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しおりを挟むあぁ、世界はなんて残酷でつまらないのだろうか。
農家の5人兄妹の末に生まれてきてしまった私は、およそ3歳の頃に奴隷商人に売られた。
両親の顔も兄弟の顔も今では全く思い出せず、声もわからない。
そこら辺にいる人よりも少しばかり整った顔をしているせいか、奴隷商人の界隈で何度もオークションが行われ金が積まれる。
でも、どこの商会も私を客に売ろうとせず、商会長などが私を弄って遊んでいた。
弄ると言っても、体を繋げ強姦すると言う意味ではない。愛玩奴隷は、その名に相応しく『処女』の方が高く売れる。
皮肉的だが、そのために私は17の歳まで乙女でいられた。
なので、商会長などは私の体をかまい反応を楽しむ。私は気持ちく悪く、鳥肌が立つほど嫌悪していたため、一向に(何がとは言わないが)濡れず、甘い声なども出なかった。
そのため、反応に煮えを切らした人は媚薬を飲ませたり色々と試行錯誤をしてきた。だが、私の体は反応しない。感じない。媚薬を飲んでも、体は火照りを知らず、無だった。
誰もそんな、可愛げがなく、甘い声もあげず、表情も出さない人形に発情するやつらは中々居ないらしい。飽きた、と言ったように私をまたオークションにかける。
そんな訳で今日も今日とて、新しい商会に売られた。商会長らしき男は下世話な笑みを浮かべ私を檻の外から望み込む。
「ひひひ、お前を買えてよかったよかった!今夜早速味を見てみるか…楽しみにしておるぞ、ひひひ」
そう、私が美味しくないというのは買った人達しか知らない。だって、知ったら誰も私をオークションで買わないから。
だから、知らないままらしい。
可哀想に。
「ブルック商会長、お客様がお見えです」
「む、なんだこんな時に…誰だというのだ」
「お貴族様ですよ」
「ほぉ!それはそれは。ひひひ、案内しろ」
そうして商会長は私の檻に布をかける。
かびの臭いが飛び交い、少しむせてしまう。
お貴族様…お金をどれだけでもふっかけられる金づる、というべきか。
お貴族様に買われると、それはそれは悲惨な末路が待っているらしい。あらゆる趣味趣向の人間がいるため、奴隷達は貴族が来ると目を逸らし、できるだけ目立たないように体を縮み込ませる。
…ここで、今夜も気持ち悪い人間に体を触られ、舐められ、弄られるのと貴族に買われて商会界隈をたらい回しにされないが趣味趣向のプレイをさせられるのどっちが不幸だろうか。
は、何を馬鹿な事を考えてしまったの。奴隷として生まれれば幸せなどないというのに。
人が近づいてくる足音が聞こえる。
でも、鼻から息を吸う度、喉から吐き出す度にかび臭い匂いが鼻孔を擽り、くしゃみと咳が止まらない。
私はせめて風が通りそうなところと、檻の端にいき、隙間から来る風を頼る。
しゃがみこんで息を整えていると声が聞こえた。
「ねぇ、この布が掛けられてる檻は何」
「えっ…いや~そちらは最近入荷したばかりの物でして。まだ、色々と仕込んでおりませんので、お客様にはとても見せられないものでございます」
「ふぅん、いいじゃん見せてよ。気になるし、ねぇ?」
「あぁ。商会長これ、見せてくれ」
どうやら先程のお貴族のお客様らしい。それに2人も。
「っ、いえいえ。大変申し訳ありませんがこちらの商品はクラリネス伯爵様方の満足いただける物ではございません。えぇ、ですのでこの店一番の愛玩奴隷を見て頂きたい所存で…」
「へぇ、お前ごときが何か文句があるのかな」
「め、滅相もございませんっ!!」
「そうか、なら見せろ。気に入るかどうかは自分で決める」
「いや~その、、」
商会長が渋るように返事をすると、つかつかと足音が近づき、バサッと布が取り払われた。澄んでるとも感じる空気にやっと出会え、息をつく。
「あっ!!」
「おいお前、顔を上げな」
「こっちを向きなよ」
二つの声は厳しいものではなく、窘めるようなものだった。お貴族様から言われたことだ、その言葉に反することなど奴隷の私には出来ない。
そうして、顔を上げる。
光に照らされてわかる宵闇の紺色で耳が出て切りそろえられている髪、光を宿す金色の瞳。そっくり、いや、全くもって同じ顔の人が2人。
私の顔を覗き込んでいた。
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