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第1章 舞い降りた復讐人
第6話 剣士ガガルルの勇姿は幻と消えて
しおりを挟む ありったけの鉱物、砂鉄、その他の素材が集まった。
グレン様や騎士たちの協力のおかげだ。
私一人じゃこれだけの量を集めることは不可能だっただろう。
心から感謝している。
「本当にありがとうございました!」
「気にするな。これも、俺とこの国の未来のためだ」
「我々も剣を打っていただいたお礼ができて何よりです」
国の未来なんて大げさな。
お礼と言ってくれるけど、元々その剣だって掃除を手伝ってくれたお礼に私が打ち直したものだ。
彼らにそこまでしてもらう理由はない。
命令されているとはいえ、嫌味一つ言わず、積極的に協力してくれる姿勢は本当にありがたかった。
グレン様が私に尋ねる。
「他に必要なものはないか?」
「今のところは大丈夫だと思います。あとは――」
私は視線を工事中の鍛冶場に向ける。
現在進行形で私の新しい仕事場が作られていた。
作業開始から数日、徐々に形が見え始めているのがわかる。
期待で胸が膨らむ。
いよいよ、開店の日の景色が想像できるところまできた。
「鍛冶場が完成するのは早くても一週間後だ。それまで他に何がいるのか。必要なものがあれば遠慮なく俺に言え」
「我々も必要であればお手伝いします!」
「ありがとうございます」
物資は揃った。
鍛冶場が完成するまで、売り物の剣や防具を作ることはできない。
それまでにやっておくべきことも、大方終わっている。
一週間もあるなら、もう少し素材を集める?
さすがに、グレン様や騎士の方々を何日も拘束するのは申し訳ない。
それは別で、今度こそ一人で行こう。
あ、そうだ!
大事なことを忘れていた。
「グレン様、この国で有名な鍛冶屋さんか、武器屋さんがどこかわかりますか?」
「街には何件かあるはずだが、普段利用しないしそこまで詳しくはないな。何か買うのか?」
「いえ、見ておきたいんです」
「それは必要か? 鍛冶のレベルのお前のほうが確実に上だぞ?」
「わ、私なんてまだまだ未熟ですから」
ことあるごとに褒めてくれるのは嬉しいけど、やっぱり恥ずかしいな。
いつか慣れる日がくるのかな?
それも何だか少し寂しいけど。
私は軽く首を振って続ける。
「見たいのは品ぞろえです。どんな商品が置かれているのか。お客さんからの注文の種類も、可能なら聞きたいですし、お客さんの層も知っておきたいです」
品揃え、価格、お客さんからの要望。
これからお店を出すにあたって、どれも必要不可欠な情報だ。
店を出すなら当然、利益を出さなければやっていけない。
グレン様から騎士団用の武器防具を作る話はすでに頂いているけど、そればかりに頼っているのは申し訳ないと思った。
どうせやるなら、グレン様に頼らず店を続けられるようになりたい。
そのためには、お客さんを獲得する必要があった。
「私はこの国に来たばかりなので、ここで暮らす人々の生活もわかっていません。だから少しでも知っておきたいんです」
「なるほどな。確かに必要なことだ。それで、いつ行く?」
「え? そうですね。時間もまだあるので今から……」
話しながら察する。
この人、まさかついてくるつもりじゃないよね?
仮にも国王陛下が、私と一緒に街の武器屋さん巡りをするつもり?
「あの、グレン様……場所さえ教えていただければ私一人で――」
「もちろん俺も同行するぞ」
「……だ、大丈夫なんですか? お仕事もあると思うのですが……」
「心配無用だ。今日は一日、お前のために使うと決めて出てきたからな。城にはレーゲンもいる」
「……」
本当に、今度会った時は謝っておこう。
レーゲンさん、ごめんなさい。
私は心の中で謝罪した。
文字通り、心から。
グレン様や騎士たちの協力のおかげだ。
私一人じゃこれだけの量を集めることは不可能だっただろう。
心から感謝している。
「本当にありがとうございました!」
「気にするな。これも、俺とこの国の未来のためだ」
「我々も剣を打っていただいたお礼ができて何よりです」
国の未来なんて大げさな。
お礼と言ってくれるけど、元々その剣だって掃除を手伝ってくれたお礼に私が打ち直したものだ。
彼らにそこまでしてもらう理由はない。
命令されているとはいえ、嫌味一つ言わず、積極的に協力してくれる姿勢は本当にありがたかった。
グレン様が私に尋ねる。
「他に必要なものはないか?」
「今のところは大丈夫だと思います。あとは――」
私は視線を工事中の鍛冶場に向ける。
現在進行形で私の新しい仕事場が作られていた。
作業開始から数日、徐々に形が見え始めているのがわかる。
期待で胸が膨らむ。
いよいよ、開店の日の景色が想像できるところまできた。
「鍛冶場が完成するのは早くても一週間後だ。それまで他に何がいるのか。必要なものがあれば遠慮なく俺に言え」
「我々も必要であればお手伝いします!」
「ありがとうございます」
物資は揃った。
鍛冶場が完成するまで、売り物の剣や防具を作ることはできない。
それまでにやっておくべきことも、大方終わっている。
一週間もあるなら、もう少し素材を集める?
さすがに、グレン様や騎士の方々を何日も拘束するのは申し訳ない。
それは別で、今度こそ一人で行こう。
あ、そうだ!
大事なことを忘れていた。
「グレン様、この国で有名な鍛冶屋さんか、武器屋さんがどこかわかりますか?」
「街には何件かあるはずだが、普段利用しないしそこまで詳しくはないな。何か買うのか?」
「いえ、見ておきたいんです」
「それは必要か? 鍛冶のレベルのお前のほうが確実に上だぞ?」
「わ、私なんてまだまだ未熟ですから」
ことあるごとに褒めてくれるのは嬉しいけど、やっぱり恥ずかしいな。
いつか慣れる日がくるのかな?
それも何だか少し寂しいけど。
私は軽く首を振って続ける。
「見たいのは品ぞろえです。どんな商品が置かれているのか。お客さんからの注文の種類も、可能なら聞きたいですし、お客さんの層も知っておきたいです」
品揃え、価格、お客さんからの要望。
これからお店を出すにあたって、どれも必要不可欠な情報だ。
店を出すなら当然、利益を出さなければやっていけない。
グレン様から騎士団用の武器防具を作る話はすでに頂いているけど、そればかりに頼っているのは申し訳ないと思った。
どうせやるなら、グレン様に頼らず店を続けられるようになりたい。
そのためには、お客さんを獲得する必要があった。
「私はこの国に来たばかりなので、ここで暮らす人々の生活もわかっていません。だから少しでも知っておきたいんです」
「なるほどな。確かに必要なことだ。それで、いつ行く?」
「え? そうですね。時間もまだあるので今から……」
話しながら察する。
この人、まさかついてくるつもりじゃないよね?
仮にも国王陛下が、私と一緒に街の武器屋さん巡りをするつもり?
「あの、グレン様……場所さえ教えていただければ私一人で――」
「もちろん俺も同行するぞ」
「……だ、大丈夫なんですか? お仕事もあると思うのですが……」
「心配無用だ。今日は一日、お前のために使うと決めて出てきたからな。城にはレーゲンもいる」
「……」
本当に、今度会った時は謝っておこう。
レーゲンさん、ごめんなさい。
私は心の中で謝罪した。
文字通り、心から。
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