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13話
しおりを挟むレイラと似ている娘に会った。ククリという名前のようだが、私は小娘と呼んでいる。それは、私が神であるのに、生意気な態度をとったり、失礼なことを言ったりする。礼儀のなってない娘だ。
レイラはおちゃめなところが会った。私を巻き込んで湖の中に落ちたり、私の尻尾を踏んだり、散々な目にあった。だが、それは全てわざとではない。泣きそうになって謝る彼女が故意にやっているとは思わない。それに、何もないところで転ぶような娘だ。意図的に私を痛めつけるようなことをしているとは考えられない。
愛しているからこそ、贔屓目に見てしまうのかもしれない。だから、私は彼女の行いをお茶目なことで納めてしまうのだろう。まあ、愛しているからこそ、愛しいからこそそう思ってしまう。それは、もうどうしようもないことなのだ。
それほど私の愛する娘と小娘が似ているとは、なんだか変な感じがする。性格は全く似ていないのに、彼女と重ね合わせてしまう。それは、彼女と小娘の容姿が似ているからだろうか。それだけではない。そんな気がするのは私の思い違いなのだろうか。
泣きわめいて、眠った小娘。その寝顔を眺める。目元が真っ赤になっていた。目が覚めて鏡を見たら、酷い顔だと思うのだろうか。その顔を私に見せてきたら笑ってやろうと思う。だが、小娘が叫んだらうるさいはずだ。心地よく過ごしてる日に大声など聞きたくない。だから、私の力で腫れていないようにしてやった。
感謝しろ、小娘。身じろぎした小娘におもわず、フッと笑ってしまった。そして、私は小娘の頬に手を当てる。
「寝顔もレイラに似ているのだな」
彼女を見殺しにした私は、小娘を生かすことができるだろうか。私は、小娘に死んでほしくないと思う。愛する娘に似ている者が目の前で死んだら、私は苦しむだろうか。神である私は胸を痛めるのだろうか。
レイラにいろんな感情を学んでも、わからないことはある。いや、わからないことだらけだ。感情というものは難しい。ただ、あの酷い苦しみを味わいたくはない。失って気づく感情は、もういらないと思う。
「水神様。――様。私は,……ん……で…………せん。……ず、…………ます」
小娘の寝言。私はそれに驚いてしまった。小娘には私の名前を教えていない。なのに、私の名前を呼んだ。可笑しなことだ。やはり、彼女と小娘にはつながりがあるのだろうか。
「恨んでおりません。変わらず、愛しています……か。私も愛しているよ、レイラ」
寝ながら、涙を流す器用な小娘。その涙を指先で拭ってやる。死んだ人間が戻ってくることはない。小娘がレイラとは別人であると知りながら、私は愛する娘を呼んだ。
――日が昇る。
小娘が起きたら、村の人間と生贄について詳しく聞くとしよう。もう死にかけるのはごめんだ。
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