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3章〜冒険の始まり〜

十五話 

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「凄いな、、」

「はい」

二人の前に佇んでいたのは大地をも小さく見せる程の巨大な城だった。

勇者捜索の依頼を受けたものの早々に王城へと呼び出され金色に輝く馬車に乗せられほんの数日程で王都に到着した。

「冒険者の方々だ。」

二人を乗せた馬車を引く兵士が声を張り上げる。

「は!開門!!」

ギィィと轟音をたて巨大な門がゆっくりと開く。

「木、じゃないよな、、これ全部鉄で出来てるのか。」

しかもただの鉄ではない。全体に魔法陣が張り巡らされている。どんな魔法が発動するかは想像しないほうが良さそうだ。
しかし、これだけの力と権力を持ってしても魔王に勝つには勇者の力が必要と言う事だ。それだけ魔王と言うのは恐ろしい存在なのだろう。

城内も案の定巨大で馬車が走り回れる程だ。

「こちらでお降り下さい。この先の部屋で女王様がお待ちしております。」

久しぶりに足を地面につける。エリスもディランも緊張のせいか或いは長旅のせいか足が固まって歩きがぎこちない。

長い長い廊下を歩く。壁には明らかに高級品であろう絵画が並ぶ。数メートル置きに鎧を着た兵士の銅像が並び、全ての銅像に魔法陣が刻まれていた。何かあれば動くとでも言うのだろうか。

「エリスどうしよう、僕礼儀作法とか知らないよ」

元の世界ならある程度は分かるが、この世界で通用するかは分からない。ただでさ国が違うだけで礼儀作法が変わるというのに世界が変われば一体どれほどの違いが生まれるのだろうか。

「大丈夫です!私も分かりません!」

「と、とりあえず入った瞬間土下座でもするか!」

そうこう話してる内に女王様が待っているであろう部屋の扉の前につく。巨大な扉を開けようとした時、ディラン達が到着した事を悟ったように一人でに扉が開く。呆気にとられた二人に追い打ちをする様に号令と共に巨大な部屋に並んでいた兵士達が縦に整列し道を開く。その先に黄金に輝いた王座に座る女性がいた。

「よくぞいらっしゃいました。どうぞこちらへ。」

二人が息を呑む。

「い、行くぞ、真っ直ぐ歩くだけだ、真っ直ぐ、エリス?」

「あの、手、、握ってもらってもいいですか?」

歩こうと足を進めたディランの袖をエリスが掴む。

「ん?、、わかった。」

緊張しているのだろうか、握った手は微かに震えている。ノアとお化け屋敷に行った時もこんなだった。それと手を繋いでから気づいたのだが、最高に恥ずかしい。

静まり帰る部屋に二人の足音が響く。意識しすぎて歩き方を忘れた様にぎこちない。

「初々しいのぉ。」

王座の横に居座る老人が長い髭を撫でながら呟く。ふっと女王が微笑み口を開いた。

「そんなに固くならんでもよい。お主らは客人なのだからな。それにお主の父、ユリウスには世話になった、お主がまだ小さい頃にあったことがあるが覚えておるか?」

ん?僅かだが何処か見覚えが、、

「あ、エルザおばさん!」

「おば、、まぁいい。大きくなったな。」

「えぇ!女王様とお知り合いなんですか?!」

エリスがさっきまでの緊張が飛んでいったかの様に驚く。

正直僕も偶に家にくるあの人が女王だった事に驚いている。独特の雰囲気を放つ人だとは思っていたが。

「ディランそちらのお嬢さんは?」

「あぁそれは、、」

ディランはラビットロートの一件を話した。それから家で雇う事になり、一緒に旅立ったことも。

「六歳でラビットロードをねぇ、、さすがユリウスの息子と言った所か。おっと名乗り遅れたね、私はファールス王国王女エルザ・ルキアです。」

「は、はい!エリスと申します!エリー様の家でメイドとして働いてました!」

「メイドねぇ、、」

女王エルザがエリスを下から上へと撫で回すように見る。勿論繋いだ手も。

「随分と仲が良いようだが」

女王が不敵に笑う。段々と思い出してきた。この人は良くこうやって笑う。そしてその笑みが見えた時よく何か企んでいるのだ。

「それでは依頼内容について話そうか、そう怪しむな。何も企んではおらぬ。」

「それなら良いんだけど。」

「はっはっは!まぁ人を疑う事は旅をするのには必要だ。知っての通り主な街は兵士達が捜索済みだ、だが見つからなかった。だからお主らには小さな村や街に行ってもらう。」

「兵士を派遣するのじゃ駄目なの?」

「うむ、そうしたいが、人手不足なのだ。いつ魔王軍が攻め込んで来るかはわからぬ。お主達に爺が同行する。」

「爺って?」

横にいた老人が一歩前に出る。

「儂じゃ。これから宜しく頼むぞディランとエリスとやらよ」

「行き先などは全て爺が知っている。馬車引きも爺に任せてくれ。勿論剣の腕も保証する。長旅で疲れただろう。今日はここで休むといい。これからもっと長い旅が待っているのだからな。」

「うん、そうするよ。ありがとうエルザおばさん。」

「おば、、はぁ、爺案内してやってくれ。」

「御意。」

爺さんの後に続いて部屋を出ようとした時だった。鎧を身にまとった小柄な少女が部屋へ駆け込んできた。

「お母様!私も旅に同行させて下さい!」

その言葉は明らかに女王へと向けられている。お母様と言うことはこの子はお姫様だろうか。

「お黙りなさい、客人の前よ。」

「、、申し訳ありません。」

爺さんはこの空気を気にする事もなく歩き出す。ディラン達も逃げるようにあとに続き俯くお姫様の横を通り過ぎた。












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