8 / 17
1章〜平和な世界〜
八話 才能がないがある
しおりを挟む
「よし、やってみろ」
特訓場に父のでかい声が木霊する。周りには英雄の息子が、と人が集まっている。
昨日、剣の使い方を見せて貰ったのだが、次は僕がやらなくてはいけない。魔法が苦手な僕にとってこんな物はただの公開処刑だった。詠唱を唱えた先に失望した皆の顔が目に浮かぶ。
「求むるは力、混沌を討ち滅ぼす力、今一度我が剣に力の加護を齎さん」
僕は知っている。糞恥ずかしい詠唱を唱えた先にもっと恥ずかしい物がある事を。
詠唱を終えるとディランの手から剣が弾き飛んだ。そう、失敗した。
予想通り剣が光る事もなく、辺りは沈黙する。気づくとユリウスが真剣な表情をしていた。
「お前ら、一度出てってくれないか」
王国騎士の頼みを断る事ができず特訓場にはユリウスとディランだけが残る。
流石にユリウスでも出来なかっただけで怒るとは思えない。
「ディラン、その剣を触ってみろ」
いつもとは違い、真剣で静かな声に押され言われた通り剣に触れ─
──バチッ
「いたっ!…」
手にジリジリと痛みが走る。その痛みには憶えがあった。
静電気?…
静電気が起る程、空気は乾燥していない。それに静電気より痛かった。
「ディラン、お前には魔法の才能がないがある」
予想していた言葉を言われたと思ったが最後、変な言葉が聞こえ思わず実の父に向かって。
「はぁ?」
ユリウスはニッと笑う。
「わからないか、まぁ俺に語彙力はないからな、そのかわり剣と魔法の才能どっちもあるが」
「はいはい、自慢したかっただけね」
若干、怒り気味で返事をする。人の怒りなどユリウスはお構いなしにそのまま続ける。
「それはお前の゛固有魔法゛だ、だがお前は魔法の才能がなさすぎて使い物になっていない」
馬鹿にされ怒る反面、固有魔法と言う言葉が気にかかる。
母も固有魔法の【氷】を持っている。
「才能がないお前にその魔法を使いこなすには人並外れた努力が必要だ。それでも強くなりたいか?」
ユリウスはどう返事をするか知っている顔で手を伸ばす。
上等だ。僕は妹を守る為ならばなんだってする。
ディランも初めから返事が決まっている様な顔でユリウスの手を掴む。
「あたりまだ」
それから地獄の様な特訓が始まった。
朝早く起きて魔法練習。
ご飯を食べながら魔法練習。
風呂に入りながら魔法練習。
寝る前に魔法練習。
魔法練習とは主に制御の練習だ。縦に何本も立てられた棒の間を手から出した電気でじぐざぐに通っていくと言う練習法だ。
ちなみに母のエリーは氷で城を作ることができる。
固有魔法には決まった詠唱法はなく、今エリーが詠唱構築を行っている。それまでは今まで通り適当な詠唱でやるつもりだ。
「こい!電気くん」
手から出た電流が飛んで行かないよう必死に制御しつつ、まずは最初のカーブだ。曲がり始め、数秒で抑えきれず電気が飛び散り見えなくなる。
「はぁ…またか」
タオルで汗を拭く、魔法を使うのは走るよりダイエットに効きそうだ。
倒れ込むディランに気を聞かせたのかエリスが。
「お水お持ちしましょうか?」
「いや、大丈夫だよ」
エリスには魔法練習中、かなり世話になった。魔法練習に付きっ切りで他の事はエリスがしてくれた。頑張り過ぎではないかと言ったが「私の意思です!」と言ってずっと手伝ってもらっている。
流石に二週間もやってそこまで進展がないのは辛い。
だけど自分の為に頑張ってくれている母やエリスの期待に応えなくてはいけない。それにここを乗り越えなければ強くなれない。
ディランはこうしちゃいられないと跳ね起きる。
「こい!電気くん!いい加減、言うことを聞け!」
特訓場に父のでかい声が木霊する。周りには英雄の息子が、と人が集まっている。
昨日、剣の使い方を見せて貰ったのだが、次は僕がやらなくてはいけない。魔法が苦手な僕にとってこんな物はただの公開処刑だった。詠唱を唱えた先に失望した皆の顔が目に浮かぶ。
「求むるは力、混沌を討ち滅ぼす力、今一度我が剣に力の加護を齎さん」
僕は知っている。糞恥ずかしい詠唱を唱えた先にもっと恥ずかしい物がある事を。
詠唱を終えるとディランの手から剣が弾き飛んだ。そう、失敗した。
予想通り剣が光る事もなく、辺りは沈黙する。気づくとユリウスが真剣な表情をしていた。
「お前ら、一度出てってくれないか」
王国騎士の頼みを断る事ができず特訓場にはユリウスとディランだけが残る。
流石にユリウスでも出来なかっただけで怒るとは思えない。
「ディラン、その剣を触ってみろ」
いつもとは違い、真剣で静かな声に押され言われた通り剣に触れ─
──バチッ
「いたっ!…」
手にジリジリと痛みが走る。その痛みには憶えがあった。
静電気?…
静電気が起る程、空気は乾燥していない。それに静電気より痛かった。
「ディラン、お前には魔法の才能がないがある」
予想していた言葉を言われたと思ったが最後、変な言葉が聞こえ思わず実の父に向かって。
「はぁ?」
ユリウスはニッと笑う。
「わからないか、まぁ俺に語彙力はないからな、そのかわり剣と魔法の才能どっちもあるが」
「はいはい、自慢したかっただけね」
若干、怒り気味で返事をする。人の怒りなどユリウスはお構いなしにそのまま続ける。
「それはお前の゛固有魔法゛だ、だがお前は魔法の才能がなさすぎて使い物になっていない」
馬鹿にされ怒る反面、固有魔法と言う言葉が気にかかる。
母も固有魔法の【氷】を持っている。
「才能がないお前にその魔法を使いこなすには人並外れた努力が必要だ。それでも強くなりたいか?」
ユリウスはどう返事をするか知っている顔で手を伸ばす。
上等だ。僕は妹を守る為ならばなんだってする。
ディランも初めから返事が決まっている様な顔でユリウスの手を掴む。
「あたりまだ」
それから地獄の様な特訓が始まった。
朝早く起きて魔法練習。
ご飯を食べながら魔法練習。
風呂に入りながら魔法練習。
寝る前に魔法練習。
魔法練習とは主に制御の練習だ。縦に何本も立てられた棒の間を手から出した電気でじぐざぐに通っていくと言う練習法だ。
ちなみに母のエリーは氷で城を作ることができる。
固有魔法には決まった詠唱法はなく、今エリーが詠唱構築を行っている。それまでは今まで通り適当な詠唱でやるつもりだ。
「こい!電気くん」
手から出た電流が飛んで行かないよう必死に制御しつつ、まずは最初のカーブだ。曲がり始め、数秒で抑えきれず電気が飛び散り見えなくなる。
「はぁ…またか」
タオルで汗を拭く、魔法を使うのは走るよりダイエットに効きそうだ。
倒れ込むディランに気を聞かせたのかエリスが。
「お水お持ちしましょうか?」
「いや、大丈夫だよ」
エリスには魔法練習中、かなり世話になった。魔法練習に付きっ切りで他の事はエリスがしてくれた。頑張り過ぎではないかと言ったが「私の意思です!」と言ってずっと手伝ってもらっている。
流石に二週間もやってそこまで進展がないのは辛い。
だけど自分の為に頑張ってくれている母やエリスの期待に応えなくてはいけない。それにここを乗り越えなければ強くなれない。
ディランはこうしちゃいられないと跳ね起きる。
「こい!電気くん!いい加減、言うことを聞け!」
0
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
異世界でのんびり暮らしたい!?
日向墨虎
ファンタジー
前世は孫もいるおばちゃんが剣と魔法の異世界に転生した。しかも男の子。侯爵家の三男として成長していく。家族や周りの人たちが大好きでとても大切に思っている。家族も彼を溺愛している。なんにでも興味を持ち、改造したり創造したり、貴族社会の陰謀や事件に巻き込まれたりとやたらと忙しい。学校で仲間ができたり、冒険したりと本人はゆっくり暮らしたいのに・・・無理なのかなぁ?
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう!〜公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ〜
西園寺若葉
ファンタジー
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
異世界転生配信〜はぁ?なんだそれ!ってか異世界転生すら聞いてないぞ!〜
だらけたい
ファンタジー
ど〜も神さまで〜す。
今回なんとなくで異世界に転生させた人がいるんですよ〜。
で〜、その異世界転生の様子を配信したら面白いと思って新しくチャンネルを作ってみました〜。
ただ、コメントなどに色々禁則事項があるのでそこら辺は気をつけてくださいね〜。
面白いかどうかは転生者次第なので、面白くなくても文句は受け付けませ〜ん。見るならそのつもりでお願いします〜。
でも、面白くても面白くなくても登録だけはお願いします〜。
では、本編へど〜ぞ。
元銀行員の俺が異世界で経営コンサルタントに転職しました
きゅちゃん
ファンタジー
元エリート (?)銀行員の高山左近が異世界に転生し、コンサルタントとしてがんばるお話です。武器屋の経営を改善したり、王国軍の人事制度を改定していったりして、異世界でビジネススキルを磨きつつ、まったり立身出世していく予定です。
元エリートではないものの銀行員、現小売で働く意識高い系の筆者が実体験や付け焼き刃の知識を元に書いていますので、ツッコミどころが多々あるかもしれません。
もしかしたらひょっとすると仕事で役に立つかもしれない…そんな気軽な気持ちで読んで頂ければと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる