愛される王女の物語

ててて

文字の大きさ
上 下
9 / 36
第1章 家族

ありえない

しおりを挟む

「父上…?」

隣でレオン様が首を傾げる。
怒らせてしまったのだろうか…
自分の…しかも国王陛下の名前を言えないなんてもしかしなくとも不敬罪…?

震える両手を擦りながらも、少し息を吐く。
すると、レオン様が心配そうに眉を下げ、私の背中を優しくさすって下さった。

だが、不意にその大きな手は私の背中の傷に触れてしまう。

「…っんぅ」

少し痛みが走り声が出てしまった。その小さな声を聞き取ったレオン様は手を止め、
こちらを見やる。

「…ねぇ、シルフィオーネ。背中に何かあるの?」

その声は先程までの優しい声とは違い、真剣に問いていた。

そんな声に、戸惑ってしまう。しどろもどろと目を泳がせて、思わずレオン様に背中を背けた。

「……マーサ」

その瞬間にレオン様はマーサを呼んでしまう。さっと出てきたマーサはなんとも言えない顔をしており、私の目を見つめていた。

もちろん、マーサは見てしまったのだ。
私の体にある無数の傷を。この青いドレスを着せてくれる時に。酷く目を歪ませ涙耐えていた。そんな彼女に、これは秘密なのよ。と言って口止めさせたのがつい数分前。

「シルフィオーネの背中にあったかい?」

「……シルフィオーネ様の体には無数のキズがあり…打ち身や変色した痣…背中にも鞭で打たれたようなキズや擦り傷が……っっ」

説明をしながらも目に皺を寄せ、今にも泣いしまいそうなマーサ。その原因は私なのだ。

それを聞いたレオン様はこめかみを抑え、下にふいてしまった

私はすっと立ち上がり、マーサに駆け寄る。
ついに零れてしまった涙を優しく拭き取った。

私のためなんかに泣いてくれるのね。

「ごめ、んね」

嫌なもの見せちゃって。記憶に残っちゃうでしょう?

そう思いながらも次々と零れてくるマーサの涙を拭く。

「いえ、いえっ!シルフィオーネ様。私こそ申し訳ございません!」

何故か謝られてしまった。疑問に思っていると後ろからため息が聞こえる。

「マーサ、今のことを父上に報告してきてくれ。そして、シルフィオーネはこちらにおいで」

マーサはすっと後ろに下がり部屋を出ていった。私は言われたとおり、元の席に座る。

「……君は今までずっと後宮に居たのかい?」

「はい、そう…だと思います。」

「辛かっただろうに…ごめんね。私達は君の…シルフィオーネの存在を知らなかったんだ。本当にごめんね」

知らなかったとは…?
眉を下げ後悔を握ませるその瞳は私の体を見ていた。

「私が君の継兄だと言うことはわかるね?」

あぁ、はい。そうだとは思っていました。
こくりと頷いてみせる。

「私達はあの日…シルフィオーネが生まれた日に後宮に行ったんだ。だが、シルフィオーネのお母様…ソフィア様の様子がおかしくてね。生死に関わるって言うからソフィア様に付きっきりだったんだ。
でも、あの人は…亡くなってしまって。

君の事はあとから無事に生まれていたと聞いたんだ。そして、後日見に行くとなった日にね…」

彼はこめかみに皺を寄せ、何かを忌々しく見ているようだった。

「君が亡くなったと聞いたんだ。」








しおりを挟む
感想 342

あなたにおすすめの小説

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

てめぇの所為だよ

章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

私は、忠告を致しましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。  ロマーヌ様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ?

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

処理中です...