる。強すぎるくらいだ。故に、散らばった意思たちが一つとなり、人が生まれたのだろう。人と言って良いのかは、わからない。だが、なぜ死なないと言えるのか、不思議だ。
息も荒い小娘。穢れの影響を受けていたのかもしれない。小僧がくれば小娘を助けることができそうだが、あれは小娘の救いの手となるかは知らん。とりあえず、適当なところへ転がしておくか。
「水神様。何してるの~~?」
「見ていて分からんのか?」
「病人を床に寝かせてるってことだけはわかるよ」
契約の準備ができたのか? 先程出て行ったばかりなのに、戻るのが早いことだ。そう思いながらも小僧の様子を見る。小僧は小娘に手を伸ばしていた。額に触れる。
「熱が出てるね」
「熱とはなんだ?」
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人が使うものであって、私はそんなものを使わないからな。物がある場所を知らなくても無理はない。そう思っていると、小僧は私を信じられないものを見るような目で見ていた。さらに、ため息を吐いた。私はその小僧の態度に少々イラッとする。
「水神様~、殺風景すぎる部屋だとは思いましたが、まさか布団さえないということはありませんよね? もしなかったら寝るとき困りますね~~」
「知るか! 私は神だ! そんなものなくても問題ない」
「それもそうだね~。……はぁ、使えない」
ヘラヘラと笑う小僧。どうやら馬鹿にされているらしい。最後にボソっと呟いた声、聞こえてるからな。小僧のくせに生意気な! お前たちは私という神を敬うべきだ。
私は人間の姿をしていても人間とは違う。病気などなるわけがない。神域が穢されて弱ることはあっても、私が病気というもので弱ることはない。苦しむこともない。
「人間は脆くて弱そうだ」
「神様に比べたら、誰でも弱いと思う。でも、ククリが弱かったらすでに死んでたよ。育ての親のおかげでいままで酷いことされても、生きていられたんだろうけど、普通なら死んでるね」
「……そんなことはどうでもいい」
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「早くこの小娘をどうにかしろ。死なれては困る」
「放置しといても死なないよ~? ククリ、特殊だから~~」
「特殊?」
「うん、ククリは人間じゃないから平気だよ」
この小僧は何を言っている? 小娘は人間のはずだ。人間でなかったら、なんだというのだ。人の姿をしている化け物か。だが、そんな危ないやつには見えない。
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「人は人からしか生まれてこないはずだ」
「うんうん、そうだね。水神様でもそれくらいは知ってるんだね~」
「小僧……」
「わー怒らないで! はい、深呼吸。あのね、ククリが生まれたのは、水神様の棲家の近くなんだよ~~」
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