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第4章 騒乱と死闘

6話 結果はどこまでも残酷で

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「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」


 やばかった。
 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」


 本当に、やばかった。


「はぁ、はぁ、はぁ…う、嘘だろ…」


 一瞬でも判断が遅れていれば、俺は本当に死んでいたかもしれないと、そう思った。
 死を感じた。
 また未だかつて感じたことのない程の、人の悪意ってやつを感じ取った気がした。


 
----------------------------

【通常スキル】
・エリアスリーパー

[概要]
空間を切断、再結合し、瞬間的なる空間移動を可能にしたスキル。その空間移動速度はレベルによって比例する。

----------------------------


 すぐ様[スキル]を発動しなければ、俺は、俺は…


『死んでいた?』



「言ったでしょ?ノブナガはって。何で分からなかったの?」
 そう言って溜息を吐いたバホメット。
 

「う、嘘だろ…こ、こいつは…元々死んでいたっていうのか!?」


 俺は激しく取り乱しては、信じられないといった口振りでバホメットに尋ね聞いていた。
 そんな俺に対するバホメットの反応とはやはりといって薄く、小馬鹿にするようには答えた。


「そうに決まってるじゃない」


「…な、何だよそれ!だって、あんなにも普通で、どっからどう見たって、普通のーー」


「普通って、何?たけし君の言う普通って、一体全体何なの?普通だったら敵じゃないとでも言うの?本当の悪意を持った奴が、わざわざあからさまに『自分は今から貴方を殺します』だなんて言うとでも?はは、ほんと能天気にも程があるのね。まさかここまでのお人好しだったなんて、私の目も狂ったのかしら?」


「……く、糞!!糞糞糞糞糞糞糞糞…」


 何も言い返せない自分が悔しかった。
 悔しすぎて、改めて自分の愚かさ、甘さを悟っている自分がいた。
 俺はなんて馬鹿だったんだろうか…
 そりゃあそうだろ、一番初めに戦ったアルバートがただあからさまな殺人鬼であったってだけで、誰しもそうであるわけじゃないと、何故俺は今の今まで気付かないでいたのだろうか?


 それを言えばアルテマだってそうじゃないか。
 アルテマはかつて、ラクシャータと巡り合う前、『ドラゴンテール』という裏組織では数多くの命を奪っていたって知ってたじゃねーか。
 あんなにも好青年であったアルテマでさえそんな過去があって、まるで人を殺めたことなんて一度もないような雰囲気でいたアルテマでさえ、昔、悪意を刃に乗せていたってのに…


『俺は、今までどうしてこんなにも悠長な考え方をしていたのだろうか?』


 愚かな自分が、憎い、自分が…激しく憎い。
 憎い、憎い…憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い…


『憎い』



「別に反省するのは勝手だけど、ほら、敵さんがゾロゾロとやって来てるけど」


「……」


 敵、だと?


「私が力を貸せるのはここまで。後は自分一人の力でどうにかしなさい。私は優雅に…ただ拝見させてもらうだけだから…」



 最後にバホメットは「それじゃあね、たけし君」と、そう言い残して、フワリとは実態を消失させた。
 それはまるで煙りのようで、蜃気楼のようで、ただバホメットはその場から姿を消す。
 消した後、俺の耳には地面を擦り歩く大勢の足音を聞いた。
 聞いて、音の聞こえる二階の奥の方へと視線を移した。


 そこにはゾロゾロと、虚ろな表情を浮かべてはこちらへと歩み寄ってくる大勢の人間の姿。数にして20人ばかし。
 その人間達の姿はまるで生前に映画などで見たゾンビのようで、でもこれは映画じゃない、現実。異世界ベルハイムで今まさに巻き起こっている現実だ。


 なればこそ、あれはゾンビじゃない。
 ノブナガが操っている亡者の成れの果て。
 奴等に生気はなく、ただただ俺を殺すためだけには向かってきたいるのだろう脅威の群れに過ぎない。

 
 この異世界ベルハイムは、どこまでも残酷だと思った。


「はは、そうかい…そうかい…」


 ああ、俺は何て馬鹿で、愚かだったのだろうか…


「迷いも、躊躇いも、捨ててきたつもりだったんだがなぁ…」


 無知は罪。知ろうと、理解しようとしなかった俺が、全て悪い。


「……もう、いいや…」


 悪いのは俺。全部俺が悪い。


「…殺してやるよ。疑わしきは、全部…」


 今更後悔したって遅い。愚かだった自分を悔いたところで、現実は何一つ変わらない。
 変わらないものに、頭を悩ますのはもっと愚かしい行為だ。


 だったら、殺せばいいじゃねーか…


「死ね、糞ども」
 


















Now loading…
----------------------------



【メソッド】
・LV:14まで残り経験値483を達成しました。
・LV:15まで残り経験値538を達成しました。
・LV:16まで残り経験値599を達成しました。



Now loading…
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 排除。





----------------------------



【メソッド】
・LV:17まで残り経験値654を達成しました。
・LV:18まで残り経験値703を達成しました。
・LV:19まで残り経験値764を達成しました。



Now loading…
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 破壊。







----------------------------



【メソッド】
・LV:20まで残り経験値811を達成しました。
・LV:21まで残り経験値876を達成しました。
・LV:22まで残り経験値925を達成しました。



Now loading…
----------------------------





 抹殺。
 全てを、破壊せよ。
 機械のように淡々と、人間のようには非常に。
 愚かだった自分を二度と忘れるな。











 結果はどこまでも残酷だった。
 残酷過ぎて、以前の俺なら心を痛めていたかもしれない。 
 感情を失ったとは笑える。全然失ってないぞ?
 どういうこどだよアンヘル。
 お前、俺に嘘を吐いたのか?
 もしそうだったら、俺はお前も殺すぞ?


『もう、信用なんてしない…』



 ステータス展開中…
----------------------------


class : jokerジョーカー
【たけし】


LV  : 22
HP : 2800 / 2800
MP : 1932 / 1932



ATK攻撃 : 3306
DEF防御 : 2041
MAT魔法攻撃 : 1662
MAE魔法防御 : 1103


【装備】
・アルテマの剣   ランク[AA+] レア度[★★★★★]


【称号スキル】
・アルテマ・スコットスミス LV:3

【魔法スキル】
・スモールフレイム LV:1


【固有スキル】
・スキルドレイン LV :xxx  (一対象につき一回のみ使用可能)
・スキルブレイク LV :xxx  (一対象につき一回のみ使用可能)
※一対象に対してスキルドレインとスキルブレイクの併用は不可とする
・罪の在り方 LV:xxx (使用可能時期に制限があります)
・心眼 LV:2 


【通常スキル】
・見切り LV:5 
・流水の型 LV:3 
・鉄壁の構え LV:4
・闇足 LV:4 
・火剣 LV:2 
・氷剣 LV:2 
・雷の剣鳴 LV:3 
・先陣の先駆け LV:3 
・水狐の寵愛 LV:xxx (ただいま使用できません)
※水狐との契約が解除されました。
※スキル発動には再度契約する必要があります。
・剣鬼形態 LV:1 
・リバースマジック LV:2 
・熱血心 LV:2
・リバウンドリアクション LV:3
・エリアドロップ LV:3
・エリアスリーパー LV:5 
・隼の舞 LV:4
・影分身 LV:1


【メソッド】
・ LV :23まで残り経験値1001


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 己の甘さこそが悪だと、俺は知った。




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