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療養
しおりを挟む気づいたら泣き疲れて眠ってしまったみたいだ。
もう16歳になるのに、小さな子供みたいなことをしてしまった…
ベットから起き上がると、外は日が落ちて暗くなっているのがわかる。もう、夜みたいだ。
たくさん泣いたから、目が腫れているみたい。
窓を開けると、入ってくる夜風が冷たくてしばらくぼーっとしていた。
泣いたからか気持ちは大分落ち着いている。
未だに、エミリーのことを思うと胸が痛いがここまで来てしまったら、もうどうしようもないかもしれない。
それに、ここまでされてまだエミリーを信じるほど私もお人好しな人間ではないみたいだ。
無心になって夜空を見ていると、扉がノックされた。
「どうぞ」
「セレシア!目が覚めたのね…アニー、ハーブティーを2つお願いね」
「はい、奥様」
アニーは手際よく2人分用意すると静かに下がっていった。
ベットから起き上がり、ブランケットを被ると対面のソファに座る。
一口、含むと鼻から抜けるハーブの香りが心地よく感じた。
お母様はカップを置くと、心配そうにこちらを見つめる。
「……最近、貴方の元気がないのを気づいていたの。原因も心当たりがあるわ…エミリーね?」
私は静かに頷いた。
お母様はエミリーのお母様と幼い頃からの大親友だ。週に1度はお茶会を必ず行い、噂話や家族の話をする時間を大切にしていらっしゃる。
「ソフィアが言っていたわ。学園に入ってからエミリーが変わってしまったって。前よりも落ち着きが無くなったし、言葉遣いも変わったって。立ち振る舞いだって、マナーだって貴方と一緒に勉強していたから少し未熟さはあれど、上達してきたのに最近は見るに堪えないと。…家出も注意してるみたいだけど、聞く耳を持たない、どうしようって泣きつかれてしまったわ。」
エミリーのお母様もどれだけ気を病まれているのだろう。
あんなに素直だった子が、学園に入った途端言うことを聞かず、横暴になってしまったのだから。
「…セレシア。学園で何があったの?」
そこから、少しづつではあったが学園で会ったことを説明した。
エミリーの入学式での行動。
身分を顧みず、どんな相手にも誘うような行動をとり、私に言った虚言の数々。それからの取り巻きを使った悪質な行動。
お母様は静かに聞いてくれた。
私は話しながら、すごく惨めで、情けなくて、涙が止まらなかった。
話し終わったあと、お母様は優しく抱きしめてくれた。
「……ごめんなさい。私とソフィアは、貴方を頼りすぎてしまったわ。セレシアがエミリーを注意して、彼女を治してくれると期待していたの。いつものことだと。でも、貴方はこんなに辛い思いをしていたのね。本当にごめんなさい」
強く、強く抱き込まれる。その温かさにまた涙が流れた。
「…いいえ、私も私が何とかしなくてはと誰にも頼りませんでした。ごめんなさい、、ごめんなさい」
そのあと、学園には行かなくてもいいと言われた。
学園は、ある意味社交の場だ。女性は伴侶を見つけるため半分と、学歴のために通う。
だから、学園へ通うことは貴族にとっては必須なのにお母様もお父様も、お兄様までもが行かなくていいと言ってくれた。
お兄様とお父様は、何故か家お抱えの影(密偵)を使って、ゴミを処理してると聞いた。
やっていることは薄々勘づいていたが、こればかりは止めなかった。きっと、エミリーの取り巻きで私に火傷を負わしたり、足をひっかけて転ばしたりした方々が今頃路頭に迷っているだろうが、ご愁傷さまとしか言いようがない。
個人的には自分で片付けたい気持ちもあったが、今は家族以外の人とは会いたくないため任せた。
私が家にいる間は、お母様とお茶を飲んだり、メイド達とお話したり、お裁縫したりして過ごした。
ちょうど部屋で過ごすのに飽きてきた頃、お兄様が学園時代に使っていた教科書や参考書をくださった。
お兄様はもちろんSクラスだったため、私がやっている教材よりも難しく、それが3年分あった。
だから、暇な時はその問題ばかり解いて、お兄様にもたまに教えてもらったりと好きな時間ばかりを過ごしたのだった。
そのお陰で、よく病んでいた心が明るくなり、前と同様にご飯も美味しく感じて、食欲を取り戻した。
最近ではシェフが作るお菓子まで食べてしまうのだから困ったものだ。
太りそうだわ…
私が明るくなったからか、メイド達も従者も以前より話しかけてくれるようになった。
そんな平和な日々が続いた後、お父様に書斎へ呼ばれた。
流石にこんなダラダラとした生活を送っているので、怒られるのだろうかと不安になりながら出向くと、真剣なお父様の横でお母様はニコニコとしていらっしゃり、お兄様は複雑そうな顔だった。
「……あぁ、セレシア。大事な話があるんだ。
………実は………」
「もう!旦那様、話すと決めたのだから、さっさと話してくださいな!どれだけ優柔不断なんですか!!ほら!早く!!」
余りの焦れったさにお母様がとうとう待てなくなり、話を急かした。
「分かってる…分かってるが」
お父様はかなり不服という表情を出しながらも渋々口を開いた。
「セレシア…留学してみないか?」
「え?」
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