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第1章 『俺この異世界ベルハイムで、第二の人生を送る!』-始まりの異世界とジョーカー
5話 異世界の暮らしぶり
しおりを挟むあれから2日が過ぎた。
あれからとは、つまり俺が初めて主屋で目覚めた時を指す。
俺はこの2日の殆どを情報収集へと当てていた。
街の人間達の会話を盗み聞きしたり、ゴミ箱に捨ててあった生前の世界で言うところの新聞?のようなこの世界の情報紙を拾って読んだりと(内容はちんぷんかんぷんだったけど)方法は幾か存在していた。
そうした折、改めてこの世界の言語を理解できて良かったと思った。
その反面、もしも言語が分からなかったと思うと肝が冷える。
改めて礼を言うよ、ありがとうアンヘル。これで俺は何とか世間知らずの無能野郎にだけはならずにすみそうだ。
『ま、さすがにまだ自分から誰かに声を掛けたりはできなかったがな…』
俺は主屋で1人、この二日間で集めた情報を軽く整理してみることにした。
まずだ、俺の住んでいる街は『ルコンド』というそこそこデカイ城下町らしい。そしてこの城下町に住んでいる人種は多種多様で、それこそ獣人と呼ばれる毛むくじゃらの人間とか牙とか角の生えた人間とか、後は爬虫類や両生類に酷似したトカゲ人間やカエル人間とか…
その他にもまだまだ人種は数多く存在するらしいが、とりあえず俺が見て聞いた限りじゃこのぐらいの人種を把握するのが精一杯だった。
それがまず一つ、人種についての情報だ。
次に着目したのは異世界住民達の暮らしぶりについて。
これについては別段驚くような情報はない。
というのも、異世界の営みとは生前の世界で見た人間達の暮らしぶりとそう対して変わらないようだからである。
食料品や雑貨、武器や衣類などなどを売り物に商売をする者が大半で、後は物珍しい骨董品みたいもんとか並べてる出店とか色々。
そういえば飲食店もちらほらあったな。飲み屋とかカフェとか…これも在り来たりな感じで目を引くようなものでもなかった。
要するに出店とか飲食店にしろ、働いて暮らしの生計を立てているというのは生前と何ら変わらない。
うん、その辺は案外普通で良かった。
金が出来たらその内利用してみるのも悪くはないかもな?まぁ全部異世界発祥の食物やらアイテムしかなかったようだし、その点について案外興味深々だったり?
後は…そうだな…特にねーか?
とりあえずそれぐらいが今のところ知り得る異世界についての暮らしぶりというやつだ。
言葉にしてみるとそう大した内容でもないように思える。ただ正直言うとたったこれだけを調べるのにもかなり苦労した。
苦労の元はやはりといって周囲の視線。
周りからどんな反応を受けているかも定かじゃない今の立場上、下手な行動は打てない。俺は必然的にコソコソ活動するしかないわけだ。
だから俺が街を練り歩く様は端からすればさぞや怪しい姿に違いなかったことだろう。
別に怪しまれるぐらいだったらどうだっていい。問題はそこじゃない。
「問題はデスゲームだ」
説明書に書かれていたデスゲームについて内容が正しければ、デスゲームは既にこの異世界を舞台に開催されているらしい。いつ何時から、と明確な記載はなかったにしろ、俺がこの異世界に来たのが丁度2日前だから、普通に考えればその辺りがデスゲームの始まりと見るが妥当であろう。そう、もしかしたら二日間も経っているかもしれないのだ。
説明書にもこう書かれていた。
『デスゲームが始まっている以上いつ何時何者かに命を狙われていてもおかしくはありません。故に一瞬の隙が命取りとなるわけですので、安直な思考は捨て去りましょう』
デスゲームの開催範囲は限定されていない。舞台はこの異世界ベルハイムというだけで、それこそこのベルハイムの世界中が戦場の舞台になると説明書に書いてあった(この世界の広さが如何程度あるかは知らんが)。だから今俺のいる街『ルコンド』だって例外漏れではないはず。ここだって十分デスゲームの死地なり得るわけだ。
もしかしたら既に俺の命を付け狙うデスゲーム参加者がこの街にいて、俺の知らないとこで着々と俺の命を奪う算段が進んでいる…何て話も全然あり得なくもない。
確かにまだデスゲームは始まったばかりだ。俺の考え過ぎと言われればそれまで。
でもだからと言って皆んなが皆んなそう思っているわけじゃあないと俺は考える。
このデスゲームのルールを逸早く理解し、異世界での生活に順応、俺みたいに悠長な行動を送っている他の参加者がいるかもしれない。
かもしれないってだけで、現段階では何もわからないが…
ただ何も分からないからと言って何の策を転じないのは愚者の選択に等しい。今だからこそやっておかなければならないことが山程あるはずだ。少なくとも俺はそう考えているのだから、あながち間違ってもいないかもしれないな…
「明日にでも本格的に動くか…」
まだまだ情報が足りないが、最悪の事態は待ってくれないだろう。
その時になって考えても全てが遅いのだ。
だからこそ、他者より一歩先を行くならば今しかねぇ。
何事も始まりが肝心…と、これも昔何処かで聞いたんだがなぁ…駄目だ、これも全然思い出せねぇ。覚えていたはずの記憶を思い出せない感覚は嫌になる程気持ち悪い。
「いつか思い出せたらいいな…」
その願いが叶うのは何時になるやら、むしろ叶うのか?
それを理解するのは、もっと先の事になるだろう。
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