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11話
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負の感情が神具に集められた。それは母と思われる声をした者が回収してくれた。現在は、私がはめている指輪に収まっている。
酷い臭いをしていた水からそれは消えた。気持ち悪くて、早く去りたいと考えていたところとは大違いだ。声しか聞こえない水神。嫌な空気もなくなったようだ。いまだに気分は悪いものの、楽にはなった。
「ねえ、水神はどんな姿をしているの?」
声しか聞こえない存在。形というものがないのかもしれない。なぜなら、水神だから。水の神だから、どんな姿にでもなれるのかもしれない。
「なぜ、小娘に私の崇高なる姿を見せてやらなければならない?」
「私が見たいからに決まっているでしょ? それに、私はまだ疑っているんだからね」
「小娘が見たいからといって見せるわけがなかろう。私は偉大なる神だぞ? 小娘はその神の何を疑っているというのだ?」
自慢げに言われても、「ふ~ん」という感じだ。私は水神のすごさなど知らない。ハッキリいって、どうでもいい。私が水神のことで考えていることは、生贄について。村の人は水神に生贄を与えていた。だが、この神は、生贄のことを知らないようだった。
「ねぇ、本当は湖に飛び込んできた人たちを食べてたんじゃないの?」
「小娘、私は人を食べていない。それをしたら、神聖な神などではなくなる。私は堕ちた神となる。私はそうなりたくはない。だから、生贄を求めることはないのさ」
姿を現すのを渋っていた水神だったのに、いつの間にか私の前に顔があった。大きな蛇のような顔が……。
「小娘、ふざけているのか? 私は龍だ! 断じて蛇などではないっ!!」
「それ、気にするところなの? どっちでもよくない? 似てるから」
「龍と蛇のどこが似ているというのだ!」
胴が長くて、鱗があるところが似ている。これは言ってもいいのだろうか。なんだか、蜥蜴にも似ているように思えてきた。
「私には角があるだろう! 鷹に似た爪もある。大きな口だってあるのだぞ? それを……蛇や蜥蜴などと思うとは……。無礼で非常識なやつだ」
「はいはい、私は失礼なやつですよ。それでさ、水神は本当に生贄を食べていないんだね? 私の母を生贄に求めていないんだね?」
「はあ、私は知らん。生贄などと言い出した人間が怪しいのではないか? 何度も言うが、私は知らないからな」
不機嫌そうな水神。私が蛇や蜥蜴などと言ったからまだ拗ねているのだろうか。私は、水神が生贄について知らないことを知れたので、良かったと思う。考えられるとしたら、村の人間が水神を利用しているということ。
水神を殺したかったのだろうか。あんなに、水神様、水神様と崇め、奉っている人たちがそんなことをするだろうか。さっぱり、わからない。
「小娘、考えているようだが、もうすぐ朝が来るぞ。帰らなくて良いのか?」
「ああ、しばらくお世話になります」
「な、なんだと?」
「だって、村に帰ったら、私殺されちゃうもの。命を助けてあげたんだから、私を助けると思って、ここに住んでもいいでしょう?」
殺されることはないが、暴力を振るわれるだろう。心もとない言葉もぶつけられて、苦しむことになるはずだ。そのようなことになるくらいなら、水神のところに住んでいたい。
劣悪な環境から私を救うと思って許してほしい。おおげさには盛っていないけれど、物騒な言葉を使った。そうすれば、水神も私をここへ置いてくれるだろうと考えた。
「阿呆なのだろうな。私は心が読めるというのに……。仕方ないから、私の家へつれて行ってやろう」
「へっ? ここが家じゃないの?」
「ここも私の領域であるのは間違いない。だが、人間のお主には適していないだろう。私のおかげで水の中で呼吸ができるようになったとはいえ、地上で生活しているものが生きられるようなところではない。私は住みやすいところへ小娘を置いてやろうと……」
生意気な神だと思ったけど、案外優しいところがあるみたい。私はこの神を信じようと決めた。やっぱり、敵に回すよりも味方でいる方が、私にとっていいことがありそうだもの。
「小娘っ!!」
水神の叫ぶ声が聞こえたが、私は無視した。
この日、母以外のものに久しぶりに優しくされた。私に仮宿を与えてくれる水神だった。
酷い臭いをしていた水からそれは消えた。気持ち悪くて、早く去りたいと考えていたところとは大違いだ。声しか聞こえない水神。嫌な空気もなくなったようだ。いまだに気分は悪いものの、楽にはなった。
「ねえ、水神はどんな姿をしているの?」
声しか聞こえない存在。形というものがないのかもしれない。なぜなら、水神だから。水の神だから、どんな姿にでもなれるのかもしれない。
「なぜ、小娘に私の崇高なる姿を見せてやらなければならない?」
「私が見たいからに決まっているでしょ? それに、私はまだ疑っているんだからね」
「小娘が見たいからといって見せるわけがなかろう。私は偉大なる神だぞ? 小娘はその神の何を疑っているというのだ?」
自慢げに言われても、「ふ~ん」という感じだ。私は水神のすごさなど知らない。ハッキリいって、どうでもいい。私が水神のことで考えていることは、生贄について。村の人は水神に生贄を与えていた。だが、この神は、生贄のことを知らないようだった。
「ねぇ、本当は湖に飛び込んできた人たちを食べてたんじゃないの?」
「小娘、私は人を食べていない。それをしたら、神聖な神などではなくなる。私は堕ちた神となる。私はそうなりたくはない。だから、生贄を求めることはないのさ」
姿を現すのを渋っていた水神だったのに、いつの間にか私の前に顔があった。大きな蛇のような顔が……。
「小娘、ふざけているのか? 私は龍だ! 断じて蛇などではないっ!!」
「それ、気にするところなの? どっちでもよくない? 似てるから」
「龍と蛇のどこが似ているというのだ!」
胴が長くて、鱗があるところが似ている。これは言ってもいいのだろうか。なんだか、蜥蜴にも似ているように思えてきた。
「私には角があるだろう! 鷹に似た爪もある。大きな口だってあるのだぞ? それを……蛇や蜥蜴などと思うとは……。無礼で非常識なやつだ」
「はいはい、私は失礼なやつですよ。それでさ、水神は本当に生贄を食べていないんだね? 私の母を生贄に求めていないんだね?」
「はあ、私は知らん。生贄などと言い出した人間が怪しいのではないか? 何度も言うが、私は知らないからな」
不機嫌そうな水神。私が蛇や蜥蜴などと言ったからまだ拗ねているのだろうか。私は、水神が生贄について知らないことを知れたので、良かったと思う。考えられるとしたら、村の人間が水神を利用しているということ。
水神を殺したかったのだろうか。あんなに、水神様、水神様と崇め、奉っている人たちがそんなことをするだろうか。さっぱり、わからない。
「小娘、考えているようだが、もうすぐ朝が来るぞ。帰らなくて良いのか?」
「ああ、しばらくお世話になります」
「な、なんだと?」
「だって、村に帰ったら、私殺されちゃうもの。命を助けてあげたんだから、私を助けると思って、ここに住んでもいいでしょう?」
殺されることはないが、暴力を振るわれるだろう。心もとない言葉もぶつけられて、苦しむことになるはずだ。そのようなことになるくらいなら、水神のところに住んでいたい。
劣悪な環境から私を救うと思って許してほしい。おおげさには盛っていないけれど、物騒な言葉を使った。そうすれば、水神も私をここへ置いてくれるだろうと考えた。
「阿呆なのだろうな。私は心が読めるというのに……。仕方ないから、私の家へつれて行ってやろう」
「へっ? ここが家じゃないの?」
「ここも私の領域であるのは間違いない。だが、人間のお主には適していないだろう。私のおかげで水の中で呼吸ができるようになったとはいえ、地上で生活しているものが生きられるようなところではない。私は住みやすいところへ小娘を置いてやろうと……」
生意気な神だと思ったけど、案外優しいところがあるみたい。私はこの神を信じようと決めた。やっぱり、敵に回すよりも味方でいる方が、私にとっていいことがありそうだもの。
「小娘っ!!」
水神の叫ぶ声が聞こえたが、私は無視した。
この日、母以外のものに久しぶりに優しくされた。私に仮宿を与えてくれる水神だった。
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