最愛の父に認めてもらうために、令嬢は走り回ることに

ちょこ

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私は理解できずに頭が真っ白になってたいた。

「お父様、もうこれ以上は……」

「そんな男の事など放っておけ!」

私の言葉も耳に入らないのか父は怒りを露わにする。

今までに見た事の無い父の姿に私は恐怖してしまっていた。

「我が家の恥さらしめ! 貴様の様な者が次期当主であるはずがない!」

そんな父の言葉にお母様が泣きながら訴える様に口を開く。

「……あなた、これは余りにも酷いですわ」

「お前は黙っておれ!」

怒鳴る父の言葉にお母様は体を震わせる。

(私のせいだ。私がもっとしっかりしていればこんな……)

自分の力の無さに私は唇を噛んだ。

(私が悪役令嬢として振舞えばこんな事にはならなかったのに)

自分の心の弱さに後悔していた。

そんな時、父が私の方を向きながら口を開く。

「お前がこの家の顔に泥を塗ったのだぞ!」

「お父様、そんな言い方は……」

母の助けにも耳を貸さず父の言葉は続く。

「お前はもう公爵家のご子息に嫁ぐ資格は無い」

父の言葉は深く私の心に突き刺さった。

「そんな! どうしてですか!」

私は父に向かって叫ぶが、父は私を睨みつける。

「お前は公爵家のご子息にふさわしくないと分かったからだ」

そんな父の態度に私は涙を流した。

(こんな事になるなんて……)

後悔しても遅かった。

「お前の処遇については追って連絡する」

それだけ言い残して父は部屋を出て行ってしまった。

「待って下さいお父様!」

私の声にも耳を貸さず父は出て行ってしまったのだ。「そんな……私どうすれば……」

私は一人泣き崩れた。

(私が悪いんだ。お父様に認めてもらえる様にもっと頑張るべきだったんだ)

後悔しても遅かった。

(折角、公爵家のご子息と婚約が整って幸せになれるはずだったのに……)

今までの人生を振り返ると涙が止まらなかった。

それから数日間、私は部屋に閉じこもり続けた。

食事も喉を通る事は無く衰弱していくばかりだった。

そんな私を見かねてお母様が優しく私の背中をさすってくれたのだ。

「ごめんね、リリア。こんな酷い目に遭わせてしまって」

「お母様は悪くないです……」

お母様だって辛いはずなのに私を気遣ってくれたのだ。

そんな時に扉がノックされる。

「リリア様、お久しぶりでございます」

扉の先にいたのはマリアだった。

「どうしてここに?」

私の疑問に答える様にマリアは話を続ける。

「公爵様の計らいでリリア様がお食事を取りに来ていないとお聞きしましたので私がお食事をお運びしに来たのです」

(公爵家のご子息が?)

私が考えているとマリアは私に話し続けた。

「公爵様からリリア様のお気持ちを第一に考えろとご命令を受けましたので……それで、どうなさいますか?」

私は悩んだ結果マリアに答えた。

「……分かりました。では食事を運んで来て下さい」

マリアは私の言葉に頷き部屋を出て行った。

(お父様が私のために……)

そんな父の言葉に心が温かくなった。

(お父様はまだ私を愛してくれているんだ)

そんな私にお母様は微笑みながら口を開く。「良かったわね、リリア」

私は小さく頷く。

(お父様の為にも頑張らないと)

その日から私はマリアに付いて回って色々な事を学んでいった。

食事の時やお風呂、寝る時以外はずっと一緒だった。

そんな日々が続く中で少しずつ私に笑顔が戻って来ていた。

そんな時にマリアから話しかけられる。

「リリア様、最近明るくなりましたね」

「そうかな?」

そんな私の言葉に笑みを浮かべながらマリアは話を続ける。

「ええ、初めて会った頃とは大違いです」

マリアの言葉に私は笑みで返す。

「マリアのおかげだよ」

「そんな事ありません。リリア様が努力された結果ですよ」

そんな話しをしていると、お母さまが私の部屋に訪れたのだ。

「リリアちゃん、公爵様から手紙が届いているわよ」

お母さまの言葉に私は首を傾げる。

(お父様から手紙?)

そんな私にお母様は手紙を渡してくれたのでその場で封を切って中身を見る。

【リリア・クリスティア様へ】と書かれた手紙にはこう書かれていた。

『リリア嬢へ、私は先日まで君の事を誤解していた。君がそのような事をする人間ではないと分かっていながらも君を疑い続けた事を許して欲しい』

(お父様が私なんかに謝ってくれている)

それだけで嬉しくて堪らなかった。

お父様の想いに私は涙が止まらなかったのだ。

「リリアちゃん、どうしたの!?」

泣いている私にお母さまは心配そうな表情で話しかけてくれる。

「嬉しすぎて……涙が止まらないんです」

(お父様は私の事を信じてくれていたんだ)

そんな私の頭を優しく撫でてくれるお母様。

「良かったわね、リリアちゃん」

そんな二人を見ながらマリアは微笑みを浮かべていた。

それから数日後、私は久しぶりに部屋から出て両親と食事を共にした。

「お父様、お母様!」

私の声に二人は嬉しそうに笑みを浮かべてくれる。

「リリア元気になったんだな」

そんな父の嬉しそうな顔を見て私も嬉しくなる。

(お父様達に認めてもらえるように頑張らないと)

そう心に決めたのだ。
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