【R18】双子の伯爵令息方は今日も愛を囁く

ててて

文字の大きさ
上 下
14 / 15

14

しおりを挟む
「…は?今から?」

「あぁ。たった今、王家の文官が届けてくれたんだ。ジェイドとディルクに登城命令が出されてる。直ぐにらしい。」

そう片手に持っている丸まった書簡を差し出し、困ったように眉を下げるのはエルゼお兄様だ。

ディルク様がいらっしゃる方向から盛大な舌打ちが聞こえた。ジェイド様も眉間にシワは寄せないものの機嫌が悪くなったように感じる。

「…どっちかじゃダメなの?ルナを一人にしていくなんて嫌なんだけど。ていうか、ルナと離れるのがもう嫌なんだけど。」

「うーん、2人の名前がしっかり書かれているからね…王命に背けるわけがないし、名前が記入されていないルナは一緒に登城する訳に行かないし…こればかりは仕方がないね…用件に心当たりは?」

「「ない」」

なるほど。どうやら御二人は王家の方に呼び出され、お城に行かなきゃ行けないらしい。
私は御二人と会ってからトイレ以外はほとんど一緒に過ごしている。御二人もバラバラになる事は滅多にないし、ましてや私を一人にしたことが無い。

御二人がいない

脳内でこだましても中々理解ができないみたいだ。それは、つまり、この後御二人はこの部屋を出ていって、しばらくの間、数分、数時間、帰ってこないという現実。

両手からむず痒く力が抜ける。
そこにくる、不安、恐怖…寂しさ

思わず下にふいた。
すると、力が入らない手をギュッと握りしめられる。その手を辿ればディルク様が私の前にしゃがんで私の顔を覗き込んでいた。

「…おいで」

何故か深く考えず、その言葉のまま広げられた両手の中に入った。いつものディルク様の匂いに包まれて、安心する。
ディルク様は私の頭を撫でながら、私の不安を払拭するように言った。

「パパッと終わらせて帰ってくるから。いい子で待っててな?……これでクソどうでもいい用件だったら張り倒してやる」

最後のは聞かなかったことにしよう。
ちょっとだけ…とディルク様に擦り寄る。すると、後ろからジェイド様に抱きしめられサンドウィッチされる。

「…できるだけ早く戻ってくるからね。本当はとても行きたくないし、離れたくないし、正直無視したいけれど、それをしたらもっと面倒になるから行ってくるね。…僕も充電しとこ」

そうして御二人にギューギューと抱きしめられていたが、「迎えが来たからその辺で止めなさい!」とのエルゼお兄様のお声にやっと開放された。

「早く帰ってくるからね。」

「…いい子に留守番してろよ」

御二人はそれぞれに私の頬にキスを落とし、体を離した。

御二人はエルゼお兄様を睨みながら「「…じゃあ、行ってくる」」と大変ご機嫌ナナメで登城された。


「…やっと行った……。」

がっくりと肩を落とし、後ろからは疲れが漂う。エルゼお兄様は一つため息をつくと、私の手を引き連れ部屋を出た。

「…エルゼお兄様?どちらへ行かれるのですか?」

「ちょうどいい機会だからね。あの2人が居ないなんて滅多にないから今のうちに会っておこう。」

誰に?なんて首を傾げながらお兄様について行く。すれ違うメイドさんや執事さんは頭を下げる。
この数日で最初はメイドさん達も戸惑った表情をしていたが、今は慣れたのか微笑んでくれたり、偶になんとも言えないような表情をしてくれる人もいる。

親切な人が多すぎて不思議な感じだ。

しばらく進めばどこかの扉の前に着く。お兄様がノックをすれば、中から男性の声が聞こえた。

「エルゼです。ルナを連れてきました。入室してもよろしいですか?」

そうすれば、中からガタンガタンっと大きな音が聞こえ、女性の声も聞こえてくる。

『あ、貴方大丈夫てすかっ?』

『…あぁ、大丈夫だ、決して取り乱した訳では無い…入りなさい』

返事を聞けばエルゼお兄様が扉を開いて入室する。私も続いて小さく「失礼します…」と言って入った。

部屋の中は本棚に囲まれていて、奥には大きな机を前に腰をかける男性とその傍らに経つ女性がいた。

男性は紺色の髪に緑色の瞳、エルゼお兄様はこの方とお顔立ちが似ていらっしゃるみたいだ。女性は黒髪に真ん丸な金色の瞳で、とても綺麗な方だった。

「ルナ、紹介するね。こちらは僕達の両親でクラリネス伯爵とその夫人だよ。」

「…はじめまして、ルナです。」

正しい礼儀作法など知りもしないので、一先ず頭を下げてしっかりと自己紹介だけしておく。
パタパタと音が聞こえて顔をあげれば、目の前に伯爵夫人が立っていてキラキラと目を瞬かせていた。

「あらあら!なんて可愛いの!!
ルナちゃんと言うのね、はじめまして。ディルクとジェイドの母のマリアです。なかなか2人が合わせてくれないから、いない間に絶対会おうって思っていたのだけれどこんなに早く会えるなんて…!嬉しいわ、2人は迷惑かけてない?大丈夫?いじめられてない?あの子達はちょっといたずらっ子だけれど根はいい子なの、大変だと思うけど仲良くしてちょうだいね。それに…」

「母上、どうかその辺で!!ルナが困っております!!」

私の手をギュッと掴んで話し始めるマリア様はとても迫力があったけど、よかった…歓迎されてないわけではないみたい。
出ていけなんて言われたらどうしようかと思っていた。

マリア様は「あら、ごめんなさいね」と一言言うと、手を離してくださる。

「やっぱ女の子は可愛いわねぇ~、ね?貴方」

「………」

マリア様が振り向けば、伯爵は両手を組んで眉間に皺を寄せながらこちらを見ていた。

あぁ、何か無作法を働いただろうか…どれが悪いのかさえ検討もつかないのでとても怖くなる。

「もー!そんなに緊張しなくても良いではないですか!ごめんね、ルナちゃん。あの人はね、貴方を嫌ってる訳では無いのよ。ただほら、私たちは子ども達は皆男の子だから女の子の扱いが分からないみたいなのよ。だから緊張してあんな怖い顔になってるけれど、気を悪くしないでちょうだいね。」

「こらっ、マリア!」

「なんですか、挨拶ぐらいしてくださいませ!」

「む…アイザック・クラリネスだ。その…息子たちは君に意地悪とかしないかね?」

「い、いえ、そんな…御二人はとてもお優しいです。良くして頂いてます。…私なんて何も出来ず穀潰しで…」

本来ならば奴隷だ。御二人がどう言おうと周りからはそう思われる。

そっと優しく手が包まれる。
見てみれば夫人がにこやかに微笑んでくださった。
そのまま導かれるようにソファに座らされる。

「そんな事ないのよ。ルナちゃんが来てくれて、私も主人もこの屋敷の者は皆助かっているわ。」

なんの事か検討つかず、きっと私の顔は困惑していただろう。夫人は私に紅茶をいれてくださる。

「甘いものはお好き?」

「…はい。」

進められたお菓子を頂くと、甘さがホロホロと口の中に溶けてなくなってしまった。暖かい紅茶もいただき、体の緊張が少しほぐれる。

すると、クラリネス伯爵様が向かい側に座った。

「…君が来てからディルクとジェイドはをしなくなったんだ。君が来る前まではそれはそれは酷かった。泣かした令嬢は数しれず、時には執事やメイドまで。本当に酷かったんだよ。」

思わず出てしまったというため息は重くて、その頃の苦労を感じさせられた。

私には御二人が人に迷惑をかけるような方だとは思えないけれど、伯爵様のため息と隣で苦笑なさる夫人とエルゼお兄様から事実なのだと知った。


「でも、ルナちゃんが来てからピタッと止んだのよ。学院からの連絡も来ないし、侍従達も活き活きしてる。…貴方のおかげね」

そう微笑まれても、私は何もしていない。

「い、いえっ…私は何も……」

「何も、なんてことは無いさ。ルナがいてくれるからアイツらは悪さをやめたのだろうし、むしろルナを構うのが忙しいらしい。…ルナは穀潰しなんかじゃないさ。居てくれるだけで屋敷は平和だ。だからそんな事言わないでくれ、な?」

「……はい」


頷けば褒めるようにエルゼお兄様は私の頭を撫でた。
束の間、夫人がバッと立ち上がる。

「そうだわ!せっかく女の子がいるだもの!!ドレス!着せなきゃ!!」

満開の笑顔に連れられ、そのまま部屋を出る。


「…あー、母上!程々にしてあげてくださいよー!」

という、エルゼお兄様の声が聞こえるが夫人は鼻歌を歌い聞こえていないようだ。

「私ね、ずっーと女の子欲しかったの!結局男の子ばかりだけどね、どうしても諦められなくてドレス揃えちゃってるのよ~!可愛い新作が出るとどうしても買ってしまってね…あぁ!よかった!無駄にならなくて!!ルナちゃんいっぱい着ましょうね!」

その無邪気な笑顔が少し怖かった。








しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!

奏音 美都
恋愛
 まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。 「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」  国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?  国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。 「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」  え……私、貴方の妹になるんですけど?  どこから突っ込んでいいのか分かんない。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

皇帝陛下は身ごもった寵姫を再愛する

真木
恋愛
燐砂宮が雪景色に覆われる頃、佳南は紫貴帝の御子を身ごもった。子の未来に不安を抱く佳南だったが、皇帝の溺愛は日に日に増して……。※「燐砂宮の秘めごと」のエピローグですが、単体でも読めます。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...