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訪れたのは誰?
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燕尾服に似たような服を着ている男がいる。赤の眼鏡をかけており、ガラス越しに見える瞳は鋭いものであった。茶色の髪は、カチッとオールバックで固められていた。
「リンネお嬢様はどこへいらっしゃいますか?」
ある執事の訪問は突然だった。
屋敷の中は騒然としていた。真っ赤なドレスをきている女は、執事が来ることがわかっていたのだろうか。誰よりも落ち着いているように見える。
「あなたたちは、リンネをお風呂に入れなさい。ドレスは体のラインが隠れるものを着せるのよ」
「は、はい……」
コソコソと指示を出した女。それを聞いたメイドたちはパタパタと走り出した。
「あなた、カイン様の執事を応接室へ案内してちょうだい。わたくしは少ししてから行くので、お待ちいただけるように伝えるのよ」
「か、かしこまりました」
慌てて動き出す一人の執事。恐る恐るといった感じで、カイン様の執事と言われた人を連れて行く。
「他のものたちは、使用人らしく振る舞うのよ。いつものようにしていたら、今回限りは許さないわ。それと、あなたたち、紅茶を用意してちょうだい。紅茶に合うお菓子もお願いね」
いつものようにというのは、一人の少女をお嬢様として扱わないことだろう。カイン様の執事と言われた人が帰るまでは、少女をお嬢様として扱えということだと考えられる。
今までやってきた行いを彼らは隠し通せるのだろうか。ボロを出さないといいけれど……。
「リンネの準備が終わったら、すぐに連れてきなさい。いいわね?」
「ハイッ!!」
返事が裏返っている。彼らは、赤のドレスをきた女に、怯えているようだった。冷ややかな瞳に、表面上だけの笑顔を見せられたら、誰でもビクビクするかもしれない。
※※※
うるさい足音が聞こえる。それに、うるさい声も……。
「か、か、か、鍵はどこ!?」
「早くしないと奥様に怒られてしまう!!」
噛みすぎだ。騒がしく、ゴソゴソする音も聞こえる。扉の外にいる人たちは、鍵を見つけたのだろう。ガチャガチャガチャと音が鳴った。どうやらとても焦っているらしい。鍵は同じ向きに、一回回せば開くものだ。それなのに、荒々しく、何度も聞こえるうるさい音。いったい、なにがあったのだろうか。まだ続いている鍵のガチャガチャとした音に、鍵穴が壊れないといいと思った。
「はぁ、一回深呼吸して、冷静になるべきだよ」
後に、「まだー?」と様子を見にきた人がきた。その人が来て、鍵はすんなり開いた。
至れり尽くせり。身体中、隅々まで洗われた。そして、ドレスを着せられる。思いっきり、コルセット締められて、痛かった。
「なにがあったんですか?」
「見ればわかるから」
みんなの慌てている様子に、近くにいるメイドたちに聞いてみた。だが、教えてもらえなかった。私が綺麗にされたり、待遇が急によくなったりした理由がわかるところへ案内される。そこは、応接室の前だった。
えっ? まさか、私の結婚相手が来たとかないよね?? 会いたくない。逃げてしまおうか。
逃げてお父様のところへ行けば、エリザがしていたことを告げ口できる。
くるっと踵を返して逃げようとするが――。
「リンネお嬢様。どこへ行く気でしょうか?」
腕を掴まれて、逃亡は叶わなかった。私は覚悟を決める。扉を開けてもらい、応接室へ踏み込んだ。そこにいたのは、お父様の執事のウィルソンだった。私に気づいたあの女とウィルソン。視線がこちらに集まった。
「リンネお嬢様。お久しぶりでございます。カイン様に命により、近況を聞きに参りました」
あれ? ブリザードが見える。ブルブルと震えている使用人たち。なに、この部屋の空気。悪すぎだから。
「リンネお嬢様はどこへいらっしゃいますか?」
ある執事の訪問は突然だった。
屋敷の中は騒然としていた。真っ赤なドレスをきている女は、執事が来ることがわかっていたのだろうか。誰よりも落ち着いているように見える。
「あなたたちは、リンネをお風呂に入れなさい。ドレスは体のラインが隠れるものを着せるのよ」
「は、はい……」
コソコソと指示を出した女。それを聞いたメイドたちはパタパタと走り出した。
「あなた、カイン様の執事を応接室へ案内してちょうだい。わたくしは少ししてから行くので、お待ちいただけるように伝えるのよ」
「か、かしこまりました」
慌てて動き出す一人の執事。恐る恐るといった感じで、カイン様の執事と言われた人を連れて行く。
「他のものたちは、使用人らしく振る舞うのよ。いつものようにしていたら、今回限りは許さないわ。それと、あなたたち、紅茶を用意してちょうだい。紅茶に合うお菓子もお願いね」
いつものようにというのは、一人の少女をお嬢様として扱わないことだろう。カイン様の執事と言われた人が帰るまでは、少女をお嬢様として扱えということだと考えられる。
今までやってきた行いを彼らは隠し通せるのだろうか。ボロを出さないといいけれど……。
「リンネの準備が終わったら、すぐに連れてきなさい。いいわね?」
「ハイッ!!」
返事が裏返っている。彼らは、赤のドレスをきた女に、怯えているようだった。冷ややかな瞳に、表面上だけの笑顔を見せられたら、誰でもビクビクするかもしれない。
※※※
うるさい足音が聞こえる。それに、うるさい声も……。
「か、か、か、鍵はどこ!?」
「早くしないと奥様に怒られてしまう!!」
噛みすぎだ。騒がしく、ゴソゴソする音も聞こえる。扉の外にいる人たちは、鍵を見つけたのだろう。ガチャガチャガチャと音が鳴った。どうやらとても焦っているらしい。鍵は同じ向きに、一回回せば開くものだ。それなのに、荒々しく、何度も聞こえるうるさい音。いったい、なにがあったのだろうか。まだ続いている鍵のガチャガチャとした音に、鍵穴が壊れないといいと思った。
「はぁ、一回深呼吸して、冷静になるべきだよ」
後に、「まだー?」と様子を見にきた人がきた。その人が来て、鍵はすんなり開いた。
至れり尽くせり。身体中、隅々まで洗われた。そして、ドレスを着せられる。思いっきり、コルセット締められて、痛かった。
「なにがあったんですか?」
「見ればわかるから」
みんなの慌てている様子に、近くにいるメイドたちに聞いてみた。だが、教えてもらえなかった。私が綺麗にされたり、待遇が急によくなったりした理由がわかるところへ案内される。そこは、応接室の前だった。
えっ? まさか、私の結婚相手が来たとかないよね?? 会いたくない。逃げてしまおうか。
逃げてお父様のところへ行けば、エリザがしていたことを告げ口できる。
くるっと踵を返して逃げようとするが――。
「リンネお嬢様。どこへ行く気でしょうか?」
腕を掴まれて、逃亡は叶わなかった。私は覚悟を決める。扉を開けてもらい、応接室へ踏み込んだ。そこにいたのは、お父様の執事のウィルソンだった。私に気づいたあの女とウィルソン。視線がこちらに集まった。
「リンネお嬢様。お久しぶりでございます。カイン様に命により、近況を聞きに参りました」
あれ? ブリザードが見える。ブルブルと震えている使用人たち。なに、この部屋の空気。悪すぎだから。
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