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第1章 『俺この異世界ベルハイムで、第二の人生を送る!』-始まりの異世界とジョーカー

2話 デスゲームについて

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「ではまずですね、この世界についてを説明します」


「おう、頼む」   


「説明と言いましても特に言うことはないんですが、今貴方が見てる光景そのものがこの世界を物語っていますしね、はい」


 えらいざっくりしてんなぁーおい。
 まぁ、その辺りはアンヘルの言う通りないんだろうが。
 獣人間とか騎士とかドラゴンとか、俺が生前に知っている二次元の世界に近い、つまりはそういうことだろう。
 

「了解。何となく理解できるよ」


「あ、大丈夫ですか?いやぁほんと理解が早くて助かります!じゃあもっと簡潔に、ちゃちゃっと伝えますね?要はですね、剣とか魔法とか上手く駆使して、この異世界ベルハイムで行なわれているデスゲームに是非参加してほしいのです!いや、実はもう参加してたりして、あはははは」


 はいはいはい、了解。
 それも二次元ではお決まりのーーーって…え?
 今こいつ何て言った?


「ちょっと待てよアンヘルさんとやら、俺の聞き間違いかもしれないから聞き返すが…今、って言ったのか?」


「はい、そうですけど?」


 …デスゲーム、全くと言って穏やかな響きじゃねーな…
 

「…ちなみに聞くけど、そのってのは何をするわけ?」


 聞くだけ無駄かもしれねーが、一応な?


「デスゲームですので、殺しあいですね。後は騙し合いに欺き合いとか、巧みに立ち回って頂いていただきます」


 ほら、無駄だった。
 悪い予感が的中する。


「…何でまた俺なんだ?」


「いやもちろん貴方だけではございませんよ?異世界転生者はデスゲームに参加しなければならない、そういう決まりなんです」


 いやそういう決まりって、酷すぎるだろ…


「えっと…すみません、疑うつもりは毛頭ないないのですが、もしや異世界召喚されたなどという甘い考えを持っているほどの馬鹿ではありませんよね?」


 はい、その馬鹿なんですが…


「すまん、百歩譲って異世界転生は認めてやる。だがそのデスゲーム?ってのは了承しかねる。第一さ、俺剣とか魔法とか使えねーし」


「あ、その辺は安心して下さい!剣とか魔法につきましては今後の状況次第で使えるよう貴方の体に予め設定しておいたので!異世界用の特別仕様ですよ!すごくないですか?」


 異世界用の…特別仕様だと?


「お、お前…俺の体に何をしやがった?」


「いや、別に体を変に弄ったりはしてませんよ?それじゃあ改造人間ですし、SFですし、全然ファンタジーっぽくないですし…まぁそれもいいかもしれませんが。私が貴方に施したのはね、ただイメージをね、与えたわけですよ、はい」


 イメージ?


「つまりですね、剣を振るう感覚や魔法を発動する感覚を何となくでですが貴方に植え付けたわけです。もちろん何となーくですので、どのタイミングでそれらの感覚を掴めるかははっきり言って私にも分かりません。それこそ時と場合、もしかしたら命の危機に直面した場面で唐突にスペシャルな魔法を発動できるかもしれませんし、特に何もない時に不意に剣技の極意を習得できるやもしれませんし、ただ一つ言えることとして貴方の今後の頑張り次第では幾らでも伸び代がある、というやつですかね、はい」


「ふ、ふざけてやがる…」


「あとちなみにですね、異世界仕様のイメージを植え付けるにあたって貴方という人間のキャパシティを大幅に超えてしまいまして…いや、人間の蓄積できる情報量には致命的なまでの限界値がございまして、だからちょっと勝手ではございますが、生前の無駄だと思われる記憶なり感情なりを少しだけ消去させて頂きました、はい。その点に着きましてはご了承下さい」


 …ん?


「すまん、もっと具体的に言ってくれないと理解できん」


「はい、じゃあ例えばですけど…これからデスゲームをするってのに変に躊躇いとかあったらいざという時に人を殺せないじゃないですか?だったらそれって…無駄な感情、ということじゃないですか?」


「何故そう解釈してしまうのか俺には理解できねーよ…」


「はい、私は無駄な感情だと判断致しました!」


 いやすんなし!


「というのもですね、私は長らく人間という人間を見てきたのですが感情を捨てきれず死ななくていい場面で死ぬ可哀想な人間達を散々見てきたんです。それではいけない、折角転生して新しい人生を得たというのにそれじゃあ浮かばれないでしょう。ですので、誠に勝手ではございますがそういう人並みの要らない感情らを排除したのです!だから貴方もこれで負い目なく人を殺せることができる、そういうことになりました!」


 そう言ってエヘヘと笑うアンヘル。
 この野郎、無邪気そうに笑ってやがるがやってることは悪魔的過ぎる。


「後は貴方の生前の名前とか過ごしてきたどうでもいい記憶をちょっとばかしと…あ、さすがに生前に知り得た知識とかは消したりしてないのでご安心を。私もそこまで鬼畜ではございません」


 
 十分に鬼畜な件について…
 …はあー、けどそうかい。どうりでやたらと気持ちが軽いわけだ。
 異世界に来たってのに案外すんなりとは認めちゃってる自分はその為かよ…
 しかもだ、デスゲームに関してもアンヘルの言うように異世界転生の代償だと思えば変に納得しちゃってる自分が恐ろしいよ…


「なんてこったよ…。泣きそうだよ俺」


「あれ、おかしいですね。泣く、という行為は感情のブレがあってこそなので、今の貴方にはそういった無駄要素はないと思われますが?すみません、私にはどこからどこまでが無駄な感情がよく分からないものでして…なんか適当消しちゃいました、はい」


 「でも泣くとは些か情けない…」とは余計な台詞を付け加えたアンヘル。まじむかつくなお前…



「例えだよ例え!泣きそうな気持ちは確かにないけどさぁ、そうでも言っておかねーと俺マジで人間じゃないみたいじゃんか…てか最早人ですらねーのか?」


「そうですね、人の身は遥かに逸脱しているでしょうね!」


 異世界転生にチート…まではいかないが近いポテンシャルを兼ね備えているわけね…不安しかないわ。
 でもやっぱり何だかんだでこんな悪魔的状況でさえ順応しようとしている俺がいる。これはアンヘルが言う無駄な感情が俺の中から消え失せたからだろうか?
 そもそもだ、俺って生前どんな人間だったっけ?




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