14 / 39
楽園増強編
邪竜、死す
しおりを挟む俺は、一面真っ暗闇の崖っぷちに立っていた。真後ろには、底無しの奈落が広がっている。
そんな俺の前には、なぜか険しく俺を睨むリリス様が立っていた。
眉間に皺を寄せたリリス様が、俺へと手を伸ばしてくる。その手の甲には、魔族殺しの紋章がギラギラと青白い輝きを放ってた。
「醜い邪竜風情が、よもや幸せになれるとでも勘違いしたのか?」
リリス様の言葉一つ一つが、鋭利な刃物のように俺の胸へと突き刺さる。
そうだ、俺は邪竜──太古の昔より、災いを齎す存在として、人々から恐れられ、魔族から崇められてきた。幸せとは程遠く、むしろ死の象徴として知られる、残虐なる竜なのだ。
リリス様が、俺の肩をそっと押した。
俺は、奈落の底へと落ちていく──落ちたくないと、咄嗟に思った。だがしかし、右翼があるはずの箇所には、なにもない。
そこで、ようやく思い出す。
そうだ。俺は、翼を失ったのだ。
「哀れだな、ゼペス……人間の女などにうつつを抜かすから、こんなことになる」
そう言って見下すリリス様は、侮蔑した笑い声が上げた。そんな彼に対し、怒りはなかった。ただ、悲しかった。
また、こんなことを思わされる──死にたくない。
「俺には、まだ……やり残したことが、ある」
必死に手を伸ばすが、その手を掴んでくれる者など誰もいない。分かっている。
だが、それでも──
「頼む、邪竜……俺に、力を……俺に力を寄越せぇえッ!」
その瞬間、手のひらになにか、暖かいものが澄み渡るような、そんな感覚を受けた──
◾️
「…………え?」
目を開けて最初、見慣れた天井がそこにはあった。間違いない、ここは俺の自室だ。
でも、どうして。
「俺は、死んだのでは、なかったのか……」
ボソボソと独り言を呟き、起き上がろうとして……ん?
手のひらに、なにか柔らかい感触。そう言えば悪夢の中で、俺は力を求めて手を伸ばしたのだったな。こうしてまた帰ってこれたのは、その足掻きがあってこそ、かもしれない。
「……ふっ。邪竜の真の封印が、ついに解放され──」
「な、な、な……なにやってんだこのバカヤロウッ!」
バチンッ──そんな音と、俺の頬に痛みが走ったのは同時だった。
手のひらで、打たれた?
訳も分からず頭をベッドの脇へ傾けると──そこにはメイド服のマドルフがいた。涙目で、顔を真っ赤にして、俺のことを見つめている。
まさか──
「マドルフ……お前が、俺を死の淵から呼び覚ましてくれた、のか?」
起き上がろうとして、つい体に力が入って──もみっ。
再度、柔らかい感触──それは、たわわなマドルフの胸だった。
そうして、二度目のビンタが飛んできたのだった。
「ったく、起きた瞬間から『邪竜』『邪竜』って、呆れたやつだ。しかも、あんな蛮行を……」
と、マドルフはこの通り御立腹のご様子。
マドルフの怒りが冷めるのを待って、俺はことの顛末について尋ねることにした。
「ゼペス、あんたが翼を撃ち抜かれたときは、本気で死んだと思ったよ。でもまさか、あたしと同じ魔族殺しの紋章持ちがいるなんてな……」
やはり、俺の記憶正しかったようだ。
だが、そうだとするならば、どうして……。
「俺は、確かにあのとき、死んだはずだが……」
「ビルマだよ」
──えっ?
「いきなりさ、空からビルマが降ってきたんだよ。しかも、背中から例の黒い翼なんかはやしてさ。あいつ、本気で人間辞めてるよな……」
マドルフは、興奮と動揺の入れ混じった、とにかくよく分からないテンションで語り明かしてくれた。
マドルフ曰く、ビルマ様が俺たちの窮地に駆けつけ、冒険者を一瞬にして無力化してみせたらしい。それまでは、マドルフがなんとか奮闘してくれたのこと。
「本当に驚いた……ビルマが『天罰が必要ね』って言った途端、冒険者たちが突然バタバタ倒れはじめたんだよ。この前、灰狼勇華団をやったときみたいにさ」
「ああ、そうか……」
「ああ、そうなんだよ! しかもだ、ゼペス、あんたの傷も一瞬にして回復させてな。とにかく、やばかったよ」
「……マドルフ」
「いやぁ、本当、どういうカラクリなんだろうな。この前のことにしても今回のことにしても、まるで別人みたいに!」
「マドルフ」
「ん? どうした、ゼペス」
「いや、お前楽しそうだなと、そう思ってな」
「楽、しい? ……は? いやいや、はぁあ⁉︎」
マドルフは、「あり得ねーし!」「驚いただけだし!」と、必死に否定している。その姿が、なんだか可笑しかった。
「ふん、帰る」
「マドルフ」
「はぁ……今度はなんだよ?」
「逃げずに、待っていてくれたのだな。俺のことを」
「⁉︎」
俺がそう言った瞬間、マドルフの顔が、一気に赤くなった。また、パクパクと口を開けたり閉じたりを繰り返す。
「かかか、勘違いするな! あたしはただッ、無様に死にゆくあんたの姿をあざ笑ってやろうと──」
「健気なやつなのだな」
「⁉︎⁉︎」
「マドルフ、ありがとう。お前は、俺の命の恩人だ」
俺は今度こそベッドから起き上がり、きょとんとするマドルフの元へ。片膝をつき、彼女の手を自身の額に当てた。
「この恩は、決して忘れない。いつかお前が窮地に陥ったときは、このゼペス・ハーゼットが、お前を守ると誓おう」
そして、俺はその手の甲に、そっと唇を当てた。
「誰にも、お前は傷つけさせない」
そして、マドルフを見上げようとした、刹那──強烈な回し蹴りが、俺の側頭部を強襲した。
「き、気持ち悪いことしてんじゃねーよ! 死ねバカ!」
叫んだマドルフが、慌てて部屋を後にしようとして──盛大にコケた。真っ黒のパンツが、おっ広げとなる。次に、キッと俺のことを睨みつけながら、言ってきた。
「み、見るなクソがっ!」
「いや待て、俺はなにも……」
あらぬ誤解を解きたかったが、そのときは既にマドルフはいなかった。一体、なんだったのだろうか?
「ふっ……俺の放つ、魔性の色気にあてられた、か……」
なんてな。
きっと、トイレに行きたくて仕方がなかったのだろう。あの慌てぶりは、間違いない。
そんなこと、よりもだ。
「俺は……」
俺は、生きている。
生きていた。
◾️
「ビルマ様」
なんとか歩く感覚を取り戻した俺は、その足で玉座の間へと向かった。だだっ広い室内には、いつも誰かしらがいるのだが、今日はビルマ様だけであった。しかも、例の黒い翼を生やしたビルマ様。
窓の向こうを眺めるビルマ様へ、俺は歩み寄る。その背に、頭を下げた。
「話は、マドルフから全て聞きました。ビルマ様のお手を煩わせてしまったようで……本当に、申し訳ございませんでした」
ビルマ様は、なにも答えてはくれなかった。もしかして、不甲斐ない俺に愛想を尽かしてしまったのかと、心臓が激しく鼓動を始めた──
「今日は、天気が良いわね」
「え? あ、ああ……そう、ですね」
「こんな日に空を飛べたら、さそがし気持ち良いのでしょうね」
「……はい、そうかもしれません」
「あなたはもう一度飛べるのよ、ゼペス」
そう言って、ビルマ様はゆっくりと振り返えると、優しい笑みを浮かべる。
「それは、とても幸せなことなのよ」
半身を日の光に照らされて、顔にかかった髪を丁寧に耳へとかける。そんなビルマ様は、普段とはまるで別人のようで──
まるで、女神様のように、美しかった。
「いいことゼペス。もう二度、生きることを諦めてはいけない。いつ、いかなる状況、どんな死の淵に立たされても、生きるために最後まで抗いなさい。あなたの命は、もう一人のものではないのだから」
ビルマ様は、俺の顎に指先を当てて、ゆっくりと頭を持ち上げた。
「あとは……そうね。わたしのことを一番に考えなさい。わたしを置いて先に逝くなんて、絶対許されないんだから」
「ビルマ様……」
「ふふふ、なんて顔をしてるいるの、ゼペス。冗談よ」
「……いえ、俺が、間違っておりました」
なぜあの時、俺は最後まで戦おうなんて思ったのだろうか?
それは、ディスガイアのため? ビルマ様のため? ──いや、違う。あの時の俺を支配していたのは、紛れもなく悲しみや怒りだった。
もしくは、それは安堵だったのかもしれない。
死んでしまえば、もう戦わなくていい。生きて辛い思いしなくていいという、そんなにも後ろめたい感情が、俺から生きる力を奪っていたのだろうか。
まだまだ、修行が足りないな──
「もう二度と、生きることを諦めたりしません。ビルマ様に救っていただいたこの命、決して無駄にはしません」
握り拳を胸に当ててそう誓えば、ビルマ様は、ふっと笑った──次の瞬間、黒い翼が虹色の光玉となり弾けた。
「……ぜ、ぜ、ぜ……」
「??」
「ゼペスゥー‼︎」
突然、ビルマ様の目に大粒の涙が溜まったかと思えば、そのまま勢いよく俺の胸に飛び込んできた。
「んもぅ! バカバカバカバカッ! もう目覚めないかと思って、心配したんだからね⁉︎ ゼペス、あなたいつもそうじゃない! 俺は一人で平気だ、大丈夫だって、そうやってカッコつけてばかりいるからバチがあたるのよ!」
「申し訳ございません……」
「本当に分かってるのかしら……いつも、心配ばかりさせて……まあ、でも…この島のために頑張ってくれた上でのことだし……うん。今回は、大目に見てあげるわ」
ビルマ様は、俺をぎゅっと抱きしめて、俺の胸の中に顔を埋めた。
「おかえりなさい、ゼペス」
次に顔を上げたビルマ様の表情、それは泣き笑いする、まるで天使のような笑みだった。
「心配をかけた罰として、背中に乗せてもらうんだからね!」
その瞬間、無性に泣きたくなった。
帰ってきたのだなぁと、心の底から安堵している俺がいた。
邪竜として疎まれ続けてきた俺にも、ついに居場所ができた。
俺の帰りを待っていてくれる、素敵な主人に恵まれた。
ただ、思うところはある。
はて、今の愛らしいビルマ様と、先ほどの凛々しいビルマ様、どちらが本当なのだろうか、と──。
(…………ふっ、愚問だったか。なあ、邪竜)
いずれにせよ、ビルマ様はビルマ様。
俺の愛した人間の少女であり、この身の全てを捧げると誓った、魔王ビルマ・マルクレイド様に変わらない。
これ以上の至福は、ない。
そしてその幸せが、この先何年、何十年と、一生続いて欲しいと、そう思う。
もう、誰にも奪わせない。
「分かりました。では、ビルマ様、悪魔の果樹園へと行きましょう。今日はやけに、古傷が……邪竜が、疼く……」
「え? 傷は全部癒えてるはずだけど?」
「ぁぁああ……み、右目がぁああッ!」
「ぜ、ゼペスッ⁉︎」
そうして、俺はビルマ様を連れて大空へと飛び立っていく。
ビルマ様ともに、これからも生きていく。
そうありたいと、広大な空の青に願った。
◾️
「ご報告にあがりました、ハスラー様」
王都エルシャンドラ──その何処かにある建物の、蝋燭の火が怪しく揺らめく暗がりの一室で。
「ご苦労さまでしたわ。それで、どうなりましたの?」
「はい。アーノルドは、邪竜の討伐に失敗。先ほど、転移魔法陣を通じて帰ってまいりましたが、」
「やはり、灰狼勇華団の皆さまのように、骨抜きとなっていましたの?」
「……ええ。意識はあるものの、精神がやられているのか、まともな会話すらままならない状態にございます」
「あらあら、それは残念ですわ。まあ、期待などしてはいませんでしたが」
と、その女──ハスラー・ハイクラッドは、ニヤニヤと口角を歪めながら言った。
「それで、例のものは?」
「はい、こちらに」
伝令の女が、ハスラーへ臙脂色の包みを渡す。ハスラーはそれを受け取ると、中に入っていた二つの小さな球体を取り出す。
それは、人の目玉であった。
「ご苦労様でしたわ、アーノルド。さて、あなたが見てきたものを、わたくしにも見せて頂戴まし」
ハスラーは、その目玉をパクリと口に含む。まるで飴玉でも舐めているみたく、舌の上で転がして──ガリッ!
「ふふふ、なるほど。『魔族殺しの紋章』はやはり、彼らにも有効なようですね」
「ハスラー様、それは……」
「ハイクラッド家に代々伝わる、闇魔術の一種。宿主の生態部位から、その記憶を読み取るのですわ。今回は目ですから、その映像を頂きましたの」
ハスラーは、唇を舐めずり回しながら、合掌。
「美味しゅうございました」
伝令の女の背筋に、ゾクゾクと悪寒がよぎる。噂通りの、得体の知れない人物だ……。
ハイクラッド家──王族エルシャンドラに古くから仕える王家の血筋とされ、これまで幾度となく訪れたエルシャンドラの危機を何度も救ってきたとされている。
そして、ハイクラッド家の当主に当たる彼女、ハスラー・ハイクラッドは最上級冒険者『五天』の一人。
そんな彼女の二つ名とは──鮮血の探求者。
殺した魔族たちの死体を持ち帰り、解体し、なにやら悍ましい研究をしていると噂されている。
伝令の女は、思う──どうやら、噂は間違いなかったようだな、と。
「それで、貴女」
「⁉︎ は、はい! なんでしょう?」
「貴女も、あの地に居たのでしょう?」
「え、ええ……ただ私は、ハスラー様の命令通り偵察をしていただけですが、」
「そう……ふふふ」
不気味な笑い声を出して、伝令の女を見つめるハスラー。その瞳は、表情は、恍惚に満ち溢れていた。
「それで、貴女はわたくしになにを見せてくださるのかしらん?」
1
お気に入りに追加
990
あなたにおすすめの小説
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
【完結】転移魔王の、人間国崩壊プラン! 魔王召喚されて現れた大正生まれ104歳のババアの、堕落した冒険者を作るダンジョンに抜かりがない!
udonlevel2
ファンタジー
勇者に魔王様を殺され劣勢の魔族軍!ついに魔王召喚をするが現れたのは100歳を超えるババア!?
若返りスキルを使いサイドカー乗り回し、キャンピングカーを乗り回し!
経験値欲しさに冒険者を襲う!!
「殺られる前に殺りな!」「勇者の金を奪うんだよ!」と作り出される町は正に理想郷!?
戦争を生き抜いてきた魔王ババア……今正に絶頂期を迎える!
他サイトにも掲載中です。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー
ノリオ
ファンタジー
今から約200年前。
ある一人の男が、この世界に存在する数多の人間を片っ端から大虐殺するという大事件が起こった。
犠牲となった人数は千にも万にも及び、その規模たるや史上最大・空前絶後であることは、誰の目にも明らかだった。
世界中の強者が権力者が、彼を殺そうと一心奮起し、それは壮絶な戦いを生んだ。
彼自身だけでなく国同士の戦争にまで発展したそれは、世界中を死体で埋め尽くすほどの大惨事を引き起こし、血と恐怖に塗れたその惨状は、正に地獄と呼ぶにふさわしい有様だった。
世界は瀕死だったーー。
世界は終わりかけていたーー。
世界は彼を憎んだーー。
まるで『鬼』のように残虐で、
まるで『神』のように強くて、
まるで『鬼神』のような彼に、
人々は恐れることしか出来なかった。
抗わず、悲しんで、諦めて、絶望していた。
世界はもう終わりだと、誰もが思った。
ーー英雄は、そんな時に現れた。
勇気ある5人の戦士は彼と戦い、致命傷を負いながらも、時空間魔法で彼をこの時代から追放することに成功した。
彼は強い憎しみと未練を残したまま、英雄たちの手によって別の次元へと強制送還され、新たな1日を送り始める。
しかしーー送られた先で、彼には記憶がなかった。 彼は一人の女の子に拾われ、自らの復讐心を忘れたまま、政府の管理する学校へと通うことになる。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる