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第2章 ラクスマリア城とラクシャータ王女の剣
8話 城の内情について
しおりを挟むグインは俺が席に着いたのを皮切りに、フゥーと一回息を吐いては、落ち着いた様子では口を開いた。
「とにかくたけし、君が無事でよかったよ」
「あ、ども」
開口一番、グインの言った台詞とはそんな労いの言葉だった。
何だよ、結構キツイ奴かと思ってたけどそうでもないのか?
「念の為とはいえ、君を何日もの間部屋に隔離していたことを許してほしい、たけし」
「へ?」
おいおい、グイン。それはどういう…
「あんな事があった手前だ、君が敵のマインドコントロールを受けていないという可能性も捨てきれなかったわけだよ。だから様子見として、君にはあの部屋にて隔離状態に入ってもらった。最も、君には何らマインドコントロールを受けている兆候がなかったわけだからね、それに関しては酷な事をしたと私自身反省しているよ…」
グインはそう申し訳なさそうには言って、深々と頭を下げた。
ただ、謝られたところでいまいち状況が理解できない俺にはグインに対してどうこう思う余裕などない故、何のこっちゃ分からんわけだ。
それよりも、気になる事が一つ。
「…俺の事はとりあえずいい、それよりもだ…あんな事ってのは何だ?何かあったのか?」
「…ああ、そうなんだよ」
深刻そうな顔を受けべて、グインは深いため息を吐いた。
吐いて、辺りをキョロキョロと見回し確認すると、俺に向け軽い手招きを行なった。
え、何だよ一体…
「…顔を近くに、一応傍聴対策を施してはいるが、誰かに聞かれてないという保証もない」
「え?」
傍聴対策?誰かに聞かれないという保証?つまり聞かれちゃまずい話ってこと?
よく意味はわからなかったが、とりあえずグインに顔を近づける。
近づけて…うわっ、めっちゃいい匂い…
しかも美女とこんなにも顔が近いし…
「何をニヤニヤしているたけし?」
あ、やべ。
「あははは、すまんすまん。で、一体全体何があったんだグイン?」
そうして、グインは重苦しい雰囲気の中には語り始めた。
「…驚かないで聞いてほしい、たけし。今から丁度1週間前の事になるんだが…城内の兵士が何者かによって殺された」
「……え?」
つまりそれって…殺人?あの殺人?
推理ドラマとかでよく見るあの殺人ってこと?
「殺害された兵士は5人。皆城内の警護を行なっている最中にも殺されていた。犯行に及んだとされる時間帯は深夜、城内の見回りに出た兵士が当直室に戻るまでの2、30分の内には殺害行為は完了していたことが分かった。殺された兵士は皆喉元刃物にて一突き、兵士達の遺体に荒らそった痕跡が見られない事から一瞬のうちには殺されたようだ。犯行の痕跡は一切残っておらず、兵士の死体だけがその場に残されていた。しかも犯人はまだ捕まっていない。現状誰がやったのかさえも分からない程の完全犯罪だ。この意味、分かるかたけし?」
「あ、ああ…」
とりあえず状況を整理しよう。
1週間前、深夜の城内の中で警護の任務にあたっていた兵士5人が殺されていた。兵士は皆荒そった痕跡がなく、皆喉元を突かれては絶命した。その事から察するに、相手はかなりの殺人慣れをしている…ということだよな?
だって喉元を一突きだろ?しかも5人をたった2、30分程度でだろ?
しかも犯行の痕跡はないとか…
「まるで必殺仕事人だな、そりゃあ…」
「は?必殺仕事人?」
「あ、すまん。忘れてくれ」
1週間前となると、つまり俺がアルテマの能力を奪った日になるのか?
そうして俺はそのまま丸一日森の中で気を失っていて、俺がこのラクスマリア城で過ごしたのは意識を失っていた2日間と部屋に隠っていた4日間だから、それで7日。うん、やっぱりそうだ。俺がほぼほぼ関われなかった期間にまさかそんなことがあったなんて知らなかった…
「だから俺は隔離されていたってわけか…」
「ああ、その通りだ。たけしがいなくなってからの犯行だったからな、しかも戻ってきたと思えば意識不明の状態だ。今回の犯行に関わった何者かに何かしらをされたとみるのが妥当であると、私がそう判断した。最も、ラクシャータ様にはそんなことは関係のないようだったがね。『たけしに限ってそんなことは絶対にあり得ない!』の一点張り、しかも無断で玉座の間を抜け出しては勝手に君の元へと行っていたようだしね…」
「ラクシャータ様が?」
そうか、だからあの時、意識を取り戻した俺の元にラクシャータはいたのか。
まぁ、殴られたわけだが…でもあれはアルテマとしての記憶がなかった俺が意味不明なことばっかり口走っていた俺が悪いわけだし、ラクシャータは隔離体制にあった俺の元へわざわざ足を運んでくれて、心配してくれていたわけで…うわ、めっちゃいい子じゃん。
「やはり、天使か、あの子は」
「?」
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