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2章〜旅立ち〜
十話 小さな手
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「おら、着いたぞ」
男の一言で二人は起きた。目を擦りながら馬車を覆う布を捲る。
光が入ってくると同時に沢山の人の声が流れ込んできた。
その人の多さには東京を思い出した。
「ここが王都ですか…」
エリスがため息の様に呟く。声のトーンが低めなのは負の感情ではなく感激しているのだろう。
賑やかというか五月蝿いのは偶にでいい。東京と同じようにここに住もうとは到底思わない。
「ほら降りろ降りろ」
男がしっしと手を振る。正直信用していなかったが、良い奴だった様だ。何の見返りも求めないなんてな。
「ありがとうおじさん、これあげる、それじゃ」
ディランはそう言ってラビットホーンの角を投げる。それからひょいと馬車から飛び降りた。
「おじ…てかこんな上物、貰っていいのか?」
男が角から目を後ろに向けた時には二人の姿はなかった。
「ありがとな…」
男はそう呟いてから馬車を走らせた。
妹以外は全て敵。それが前世の常識だ。
それには親も自分も含まれる。
一歩、歩けば何十人とすれ違う。癖でディランは無意識に行き交う人達を心の中で睨んでいた。
力の入った拳に誰かが触れた。
「どうしたんですか?早く行きましょう」
自分の手を引く女の子の姿にはどこか懐かしさを感じた。
あぁ、そうだ…妹と遊園地に行った時だ。
楽しそうに笑うエリスは、遊園地に来た子供のそれだった。
「うん、行こう」
自分より少し小さい手、小さな手だけど心強く感じた。
「わぁ…ここが冒険者ギルドですかぁ…」
エリスは手を重ね、拝むかの様に大きなギルド本部を見つめていた。
「いけない事なのにのりのりだな」
「か、勘違いしないで下さい!これはディラン様のためなんですからね!さぁ入りますよ」
わくわくとしながら中に入ったエリスは失望を露にした。
ギルドの中はムキムキのおっさん達が酒を飲んではしゃいでいた。
どうやらエリスは夢の国とでも思っていたらしい。
「行くぞ」
今度はディランが肩を落とすエリスの手を引く。思ったよりすんなりとエリスは歩きだした。心なしか喜んでいる様に見える。
カウンターに向かいギルドの真ん中を歩いていく子供二人に皆が注目する。否、睨みつける。
ここで怯えては駄目だ。胸を張らなければ。
「冒険者登録したいんですが…」
そう、口にした瞬間、他の冒険者達が一斉に飛び上がった。
「若いのが入ったぞーっ!」
冒険者達は先程までとは打って変わった満面の笑みで飛び跳ねる。
「お前らよく来てくれた!」
はげのおっさんがディランの背中を叩く。
雰囲気の違いにエリスもディランも困惑した。
「はぁ…なんでこんなに喜んでるんですか?」
「この街の冒険者は若いやつが少なくてな…お前ら合わせて5人くらいだ」
「まぁなんだ、分からない事かあれば何でも聞いてくれ」
「うん、ありがとう」
どうやら悪い奴らではなさそうだ。
冒険者にはランクがあり、そのランクに合った依頼を受けることができる。
Ss─魔人捕獲、討伐等。
S─大型魔物群れ討伐等。
A─大型魔物討伐等。
B─小型の群れを討伐等。
C─小型魔物討伐等。
D─薬草回収等。
クエストをこなしていけばランクは上がるらしい。エリスもディランもDランクからのスタートだ。
「パーティを組むのをオススメするぜ、パーティを組むことで上のランクの依頼も受けることができるぞ」
「分かった、色々ありがとう」
「いいってことよ」
ギルドカードを貰い、少し久しぶりに外にでる。相変わらず人が多い。
「さぁ、次は宿です!」
そう言ってディランの手を引き走り出した。
男の一言で二人は起きた。目を擦りながら馬車を覆う布を捲る。
光が入ってくると同時に沢山の人の声が流れ込んできた。
その人の多さには東京を思い出した。
「ここが王都ですか…」
エリスがため息の様に呟く。声のトーンが低めなのは負の感情ではなく感激しているのだろう。
賑やかというか五月蝿いのは偶にでいい。東京と同じようにここに住もうとは到底思わない。
「ほら降りろ降りろ」
男がしっしと手を振る。正直信用していなかったが、良い奴だった様だ。何の見返りも求めないなんてな。
「ありがとうおじさん、これあげる、それじゃ」
ディランはそう言ってラビットホーンの角を投げる。それからひょいと馬車から飛び降りた。
「おじ…てかこんな上物、貰っていいのか?」
男が角から目を後ろに向けた時には二人の姿はなかった。
「ありがとな…」
男はそう呟いてから馬車を走らせた。
妹以外は全て敵。それが前世の常識だ。
それには親も自分も含まれる。
一歩、歩けば何十人とすれ違う。癖でディランは無意識に行き交う人達を心の中で睨んでいた。
力の入った拳に誰かが触れた。
「どうしたんですか?早く行きましょう」
自分の手を引く女の子の姿にはどこか懐かしさを感じた。
あぁ、そうだ…妹と遊園地に行った時だ。
楽しそうに笑うエリスは、遊園地に来た子供のそれだった。
「うん、行こう」
自分より少し小さい手、小さな手だけど心強く感じた。
「わぁ…ここが冒険者ギルドですかぁ…」
エリスは手を重ね、拝むかの様に大きなギルド本部を見つめていた。
「いけない事なのにのりのりだな」
「か、勘違いしないで下さい!これはディラン様のためなんですからね!さぁ入りますよ」
わくわくとしながら中に入ったエリスは失望を露にした。
ギルドの中はムキムキのおっさん達が酒を飲んではしゃいでいた。
どうやらエリスは夢の国とでも思っていたらしい。
「行くぞ」
今度はディランが肩を落とすエリスの手を引く。思ったよりすんなりとエリスは歩きだした。心なしか喜んでいる様に見える。
カウンターに向かいギルドの真ん中を歩いていく子供二人に皆が注目する。否、睨みつける。
ここで怯えては駄目だ。胸を張らなければ。
「冒険者登録したいんですが…」
そう、口にした瞬間、他の冒険者達が一斉に飛び上がった。
「若いのが入ったぞーっ!」
冒険者達は先程までとは打って変わった満面の笑みで飛び跳ねる。
「お前らよく来てくれた!」
はげのおっさんがディランの背中を叩く。
雰囲気の違いにエリスもディランも困惑した。
「はぁ…なんでこんなに喜んでるんですか?」
「この街の冒険者は若いやつが少なくてな…お前ら合わせて5人くらいだ」
「まぁなんだ、分からない事かあれば何でも聞いてくれ」
「うん、ありがとう」
どうやら悪い奴らではなさそうだ。
冒険者にはランクがあり、そのランクに合った依頼を受けることができる。
Ss─魔人捕獲、討伐等。
S─大型魔物群れ討伐等。
A─大型魔物討伐等。
B─小型の群れを討伐等。
C─小型魔物討伐等。
D─薬草回収等。
クエストをこなしていけばランクは上がるらしい。エリスもディランもDランクからのスタートだ。
「パーティを組むのをオススメするぜ、パーティを組むことで上のランクの依頼も受けることができるぞ」
「分かった、色々ありがとう」
「いいってことよ」
ギルドカードを貰い、少し久しぶりに外にでる。相変わらず人が多い。
「さぁ、次は宿です!」
そう言ってディランの手を引き走り出した。
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