愛される王女の物語

ててて

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第1章 家族

不器用なほど

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結局、どこへ向かうのか教えてもらえなかった。

教えてもらうのは無理だと諦め、窓から外を見つめる。少し揺れたかと思うと馬車が走り始めた。お城の敷地は広くまだ門をくぐってない。

王宮から離れてきた。自分の鼓動が早くなるのがわかる。そう、あと少しで後宮なのだ。あの嫌な記憶が鮮明に映し出される場所。

私は思わず拳を握り目もきつく閉じる。
見ないように、思い出さないように。

すると、急に左手に何かが重なり暖かくなった。それを見やると陛下が私の手を握っている。

陛下はもう片手で私の頭をポンポンとすると指をさした。私は指の指した方向を見る。

「え……」

目が見開いたのがわかる。だって信じられないから。

私が見た方向、つまり後宮がの場所。

そこには建物の影すらなく、花々が咲き誇る庭園となっていた。それはそれはとっても大きい庭園だ。

「嘘…」

私は思わずぽかんと口を開けたままだった。
陛下はそっと私の頭を撫でる。

「嘘ではない。あそこはもう必要ないからな」

「そうそう、しばらくしたらあそこには白い四阿あずまやを置くんですよ。いつでもお茶会とか出来るように。」

ふふん、と得意げにニクロスが言う。

でも私の耳には届いでいなかった。馬車は走っているので既に通り過ぎたが、未だ私の脳内にはあそこが色濃く残っている。

あの嫌な場所が影すら無くなり、全てが消えた。そして綺麗な花が咲き誇る。
私のあの嫌な記憶が無くなったようだった。

「…あそこを取り壊しても我らの罪が消えた訳では無い。それは分かっている。だが、あそこを残しお前の傷跡が残るのは嫌だった。だから、壊してしまった。……ダメだったか?」

そう聞いてくる陛下の瞳は優しげで悲しそうだった。

「いえ…ダメじゃないです。」

むしろよかった。あのままあの場所が残ったままだと私はいつまで経っても前を向けない。自分の記憶にも居場所にも終止符を打つべきだった。

そう思うと体から力が抜けるのがわかる。
自分でも感じるくらいほっとしているようだった。

「あ、そろそろ城からでますよ!ほら!」

ニクロスの言葉に合わせ門がくぐられる。するとそこは王都と言うにふさわしく活気が溢れ人々が行き交っていた。

初めて見た光景に目を奪われる。
私は窓に引っ付くようにして周りを見やっていた。

商売をしているであろう男性、買い物をしに来た女性方、友達と遊び回る小さい子達。
こんなに人っているんだと感動すらしてしまう。

外からは馬車の中が見えないようで、皆、王家の紋章がついた馬車を避けニコニコと笑いながら手を振ってくれている。

陛下もお兄様も国民に愛されているのがわかる。

そう思うと不思議と嬉しくなり口角が上がった。中は見えないだろうけど私はそっと手を振る。

そして、結局どこに向かっているのだろうか。





☆おまけ

ニクロス視点

(シルフィオーネ様、中は見えないの分かってるよね??でも手を振るんだ…かわいいいいいいいいいいい)

盛大に顔が崩れていたのか、前に座っている陛下に思いっきり足を蹴られる。

この野郎…と思うも隣に座るシルフィオーネ様が照れながら手を振っているものだから可愛すぎでそちらに気を取られる。

そしてまた陛下に足を蹴られた。

「俺の娘を変な目で見るな。次見たら殺すぞ」

そんな低い声出して脅さないでくれます!?

全くコイツは…今日は誰のおかげで午後の時間を開けれたのか忘れたのかね!
俺だよ!俺が一生懸命仕事を振り分けて、最近シルフィオーネ様に会えなくてストレスが溜まりまくった陛下のために今回機会を作ったのに……

はぁーーーーー
俺も早く結婚してかわいい娘を作ってやる!そしてコイツに自慢してやる!!!


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