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楽園増強編

邪竜、死す

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 俺は、一面真っ暗闇の崖っぷちに立っていた。真後ろには、底無しの奈落が広がっている。

 そんな俺の前には、なぜか険しく俺を睨むリリス様が立っていた。

 眉間に皺を寄せたリリス様が、俺へと手を伸ばしてくる。その手の甲には、魔族殺しの紋章ディスペリアがギラギラと青白い輝きを放ってた。

「醜い邪竜風情が、よもやとでも勘違いしたのか?」

 リリス様の言葉一つ一つが、鋭利な刃物のように俺の胸へと突き刺さる。

 そうだ、俺は邪竜──太古の昔より、災いを齎す存在として、人々から恐れられ、魔族から崇められてきた。幸せとは程遠く、むしろ死の象徴として知られる、残虐なる竜なのだ。

 リリス様が、俺の肩をそっと押した。

 俺は、奈落の底へと落ちていく──落ちたくないと、咄嗟に思った。だがしかし、右翼があるはずの箇所には、なにもない。

 そこで、ようやく思い出す。

 そうだ。俺は、翼を失ったのだ。

「哀れだな、ゼペス……人間の女などにうつつを抜かすから、こんなことになる」

 そう言って見下すリリス様は、侮蔑した笑い声が上げた。そんな彼に対し、怒りはなかった。ただ、悲しかった。

 また、こんなことを思わされる──死にたくない。

「俺には、まだ……やり残したことが、ある」

 必死に手を伸ばすが、その手を掴んでくれる者など誰もいない。分かっている。

 だが、それでも──

「頼む、邪竜ダークネスドラゴン……俺に、力を……俺に力を寄越せぇえッ!」

 その瞬間、手のひらになにか、暖かいものが澄み渡るような、そんな感覚を受けた──

◾️

「…………え?」

 目を開けて最初、見慣れた天井がそこにはあった。間違いない、ここは俺の自室だ。

 でも、どうして。

「俺は、死んだのでは、なかったのか……」

 ボソボソと独り言を呟き、起き上がろうとして……ん?

 手のひらに、。そう言えば悪夢の中で、俺は力を求めて手を伸ばしたのだったな。こうしてまた帰ってこれたのは、その足掻きがあってこそ、かもしれない。

「……ふっ。邪竜ダークネスドラゴンの真の封印が、ついに解放され──」
「な、な、な……なにやってんだこのバカヤロウッ!」

 バチンッ──そんな音と、俺の頬に痛みが走ったのは同時だった。

 手のひらで、打たれた?

 訳も分からず頭をベッドの脇へ傾けると──そこにはメイド服のマドルフがいた。涙目で、顔を真っ赤にして、俺のことを見つめている。

 まさか──

「マドルフ……お前が、俺を死の淵から呼び覚ましてくれた、のか?」

 起き上がろうとして、つい体に力が入って──もみっ。

 再度、柔らかい感触──それは、たわわなマドルフの胸だった。

 そうして、二度目のビンタが飛んできたのだった。



 


「ったく、起きた瞬間から『邪竜』『邪竜』って、呆れたやつだ。しかも、あんな蛮行を……」

 と、マドルフはこの通り御立腹のご様子。

 マドルフの怒りが冷めるのを待って、俺はことの顛末について尋ねることにした。

「ゼペス、あんたが翼を撃ち抜かれたときは、本気で死んだと思ったよ。でもまさか、あたしと同じ魔族殺しの紋章ディスペリア持ちがいるなんてな……」

 やはり、俺の記憶正しかったようだ。
 だが、そうだとするならば、どうして……。

「俺は、確かにあのとき、死んだはずだが……」
「ビルマだよ」

 ──えっ?

「いきなりさ、空からビルマが降ってきたんだよ。しかも、背中から例のなんかはやしてさ。あいつ、本気で人間辞めてるよな……」

 マドルフは、興奮と動揺の入れ混じった、とにかくよく分からないテンションで語り明かしてくれた。

 マドルフ曰く、ビルマ様が俺たちの窮地に駆けつけ、冒険者を一瞬にして無力化してみせたらしい。それまでは、マドルフがなんとか奮闘してくれたのこと。

「本当に驚いた……ビルマが『天罰が必要ね』って言った途端、冒険者たちが突然バタバタ倒れはじめたんだよ。この前、灰狼勇華団ブレイブウルフをやったときみたいにさ」
「ああ、そうか……」
「ああ、そうなんだよ! しかもだ、ゼペス、あんたの傷も一瞬にして回復させてな。とにかく、やばかったよ」
「……マドルフ」
「いやぁ、本当、どういうカラクリなんだろうな。この前のことにしても今回のことにしても、まるで別人みたいに!」
「マドルフ」
「ん? どうした、ゼペス」
「いや、お前楽しそうだなと、そう思ってな」
「楽、しい? ……は? いやいや、はぁあ⁉︎」

 マドルフは、「あり得ねーし!」「驚いただけだし!」と、必死に否定している。その姿が、なんだか可笑しかった。

「ふん、帰る」
「マドルフ」
「はぁ……今度はなんだよ?」
「逃げずに、待っていてくれたのだな。俺のことを」
「⁉︎」

 俺がそう言った瞬間、マドルフの顔が、一気に赤くなった。また、パクパクと口を開けたり閉じたりを繰り返す。

「かかか、勘違いするな! あたしはただッ、無様に死にゆくあんたの姿をあざ笑ってやろうと──」
「健気なやつなのだな」
「⁉︎⁉︎」
「マドルフ、ありがとう。お前は、俺の命の恩人だ」

 俺は今度こそベッドから起き上がり、きょとんとするマドルフの元へ。片膝をつき、彼女の手を自身の額に当てた。

「この恩は、決して忘れない。いつかお前が窮地に陥ったときは、このゼペス・ハーゼットが、お前を守ると誓おう」

 そして、俺はその手の甲に、そっと唇を当てた。

「誰にも、お前は傷つけさせない」

 そして、マドルフを見上げようとした、刹那──強烈な回し蹴りが、俺の側頭部を強襲した。

「き、気持ち悪いことしてんじゃねーよ! 死ねバカ!」

 叫んだマドルフが、慌てて部屋を後にしようとして──盛大にコケた。真っ黒のパンツが、おっ広げとなる。次に、キッと俺のことを睨みつけながら、言ってきた。

「み、見るなクソがっ!」
「いや待て、俺はなにも……」

 あらぬ誤解を解きたかったが、そのときは既にマドルフはいなかった。一体、なんだったのだろうか?

「ふっ……俺の放つ、魔性の色気にあてられた、か……」

 なんてな。
 きっと、トイレに行きたくて仕方がなかったのだろう。あの慌てぶりは、間違いない。

 そんなこと、よりもだ。

「俺は……」

 俺は、生きている。

 生きていた。

◾️

「ビルマ様」

 なんとか歩く感覚を取り戻した俺は、その足で玉座の間へと向かった。だだっ広い室内には、いつも誰かしらがいるのだが、今日はビルマ様だけであった。しかも、例の黒い翼を生やしたビルマ様。

 窓の向こうを眺めるビルマ様へ、俺は歩み寄る。その背に、頭を下げた。

「話は、マドルフから全て聞きました。ビルマ様のお手を煩わせてしまったようで……本当に、申し訳ございませんでした」

 ビルマ様は、なにも答えてはくれなかった。もしかして、不甲斐ない俺に愛想を尽かしてしまったのかと、心臓が激しく鼓動を始めた──

「今日は、天気が良いわね」
「え? あ、ああ……そう、ですね」
「こんな日に空を飛べたら、さそがし気持ち良いのでしょうね」
「……はい、そうかもしれません」
「あなたはもう一度飛べるのよ、ゼペス」

 そう言って、ビルマ様はゆっくりと振り返えると、優しい笑みを浮かべる。

「それは、とても幸せなことなのよ」

 半身を日の光に照らされて、顔にかかった髪を丁寧に耳へとかける。そんなビルマ様は、普段とはまるで別人のようで──

 まるで、女神様のように、美しかった。

「いいことゼペス。もう二度、生きることを諦めてはいけない。いつ、いかなる状況、どんな死の淵に立たされても、生きるために最後まで抗いなさい。あなたの命は、もう一人のものではないのだから」

 ビルマ様は、俺の顎に指先を当てて、ゆっくりと頭を持ち上げた。

「あとは……そうね。わたしのことを一番に考えなさい。わたしを置いて先に逝くなんて、絶対許されないんだから」
「ビルマ様……」
「ふふふ、なんて顔をしてるいるの、ゼペス。冗談よ」
「……いえ、俺が、間違っておりました」

 なぜあの時、俺は最後まで戦おうなんて思ったのだろうか?
 それは、ディスガイアのため? ビルマ様のため? ──いや、違う。あの時の俺を支配していたのは、紛れもなく悲しみや怒りだった。

 もしくは、それは安堵だったのかもしれない。

 死んでしまえば、もう戦わなくていい。生きて辛い思いしなくていいという、そんなにも後ろめたい感情が、俺から生きる力を奪っていたのだろうか。

 まだまだ、修行が足りないな──

「もう二度と、生きることを諦めたりしません。ビルマ様に救っていただいたこの命、決して無駄にはしません」

 握り拳を胸に当ててそう誓えば、ビルマ様は、ふっと笑った──次の瞬間、黒い翼が虹色の光玉となり弾けた。

「……ぜ、ぜ、ぜ……」
「??」
「ゼペスゥー‼︎」

 突然、ビルマ様の目に大粒の涙が溜まったかと思えば、そのまま勢いよく俺の胸に飛び込んできた。

「んもぅ! バカバカバカバカッ! もう目覚めないかと思って、心配したんだからね⁉︎ ゼペス、あなたいつもそうじゃない! 俺は一人で平気だ、大丈夫だって、そうやってカッコつけてばかりいるからバチがあたるのよ!」
「申し訳ございません……」
「本当に分かってるのかしら……いつも、心配ばかりさせて……まあ、でも…この島ディスガイアのために頑張ってくれた上でのことだし……うん。今回は、大目に見てあげるわ」

 ビルマ様は、俺をぎゅっと抱きしめて、俺の胸の中に顔を埋めた。

「おかえりなさい、ゼペス」

 次に顔を上げたビルマ様の表情、それは泣き笑いする、まるで天使のような笑みだった。

「心配をかけた罰として、背中に乗せてもらうんだからね!」

 その瞬間、無性に泣きたくなった。
 帰ってきたのだなぁと、心の底から安堵している俺がいた。

 邪竜として疎まれ続けてきた俺にも、ついに居場所ができた。

 俺の帰りを待っていてくれる、素敵な主人に恵まれた。

 ただ、思うところはある。

 はて、今の愛らしいビルマ様と、先ほどの凛々しいビルマ様、どちらが本当なのだろうか、と──。

(…………ふっ、愚問だったか。なあ、邪竜ダークネスドラゴン)

 いずれにせよ、ビルマ様はビルマ様。
 俺の愛した人間の少女であり、この身の全てを捧げると誓った、魔王ビルマ・マルクレイド様に変わらない。

 これ以上の至福は、ない。

 そしてその幸せが、この先何年、何十年と、一生続いて欲しいと、そう思う。

 もう、誰にも奪わせない。

「分かりました。では、ビルマ様、悪魔の果樹園へと行きましょう。今日はやけに、古傷が……邪竜が、疼く……」
「え? 傷は全部癒えてるはずだけど?」
「ぁぁああ……み、右目がぁああッ!」
「ぜ、ゼペスッ⁉︎」

 そうして、俺はビルマ様を連れて大空へと飛び立っていく。

 ビルマ様ともに、これからも生きていく。

 そうありたいと、広大な空の青に願った。

◾️

「ご報告にあがりました、ハスラー様」

 王都エルシャンドラ──その何処かにある建物の、蝋燭ろうそくの火が怪しく揺らめく暗がりの一室で。

「ご苦労さまでしたわ。それで、どうなりましたの?」
「はい。アーノルドは、邪竜の討伐に失敗。先ほど、転移魔法陣テレポートゲートを通じて帰ってまいりましたが、」
「やはり、灰狼勇華団ブレイブ・ウルフの皆さまのように、骨抜きとなっていましたの?」
「……ええ。意識はあるものの、精神がやられているのか、まともな会話すらままならない状態にございます」
「あらあら、それは残念ですわ。まあ、期待などしてはいませんでしたが」

 と、その女──ハスラー・ハイクラッドは、ニヤニヤと口角を歪めながら言った。

「それで、例のものは?」
「はい、こちらに」

 伝令の女が、ハスラーへ臙脂色の包みを渡す。ハスラーはそれを受け取ると、中に入っていた二つの小さな球体を取り出す。

 それは、であった。

「ご苦労様でしたわ、アーノルド。さて、あなたが見てきたものを、わたくしにも見せて頂戴まし」

 ハスラーは、その目玉をパクリと口に含む。まるで飴玉でも舐めているみたく、舌の上で転がして──ガリッ!

「ふふふ、なるほど。『魔族殺しの紋章ディスペリア』はやはり、彼らにも有効なようですね」
「ハスラー様、それは……」
「ハイクラッド家に代々伝わる、闇魔術の一種。宿主の生態部位から、その記憶を読み取るのですわ。今回は目ですから、その映像を頂きましたの」

 ハスラーは、唇を舐めずり回しながら、合掌。

「美味しゅうございました」

 伝令の女の背筋に、ゾクゾクと悪寒がよぎる。噂通りの、得体の知れない人物だ……。

 ハイクラッド家──王族エルシャンドラに古くから仕える王家の血筋とされ、これまで幾度となく訪れたエルシャンドラの危機を何度も救ってきたとされている。

 そして、ハイクラッド家の当主に当たる彼女、ハスラー・ハイクラッドは最上級冒険者『五天』の一人。

 そんな彼女の二つ名とは──鮮血の探求者ブラッディシーカー

 殺した魔族たちの死体を持ち帰り、解体し、なにやらおぞましい研究をしていると噂されている。

 伝令の女は、思う──どうやら、噂は間違いなかったようだな、と。

「それで、貴女」
「⁉︎ は、はい! なんでしょう?」
「貴女も、あの地に居たのでしょう?」
「え、ええ……ただ私は、ハスラー様の命令通り偵察をしていただけですが、」
「そう……ふふふ」

 不気味な笑い声を出して、伝令の女を見つめるハスラー。その瞳は、表情は、恍惚に満ち溢れていた。

「それで、貴女はわたくしになにを見せてくださるのかしらん?」
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