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第4章
第5話 その冒険者、占い師となる… side ルクス
しおりを挟む「どうぞ、次の方」
「あ、どうも…よろしくお願いします占い師の先生…」
「うん、まぁ腰かけて」
「はい…」
「で、私に何を占ってほしいと?」
「いやですね…実は俺…」
「ああ、成る程ね。貴方このままだと死にますよ」
「えっ!?俺まだ何も言って、」
「私は占い師。言わずとも分かります。とにかく貴方そのままだと死にます」
「え、そんなぁ…」
「でも安心して下さい。今なら私の有難~い力を込めたこのパワーストーンを買えば死なずに済みますよ」
「そ、その道端で拾ってきたような石コロみたいなやつを、ですか?」
「何を言いますか?これは確かに道端で拾った石コロに過ぎませんが、私の有難~い力によってその価値は何倍も跳ね上がった、それはそれは希少な石コロなんですよ?いや、いらないなら別にいいんです。貴方が死ぬだけですし。死にますし、絶対死にます。嘘じゃありません。間違いなく死にます」
「ひ、ひぃぃ!?か、買います!ルクス様!そのパワーストーンを俺に売って下さい!」
「毎度あり~」
こうして、また一人迷える人間を救った私は、占い師です。占い稼業を始めたのはつい1ヶ月前の事、それは私が冒険者を辞めてすぐの事でした。
当初はどうなるもんやら不満で不満で一杯だったのですが、今ではこの通り、迷える子羊達が列を作って並ぶほどの有名な占い師となりました。
「次の方~、あぁ、成る程、貴方も死にますね」
「えぇ!?」
「おや?次の方も死にます」
「え、ええ!?」
「でも大丈夫。このパワーストーンがあなた方の未来を約束してくれます」
「「か、買います!!」」
「毎度あり~」
とにかく私の占いはよく当たると有名で、私が死の宣告を下した者は大抵が死にません。それは私が祈りを捧げた石コロ…じゃなくてパワーストーンによる効果がデカイと思われます。詳しいことは分かりませんが、皆が死なずに明るい明日を迎える事が出来るのはその為でしょう。
「次の方~」
ただ正直言って、今の自分の生き方が果たして正解なのかは自分でもよく分かりません。占い師としては大成を成したし、もしかしたら占い師とは私にとっての天職なのかも分かりませんが、今でも、1ヶ月前のあの日の出来事を思い出してしまうのです。
それはバンキス様の死んだ、あの日の出来事を。
バンキス様の死は、私に生きる大切さを教えてくれました。だから死と隣り合わせである冒険者は辞めて、こうして占い稼業に勤しんでるわけですし、ある意味正解っちゃ正解なのかもしれませんが…私、死にたくありませんですし。ただ…
時折、あの色濃い冒険者としての日々を思い出してしまうのです。
「次の方~」
それでも私は、
「死にます」
と、今日も死の宣告を下し続けます。明日も、明後日も、明々後日も、ずっと…私は、占い師です。
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