44 / 75
第44話「胸中」
しおりを挟む「……なるほどのぅ。リリスですら手を焼くほどの格闘戦能力か」
レヴィが険しい顔でそう言った。
「ボウガンや火砲、投石機もあったぜ」
「ううむ。魔王軍にも火砲はあるが、マギフレームに携行させるという発想はなかったのじゃ。マギフレームはその強力なパワーで敵や陣地を薙ぎ倒すためのものじゃからの。なまじの火砲ではマギフレームの装甲を破れぬ以上、火砲は陣地に歩兵を寄せつけぬためのものでしかなかったのじゃ」
「クシナダの推算じゃ、あの口径の火砲ならゴブリンⅡやアークデーモンの装甲はひしゃげるぞ。ボストロールの盾ならどうにかってところだな」
「じゃが、ボストロールを盾にして接近できたとしても、敵機は格闘戦にすこぶる強い。物量で押せばなんとかなるやもしれぬが、犠牲者の数は考えたくもないの」
「まぁ、そんならツルギでやるだけなんだがな。ただ、マギウスにツルギの性能を把握されるのは避けたいところだ」
「いや、客分であるおぬしに任せっきりにしては魔国は赤っ恥もいいところじゃ。ま、機体性能で劣っておっても、戦いようはいくらでもある。こちら側には地の利もあるしの」
「なら、いいけどよ」
レヴィの言葉は、あながち強がりでもなさそうだ。
「さいわい、魔国は三方を山に囲まれた要害の地じゃ。戦力を正面に集中すれば――」
レヴィが言いかけたところで、廊下から慌ただしい足音が聞こえてきた。
直後、俺たちのいる食堂の扉が音を立てて開かれる。
「何事じゃ、騒々しい」
「た、大変です!」
そう言って飛びこんできたのは、見覚えのある重臣だ。
「落ち着かんか。上に立つ者は、火急の時こそ狼狽えた素振りを見せてはならぬ」
「は、は……! 失礼しました……」
「よい。おぬしがかように狼狽するということは、よほどの事態なのであろう。マギウスが予想外の動きを見せたか?」
「いえ、違います。陛下のご指示通り、マギウス討滅のために各諸侯に兵を出すよう求めたのですが……」
「なに? このような事態にもかかわらず、日和見を決めこむ諸侯でもおったのか?」
「そ、そのような甘い状況ではございません! は、反乱です!」
「……なんだと?」
「ドミトルヌ公、オークランガ侯、エミル侯が、それぞれ家臣筋に当たる貴族を集め、魔王陛下に宣戦を布告!」
「なっ! なんじゃと!?」
「各勢力はそれぞれマギフレームを集結して魔王都上洛を狙っている模様! すでにオークランガ侯の先遣部隊が魔王都イズデハンに到着し、イズデハンの守護隊と睨みあいを始めています!」
「馬鹿な! 早すぎるではないか!」
さすがのレヴィも茫然自失し、とっさに返す言葉が見つからないようだ。
「おい、ちょっと待て。今レヴィがこの要塞にいるのは、俺とツルギの出現に伴う異常な精神波を感じてのことだった。いわばイレギュラーなわけだが、そんな小さな隙を突かれるほど魔国の内情はヤバかったのか?」
「そんなわけがあるか! 国情は安定しておるし、だいいちドラグフレームを専有する魔王軍に諸侯が逆らえるはずが……」
そこで、エスティカがはっとした顔でつぶやいた。
「……まさか、マギウスが?」
その言葉に、レヴィが顔をはね上げた。
「マギウスが裏で糸を引いておると?」
「わかりませんが、いくらなんでも時機がぴったりすぎます」
エスティカが蒼白な顔でうなずいた。
レヴィが険しい顔でそう言った。
「ボウガンや火砲、投石機もあったぜ」
「ううむ。魔王軍にも火砲はあるが、マギフレームに携行させるという発想はなかったのじゃ。マギフレームはその強力なパワーで敵や陣地を薙ぎ倒すためのものじゃからの。なまじの火砲ではマギフレームの装甲を破れぬ以上、火砲は陣地に歩兵を寄せつけぬためのものでしかなかったのじゃ」
「クシナダの推算じゃ、あの口径の火砲ならゴブリンⅡやアークデーモンの装甲はひしゃげるぞ。ボストロールの盾ならどうにかってところだな」
「じゃが、ボストロールを盾にして接近できたとしても、敵機は格闘戦にすこぶる強い。物量で押せばなんとかなるやもしれぬが、犠牲者の数は考えたくもないの」
「まぁ、そんならツルギでやるだけなんだがな。ただ、マギウスにツルギの性能を把握されるのは避けたいところだ」
「いや、客分であるおぬしに任せっきりにしては魔国は赤っ恥もいいところじゃ。ま、機体性能で劣っておっても、戦いようはいくらでもある。こちら側には地の利もあるしの」
「なら、いいけどよ」
レヴィの言葉は、あながち強がりでもなさそうだ。
「さいわい、魔国は三方を山に囲まれた要害の地じゃ。戦力を正面に集中すれば――」
レヴィが言いかけたところで、廊下から慌ただしい足音が聞こえてきた。
直後、俺たちのいる食堂の扉が音を立てて開かれる。
「何事じゃ、騒々しい」
「た、大変です!」
そう言って飛びこんできたのは、見覚えのある重臣だ。
「落ち着かんか。上に立つ者は、火急の時こそ狼狽えた素振りを見せてはならぬ」
「は、は……! 失礼しました……」
「よい。おぬしがかように狼狽するということは、よほどの事態なのであろう。マギウスが予想外の動きを見せたか?」
「いえ、違います。陛下のご指示通り、マギウス討滅のために各諸侯に兵を出すよう求めたのですが……」
「なに? このような事態にもかかわらず、日和見を決めこむ諸侯でもおったのか?」
「そ、そのような甘い状況ではございません! は、反乱です!」
「……なんだと?」
「ドミトルヌ公、オークランガ侯、エミル侯が、それぞれ家臣筋に当たる貴族を集め、魔王陛下に宣戦を布告!」
「なっ! なんじゃと!?」
「各勢力はそれぞれマギフレームを集結して魔王都上洛を狙っている模様! すでにオークランガ侯の先遣部隊が魔王都イズデハンに到着し、イズデハンの守護隊と睨みあいを始めています!」
「馬鹿な! 早すぎるではないか!」
さすがのレヴィも茫然自失し、とっさに返す言葉が見つからないようだ。
「おい、ちょっと待て。今レヴィがこの要塞にいるのは、俺とツルギの出現に伴う異常な精神波を感じてのことだった。いわばイレギュラーなわけだが、そんな小さな隙を突かれるほど魔国の内情はヤバかったのか?」
「そんなわけがあるか! 国情は安定しておるし、だいいちドラグフレームを専有する魔王軍に諸侯が逆らえるはずが……」
そこで、エスティカがはっとした顔でつぶやいた。
「……まさか、マギウスが?」
その言葉に、レヴィが顔をはね上げた。
「マギウスが裏で糸を引いておると?」
「わかりませんが、いくらなんでも時機がぴったりすぎます」
エスティカが蒼白な顔でうなずいた。
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる