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第1章 『俺この異世界ベルハイムで、第二の人生を送る!』-始まりの異世界とジョーカー

11話 道化を演じる

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 何てこった。まさか感情なりに続き味覚まで失うとは… 
 信じられず最後まで食ってみたはいいものの、何も満たされねぇし、てかそもそも何も感じねぇ。
 確かに食事を摂らなければ死ぬ、という人間の生理現象を逸脱出来たことは助かる。が、まさか味覚までも消失するだなんて聞いてねーよ。
 
『まさか俺はこれから一生食事を楽しむこともできないのか…』

 最悪だ、と一瞬だけ、ほんの一瞬だけそう思ってしまった自分がいた。
 ただそんな人間味染みた感情とは、その後直ぐさまドッと押し寄せてきた虚無心の中に溶けてなくなってしまうようだった。
 そうして俺は再び感情なきへ、心を失った俺は「ま、いっか。死ぬわけじゃねーし」と楽観視する。
 そうさ、何故なら俺には悲しみを抱くような要らない感情は捨てられた。勝手には捨てられたのだから、うん、今更何を思うことなんてしねーよ。
 どうせ感情を抱いたところで虚しく、失せるだけーーーこれから先も、ずっと…


 『あーあ、これからの人生味覚がないにも関わらずそれをひた隠して生きなきゃならないのかよ…それってマジ面倒くせぇな…』
 そう思うと気分が沈むーーー俺は本当に不意に、ハァ…とため息が溢していた。

 そんな俺の様子をアルテマは不安そうな顔で見ていた。
 そうしてバツの悪そうな顔を作っては、「口に合わなかったか?」と一言。
 やばい、俺ってば今顔にも態度にも出してた!?
 
『違う、そうじゃないんだ!どっからどう見たった旨そうだし、てか不味いなんて想像つかねーよ。見た目だけでそう思えるんだから食ったら絶対に美味いに決まってんだろ!でもな、俺にはどうやら味覚をどっかに落っことしてしまったらしいんだ…申しわけないけど、素直によく分からねぇ…』
 と言いたい。言ってしまいたい。素直に謝りたい。青年の好意を嘘で否定したくない…、と俺ならきっと自責の念に押しつぶされそうになったことだろうが…


 俺にはそれがなかった。


「…美味いよ。こんな美味いもん食ったの久しぶりだ…あまりの美味さにため息がで出ちゃったみたいだ、なんか誤解させて悪いな?」
 ハハハと、笑みを交えては俺はそんな言葉を口にしていた。それは当然の如く吐き捨てと虚言であり、嘘である。


「そうか、なら良かった。あまり人に料理を提供したりしないもんでね、味については良く分からないんだ」


「いや、マジで美味かったぞ?もしかしたら俺が今まで食ってきた料理の中でもトップクラスかもしれん」


「あははは、たけしそれは言い過ぎじゃないか?」


「いやいや本当だって!俺は嘘を吐いたりしてねーからな?」


 俺は平気で嘘をつく。罪悪感は全くといってない。
 やはりと言って、俺は最早人間としての感情は死んでいたのだった。
 言うなれば、今の俺とは人間という道化を演じているだけのに過ぎない。


 道化か…ん?待てよ、確かjokerジョーカーは訳すと、て意味じゃなかったか?
 え、それじゃあまさか…

『俺はjokerジョーカー役割クラス選定を得た代わりに、その代償として味覚を失った』


 いやいや、幾ら何でもそれは…でも確かアンヘルは無駄な感情やちょっとの生前の記憶を消しただけで、何かしらの身体機能を消しただなんて言ってなかったしな…くそ、理由がつかねぇ。
 じゃあやっぱり、この味覚を失っていう現象はjokerジョーカーとなる為に俺が支払った代価ということになるのか?
 分からない。分からないけど、本格的にそうだとしか思えなくなってきたぞおい。
 この分でいったら、もしかしたらその他の身体機能も損失しているとか…視覚、聴覚、嗅覚、触覚は…無事だよな、多分。
 まぁそれだったら人間の有する五感の内4つはあるわけだから、生きる上で支障はないはず。ただその他にも何かしらの身体機能が欠如しているのだとしたら…いかん、悪い予感が過ぎって仕方ねぇ。
 今のところ失った身体機能が味覚、それに伴う形で空腹感と食欲もなくなった。それだけだと済んだと喜ぶべきなのだろうか…





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