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可愛い子
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冷静沈着という言葉に相応しい第一騎士団副団長のギルバート・アウグストは、珍しくかなり狼狽えている。
それは、昨日召喚された一ノ瀬真緒が原因だった。
マオは、男だとしても可愛すぎる。
こちらを見つめる上目遣い。人を警戒してるようだが、少しずつギルバートには許している。
その仕草と態度があまりにも可愛すぎて、かなり悶絶していた。
昨日はヒュウが入ってきた瞬間、毛を逆立てた猫のように警戒を強めたが、居なくなった途端に気を抜いていた。その後は疲れたのか、うつらうつらと船を漕ぎ始め最終的にはギルバートの肩に凭れて眠ってしまったのだった。
可愛すぎて落ち着くのに時間がかかった。
眠るマオをじっくりと見つめる。
真ん丸な黒い瞳は眠りに落ち、長いまつ毛がよく見えた。髪サラサラでよく手入れがされていたことがわかる。
流石にこのまま寝てしまうと体が疲れるだろうと、隣の私室へ運んだ。恐る恐る抱き抱えても起きることがなかったため、よっぽど疲れたのか、それとも私に気を許しているのかと悩んだ。
彼が来ている服は、きっと学園のものだろう。もう1人の召喚者、聖女(仮)も着ていたものだった。だが、シワになりそうな素材だったので脱がすべきだろう。
……脱がしていいのだろうか。
(……脱がさなくてはいけないでしょう。シワになりますし。よくない。それに他の者に頼むとしても、襲われる危険性だってある。これは仕方ない)
そうは思いつつも、脱がすことにかなり抵抗がある。それは間違いなく自分が下心を少なからず感じているからだろう。
……悩んでいる場合か。
私は自身のクローゼットから柔らかい生地のシャツを出すと、無心の心と煩悩を払いながらさっさと着替えさせた。
(……何も考えるな、感じるな、見るな)
そうやって着替えさせ、やっと息をついて彼を見ると違う煩悩が湧いてでる。
自分よりも一回りも二回りも小さい彼は、私の服を着せるとブカブカで、それはもう可愛すぎた。
(せめて、小さいサイズの服を着せれば……くっ……でも可愛すぎる)
馬鹿な自分だと、額に手を当てながら執務室へ戻った。私室から執務室への扉は開けままに、今回の召喚の儀式による書類をまとめていく。
本来であれば団長の管轄の書類もあるが、団長はそれこそ王族と聖女の対面の護衛に当たっているため対処ができなかった。
なので、私の仕事になっている。
廊下へバタバタと足音が響いた。私は咄嗟に立ち上がり、早足で扉に使うとノックをされる前に扉を開けた。
「……わ!!!、ふがっ!!」
「……静かにしなさいヒュウ。マオが寝たので声も小声で。」
「わ、わかりました。これ、頼まれたものです。何着かは後日に届きますが、とりあえず必要なものだけ揃えてきました。」
「…はい、ご苦労様です。今日は下がっていいですよ。」
そのまま持っていた大袋を取る。
「…あ!じゃあ、最後にマオくんの寝顔だけ見てもいいっすか?」
晴れやかな笑顔で、何も下心はないと伝わる。
マオのために城下町まで下りて買い物をしてきたのだ。何件も店を回っただろう。
「……もちろん、ダメに決まってるでしょう。
それではお疲れ様です。」
バタン、と扉を閉めた。
何故、可愛い寝顔をヤツに見せなくてはならないのか。
扉の向こうから小さな抗議が聞こえているが無視だ。
さぁ、明日からマオとどんな風に過ごしましょうか。
とりあえず一緒に生活することに慣れてもらおうと、私のクローゼットを空にしてマオの服を入れた。
私のはウォークインクローゼットに入れておく。
元から服は何着もなかったので、正装しか入れてなかったが、今日からはこっちを使おう。
そして、もう一度マオの寝顔を見て頭を撫でると残った仕事に取り掛かった。
○
昨日はそのまま執務室のソファで眠り、朝白み始めるころに起きた。さっさとシャワーを済ませ、また業務に取り掛かる。朝日が登ってきた辺りでマオの様子を見に行った。
昨日はあどけなさが残る顔だったのに、今は酷く悲しそうに眉を寄せていた。なにか酷い夢を見ているのか、と、戸惑いながらも起こしてしまおうとベットの近くに座り、体を揺さぶった。
起きたマオは、夢を忘れたようでまだ寝ぼけていた。
ポヤポヤとして警戒心が薄いマオは、可愛らしく撫でてしまいたい衝動に駆られた。
湯を済ませ着替えたマオは、もうどこかのご令嬢所か姫ではないかと疑うほど綺麗で可愛かった。
そんなマオをエスコートして朝食を取った。
昨日の紅茶の一件から、熱いものは苦手だとわかっていたが敢えて料理長には伝えなかった。
別にいじめたい分けてばないが、熱いものを冷ます姿が単純に可愛らしくそれ以外意味なんてない。
もちろん、ない。
聖女の詳しい文献にもあった通り、こちらの文字は読めないらしい。今後のために教師をつけるか、私が教えるか、別に仕事をさせないことにするかで悩むところだ。
ところが、彼は数字が読めた。
サラサラの前髪が彼の頬に落ちながらも、長いまつ毛を瞬きながら書類を見つめる横顔が綺麗すぎて少し見惚れてしまった。
「…ここ、間違ってる」
彼が差した所の数字は確かに間違えており、計算ミスかはたまた何かを隠蔽したことがわかる。
それをまた経理部に送り付けようと考えながら、頭いいマオをまた撫でてしまった。
いくら見た目が可愛いだろうと、彼は男である。
ましてや年上の男に撫でられるなどやめた方がいいなと感じていたら、彼の方から手にすり寄ってきた。
その瞬間、時間が止まった。
柔らかく白い頬が、自分の手に擦り寄り甘えている。
なんでこの時この瞬間を記録できないのかと思考が停止しながらも、瞬きをしないよう目を凝らして見た。
可愛い、可愛すぎる。
どうすればいいんだ。
それは、昨日召喚された一ノ瀬真緒が原因だった。
マオは、男だとしても可愛すぎる。
こちらを見つめる上目遣い。人を警戒してるようだが、少しずつギルバートには許している。
その仕草と態度があまりにも可愛すぎて、かなり悶絶していた。
昨日はヒュウが入ってきた瞬間、毛を逆立てた猫のように警戒を強めたが、居なくなった途端に気を抜いていた。その後は疲れたのか、うつらうつらと船を漕ぎ始め最終的にはギルバートの肩に凭れて眠ってしまったのだった。
可愛すぎて落ち着くのに時間がかかった。
眠るマオをじっくりと見つめる。
真ん丸な黒い瞳は眠りに落ち、長いまつ毛がよく見えた。髪サラサラでよく手入れがされていたことがわかる。
流石にこのまま寝てしまうと体が疲れるだろうと、隣の私室へ運んだ。恐る恐る抱き抱えても起きることがなかったため、よっぽど疲れたのか、それとも私に気を許しているのかと悩んだ。
彼が来ている服は、きっと学園のものだろう。もう1人の召喚者、聖女(仮)も着ていたものだった。だが、シワになりそうな素材だったので脱がすべきだろう。
……脱がしていいのだろうか。
(……脱がさなくてはいけないでしょう。シワになりますし。よくない。それに他の者に頼むとしても、襲われる危険性だってある。これは仕方ない)
そうは思いつつも、脱がすことにかなり抵抗がある。それは間違いなく自分が下心を少なからず感じているからだろう。
……悩んでいる場合か。
私は自身のクローゼットから柔らかい生地のシャツを出すと、無心の心と煩悩を払いながらさっさと着替えさせた。
(……何も考えるな、感じるな、見るな)
そうやって着替えさせ、やっと息をついて彼を見ると違う煩悩が湧いてでる。
自分よりも一回りも二回りも小さい彼は、私の服を着せるとブカブカで、それはもう可愛すぎた。
(せめて、小さいサイズの服を着せれば……くっ……でも可愛すぎる)
馬鹿な自分だと、額に手を当てながら執務室へ戻った。私室から執務室への扉は開けままに、今回の召喚の儀式による書類をまとめていく。
本来であれば団長の管轄の書類もあるが、団長はそれこそ王族と聖女の対面の護衛に当たっているため対処ができなかった。
なので、私の仕事になっている。
廊下へバタバタと足音が響いた。私は咄嗟に立ち上がり、早足で扉に使うとノックをされる前に扉を開けた。
「……わ!!!、ふがっ!!」
「……静かにしなさいヒュウ。マオが寝たので声も小声で。」
「わ、わかりました。これ、頼まれたものです。何着かは後日に届きますが、とりあえず必要なものだけ揃えてきました。」
「…はい、ご苦労様です。今日は下がっていいですよ。」
そのまま持っていた大袋を取る。
「…あ!じゃあ、最後にマオくんの寝顔だけ見てもいいっすか?」
晴れやかな笑顔で、何も下心はないと伝わる。
マオのために城下町まで下りて買い物をしてきたのだ。何件も店を回っただろう。
「……もちろん、ダメに決まってるでしょう。
それではお疲れ様です。」
バタン、と扉を閉めた。
何故、可愛い寝顔をヤツに見せなくてはならないのか。
扉の向こうから小さな抗議が聞こえているが無視だ。
さぁ、明日からマオとどんな風に過ごしましょうか。
とりあえず一緒に生活することに慣れてもらおうと、私のクローゼットを空にしてマオの服を入れた。
私のはウォークインクローゼットに入れておく。
元から服は何着もなかったので、正装しか入れてなかったが、今日からはこっちを使おう。
そして、もう一度マオの寝顔を見て頭を撫でると残った仕事に取り掛かった。
○
昨日はそのまま執務室のソファで眠り、朝白み始めるころに起きた。さっさとシャワーを済ませ、また業務に取り掛かる。朝日が登ってきた辺りでマオの様子を見に行った。
昨日はあどけなさが残る顔だったのに、今は酷く悲しそうに眉を寄せていた。なにか酷い夢を見ているのか、と、戸惑いながらも起こしてしまおうとベットの近くに座り、体を揺さぶった。
起きたマオは、夢を忘れたようでまだ寝ぼけていた。
ポヤポヤとして警戒心が薄いマオは、可愛らしく撫でてしまいたい衝動に駆られた。
湯を済ませ着替えたマオは、もうどこかのご令嬢所か姫ではないかと疑うほど綺麗で可愛かった。
そんなマオをエスコートして朝食を取った。
昨日の紅茶の一件から、熱いものは苦手だとわかっていたが敢えて料理長には伝えなかった。
別にいじめたい分けてばないが、熱いものを冷ます姿が単純に可愛らしくそれ以外意味なんてない。
もちろん、ない。
聖女の詳しい文献にもあった通り、こちらの文字は読めないらしい。今後のために教師をつけるか、私が教えるか、別に仕事をさせないことにするかで悩むところだ。
ところが、彼は数字が読めた。
サラサラの前髪が彼の頬に落ちながらも、長いまつ毛を瞬きながら書類を見つめる横顔が綺麗すぎて少し見惚れてしまった。
「…ここ、間違ってる」
彼が差した所の数字は確かに間違えており、計算ミスかはたまた何かを隠蔽したことがわかる。
それをまた経理部に送り付けようと考えながら、頭いいマオをまた撫でてしまった。
いくら見た目が可愛いだろうと、彼は男である。
ましてや年上の男に撫でられるなどやめた方がいいなと感じていたら、彼の方から手にすり寄ってきた。
その瞬間、時間が止まった。
柔らかく白い頬が、自分の手に擦り寄り甘えている。
なんでこの時この瞬間を記録できないのかと思考が停止しながらも、瞬きをしないよう目を凝らして見た。
可愛い、可愛すぎる。
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