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第10章 波乱の幕開け!?

第42話 新たなる脅威

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 次に見た光景は木造りの天井だった。
 俺はどうやら眠っていたらしい。
 薄らぼんやりとしたランプが吊るされていて、室内を暖色の明かりで照らしている。

(あれ……ここは……)

 俺は目をこすり、ベッドから体を起こした。
 小さなコテージのような場所だった。
 窓を見ると、まん丸の月が燦然と輝いている。
 だったら夜だ。

(でも分からない。俺はどうやってこの場所に……)
 
 と、ベッドから出ようとしたーー次の瞬間。

【ああー! シノミヤさん! やっとお目覚めになりましたか!?】

 突然、奥の扉が開いたかと思うと、ザラが走って俺の胸に飛び込んできた。

「お、おい! いきなりなんだよ!?」

【だってシノミヤさん、ずっと眠っていたんですよ!? そんなシノミヤさんが目覚めたというのに、黙っていられませんよ!? ああ、シノミヤさん……】

 ザラはそう言って、俺の胸に顔を埋めてきた。あまりの強引さに「まあ、いっか」と楽観的に思っていたものの、どさくさに紛れて体を弄り始めたのでブン殴ってやった。

 相変わらず、ザラトリッチは俺に対するスキンシップは尋常じゃない。
 それはなんでも、俺が~~かつて魔物の軍勢を従い世界を滅ぼしかけた大罪人『叛逆の竜皇女 ビルマ・マルクレイド』の生まれ変わりだかららしく、その証拠に紅竜紋章という罪人の証なるものを持っているからで、実際これまでの道中もビルマ・マルクレイドの『魔物を従える力』なるものを遺憾なく発揮しまくり~~

 でだ、このザラトリッチはかつてビルマ・マルクレイドが従えていた『四魔星』の一人『魔族剣帝ザラトリアス』のその娘であるらしくてだなあ……

【シノミヤさん。それで、体の方に不具合はありませんか?】

 鼻血を垂らしながら、ザラがそんなことを聞いてきた。

 俺は頷く。

「ああ、特に、変なことはないが……どうして?」

【いやいや、シノミヤさんはガルマとの戦闘後直ぐに気を失ってしまいましたので、はい】

 そうらしい。
 全く覚えていない。
 ガルマを渾身の一撃でブン殴ったところまでは覚えているのだが……その後は、まあさっぱりだった。

【体を触った感じは大丈夫でしたので、シノミヤさんが平気なのであれば、それで構いません】

「あ、それでやけに触ってきたのか……なんか、悪いな。逆に殴ったりして」

 ザラはにっこりと笑った。

【別にいいんですよぅ。スケベ心も半分ぐらいはありましたので、それでチャラってやつです】

 そうかい。
 とりあえず、もう一発ぐらいブン殴っておいてもいいだろうか?

「それでザラ、俺はどれくらい眠っていたんだ?」

【3日です】

「えっ、そんなに!?」

 驚く俺に対し、ザラはえらくあっさりとした態度で「はい」と頷いた。

【あれ程の力を発動したのです。むしろ、反動が少なくて良かった思いましょう。魔物召喚は、身体的負荷が強いのです。シノミヤさんはまだ完全に力を制御出来ていないみたいですから、尚更にですね】

 成る程な。
 あの時は無意識だったから、自分がビルマ・マルクレイドの力を引き出している自覚はなかった。
 でも確かにゴブリンたちやグレイウルフたちはあの場にいたしなあ……

 俺は腕組みし、窓向こうの星空を見上げた。

「全く、俺は一体今後どうなっていくのやら」

【再び魔物たちを従え、人間たちに戦争を吹っかけましょう!】

「おい!」

【あはははは! 冗談ですよう! 本気にしないで下さい☆】

 ほんとかよ。

 と、俺が呆れ顔を作っていると、ザラは途端に難しい顔で俺を見てきた。

【でもですよシノミヤさん。もしかしたら、シノミヤさんの中に眠るビルマ・マルクレイドの力を利用とする輩がいるかもしれません】

 俺は首を傾げた。

「なんだよ、それ」

【先日の一件で、気づいたことがあるのです】

 と、ザラは深刻そうな口振りで語り始めた。

【あのガルマという男は、死体蘇生術を操るネクロマンサーでした。ですから、ここ最近この町を騒がしていた事件はガルマの仕業で間違いないと思います……】

(ああ、そうだったのか)

【ですが、それ自体がおかしな話なのです!】

 ザラを声を荒げた。

【死体蘇生術は、そもそも人間が会得できるような術ではありません。いくらそれが、異世界転生者という特異な人間であってもです!】

【以上の理由から、私はこう判断しました。ガルマをネクロマンサーに仕立てた、何者かの存在がいると!】

 ザラは声を低く落とし、言った。

【私が知ってる限りは、あの術を扱えるのは……この世でたった一人、奴しか考えられません】

 俺は息を飲む。

【かつて、母であるザラトリアスと共にビルマ・マルクレイドを支えた四魔星の一人……霊界の帝王タイラント・ゴーストと言われ恐れられていた『ダスト・スモッグス』……奴だけです】

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