ヒロインが私を断罪しようとしていて、婚約破棄確定です

ちょこ

文字の大きさ
上 下
1 / 1

一話

しおりを挟む


「ねえ、やめましょうよ」

「今更何を言っているんだ。このチャンスを逃せば俺達の命はない」

彼は私の体を支えるように腰に手を回す。

私が転生した聖女というのはこの国の守り神である光の女神と闇の魔王との戦いを止めるためにある程度の力をつけるというもの。

彼が私の婚約者でこの国の第一王子であるアルス。

私の記憶の通りに行けば、この次に現れるヒロインが私の婚約者に恋をして、私を断罪して婚約破棄させるらしい。

まあ、その断罪も私と結婚して王になるのが嫌だとかそんな内容だったと思うけれど、その時は私が悪役令嬢として学園で好き勝手やっていたから、別に恨まれるようなことをしているわけではないと思うのだけれど。

だから私が心配しているのはその後のこと。

「もう少ししたらこの国と闇の魔王が同盟を結んで、そのあとに勇者召喚を行う。そうすれば俺達が生き残る術はなくなる」

「だから、やめましょうって」

私が転生した乙女ゲーム『貴方に捧げる溺愛』には続編がある。

続編では私が学園に入学する前から闇の魔王との戦いは始まっており、それに聖女の力が必要なものだったということになっている。

その力を手に入れるために私は学園に入り、攻略対象の誰かと仲を深めていくという流れである。

そして攻略対象の一人には王子アルスがいたのだ。

ヒロインとの恋愛要素もあるのだけれど、それはどうでもいい。

私のハッピーエンドは王子と結婚をせずに他国に嫁ぐことであり、そして一応結婚エンドもあるのだ。

王子ルートでは最後に婚約破棄を言い渡してくるのだが、その婚約破棄をする理由が『お前とはもうやっていけない』というものだったはずだ。

つまりアルスにとって私はお荷物ということである。

「なんで私がやらないといけないのよ」

「君が聖女だからに決まっているだろう」

私は悪役令嬢として乙女ゲームをプレイしていたから知っている。

この乙女ゲームに出てくる攻略対象はアルスを含めて五人いるのだが、その内の一人が第一王子の婚約者である公爵令嬢の私だ。

つまり、ここで私が婚約破棄をされたところで次に待ち受けるのは婚約破棄をされた悪役令嬢が国外追放されるバッドエンドなのだ。

「第一王子妃なんて私には荷が重いわ」

「何を言っているんだ! これは君にしかできないことなんだ!」

そんなこんなしているうちに光の女神の祭壇へとたどり着いてしまった。

「さあ、覚悟を決めるんだ」

アルスのその言葉と共に私は光の女神の祭壇へと足を踏み入れた。

これで私には悪役令嬢としての力と、ヒロインとしての力が備わるはず。

悪役令嬢の力は私の未来を邪魔するものを排除する力であり、ヒロインとしての力は光の精霊との契約によってより強力な結界を作ることができるというものだ。

私が悪役令嬢であるならばこの力でこの国を守り切ることができるだろう。

乙女ゲームなんてやっていなくても、これから始まる断罪や国外追放のイベントは予想できる。

「君がこの国に結界を作り、俺が光の魔王を倒す!」

私の力でこの国に結界を作ることができたならば、私が国外追放されたとしてもヒロインの力がなくとも闇の魔王に襲われることはないだろう。

そうすれば婚約破棄と断罪フラグを回避することができるはず。

必ず断罪フラグを回避してみせますわ。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

【完結】リクエストにお答えして、今から『悪役令嬢』です。

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「断罪……? いいえ、ただの事実確認ですよ。」 *** ただ求められるままに生きてきた私は、ある日王子との婚約解消と極刑を突きつけられる。 しかし王子から「お前は『悪』だ」と言われ、周りから冷たい視線に晒されて、私は気づいてしまったのだ。 ――あぁ、今私に求められているのは『悪役』なのだ、と。  今まで溜まっていた鬱憤も、ずっとしてきた我慢も。  それら全てを吐き出して私は今、「彼らが望む『悪役』」へと変貌する。  これは従順だった公爵令嬢が一転、異色の『悪役』として王族達を相手取り、様々な真実を紐解き果たす。  そんな復讐と解放と恋の物語。 ◇ ◆ ◇ ※カクヨムではさっぱり断罪版を、アルファポリスでは恋愛色強めで書いています。  さっぱり断罪が好み、または読み比べたいという方は、カクヨムへお越しください。  カクヨムへのリンクは画面下部に貼ってあります。 ※カクヨム版が『カクヨムWeb小説短編賞2020』中間選考作品に選ばれました。  選考結果如何では、こちらの作品を削除する可能性もありますので悪しからず。 ※表紙絵はフリー素材を拝借しました。

婚約破棄をいたしましょう。

見丘ユタ
恋愛
悪役令嬢である侯爵令嬢、コーデリアに転生したと気づいた主人公は、卒業パーティーの婚約破棄を回避するために奔走する。 しかし無慈悲にも卒業パーティーの最中、婚約者の王太子、テリーに呼び出されてしまうのだった。

【完結】真実の愛のキスで呪い解いたの私ですけど、婚約破棄の上断罪されて処刑されました。時間が戻ったので全力で逃げます。

かのん
恋愛
 真実の愛のキスで、婚約者の王子の呪いを解いたエレナ。  けれど、何故か王子は別の女性が呪いを解いたと勘違い。そしてあれよあれよという間にエレナは見知らぬ罪を着せられて処刑されてしまう。 「ぎゃあぁぁぁぁ!」 これは。処刑台にて首チョンパされた瞬間、王子にキスした時間が巻き戻った少女が、全力で王子から逃げた物語。  ゆるふわ設定です。ご容赦ください。全16話。本日より毎日更新です。短めのお話ですので、気楽に頭ふわっと読んでもらえると嬉しいです。※王子とは結ばれません。 作者かのん .+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.ホットランキング8位→3位にあがりました!ひゃっほーー!!!ありがとうございます!

いつか国のお外にほっぽりだされる、というのなら…。

イチイ アキラ
恋愛
「ディアーナ! お前との婚約を破棄する!」 その日、アルテール公爵令嬢のディアーナは国外追放を命じられた。 王太子ヒューバードの愛しき人、ソレイユへの非道の罪により。 ソレイユは義母と義姉より虐げられる哀れな娘であった。 そんな娘をディアーナも、また。 嗚呼、なんて冷たい女だろう――と。 そしてディアーナは、国のお外にほっぽりだされた。

卒業パーティーで婚約破棄する奴って本当にいるんだ

砂月ちゃん
恋愛
王国立の学園の卒業パーティー。これまた場末の場末、奥まった階段… なんかすっごい隅っこで繰り広げられる、ショボい婚約破棄劇。 なろうにも掲載中です。

え?婚約破棄したのに何故貴方の仕事を手伝わなければならないんですか?

水垣するめ
恋愛
主人公、伯爵家のエリカ・オーブリーは伯爵令息のサミエル・ドワーズと婚約していた。 婚約した十歳の頃、サミエルの性格は優しく、それに加えて頭も良かった。 そしてサミエルは学園に入ると伯爵家としては異例の、生徒会役員として王子の側近に加えられることとなった。 しかし側近になった途端、サミエルは豹変した。 「自分は選ばれた人間だ」と自画自賛をし、反対に「お前はノロマだ」とエリカを馬鹿にした。 日に日にサミエルの暴挙はヒートアップしていき、ついには生徒会の仕事を全て主人公に任せるようになった。 当然、エリカは最初は断った。 しかしサミエルの評判が悪くなるとエリカのオーブリー家まで被害を被るので我慢して仕事をするしか無かった。 エリカはずっとサミエルの仕打ちに耐え続けた。 だが、ある日サミエルはエリカに婚約破棄を突きつける。 婚約破棄を突きつけられたエリカは完全にサミエルを見放すことにし、サミエルの仕事も全て手伝わないことにした。 そしえエリカに完全に仕事を任せきっていたサミエルは破滅の道を歩んでいくことになる……。

婚約破棄された悪役令嬢は辺境で幸せに暮らす~辺境領主となった元悪役令嬢の楽しい日々~

六角
恋愛
公爵令嬢のエリザベスは、婚約者である王太子レオンから突然の婚約破棄を言い渡される。理由は王太子が聖女と恋に落ちたからだという。エリザベスは自分が前世で読んだ乙女ゲームの悪役令嬢だと気づくが、もう遅かった。王太子から追放されたエリザベスは、自分の領地である辺境の地へと向かう。そこで彼女は自分の才能や趣味を生かして領民や家臣たちと共に楽しく暮らし始める。しかし、王太子や聖女が放った陰謀がエリザベスに迫ってきて……。

婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。

風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。 ※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

処理中です...