41 / 48
第10章 波乱の幕開け!?
第42話 新たなる脅威
しおりを挟む次に見た光景は木造りの天井だった。
俺はどうやら眠っていたらしい。
薄らぼんやりとしたランプが吊るされていて、室内を暖色の明かりで照らしている。
(あれ……ここは……)
俺は目をこすり、ベッドから体を起こした。
小さなコテージのような場所だった。
窓を見ると、まん丸の月が燦然と輝いている。
だったら夜だ。
(でも分からない。俺はどうやってこの場所に……)
と、ベッドから出ようとしたーー次の瞬間。
【ああー! シノミヤさん! やっとお目覚めになりましたか!?】
突然、奥の扉が開いたかと思うと、ザラが走って俺の胸に飛び込んできた。
「お、おい! いきなりなんだよ!?」
【だってシノミヤさん、ずっと眠っていたんですよ!? そんなシノミヤさんが目覚めたというのに、黙っていられませんよ!? ああ、シノミヤさん……】
ザラはそう言って、俺の胸に顔を埋めてきた。あまりの強引さに「まあ、いっか」と楽観的に思っていたものの、どさくさに紛れて体を弄り始めたのでブン殴ってやった。
相変わらず、ザラトリッチは俺に対するスキンシップは尋常じゃない。
それはなんでも、俺が~~かつて魔物の軍勢を従い世界を滅ぼしかけた大罪人『叛逆の竜皇女 ビルマ・マルクレイド』の生まれ変わりだかららしく、その証拠に紅竜紋章という罪人の証なるものを持っているからで、実際これまでの道中もビルマ・マルクレイドの『魔物を従える力』なるものを遺憾なく発揮しまくり~~
でだ、このザラトリッチはかつてビルマ・マルクレイドが従えていた『四魔星』の一人『魔族剣帝ザラトリアス』のその娘であるらしくてだなあ……
【シノミヤさん。それで、体の方に不具合はありませんか?】
鼻血を垂らしながら、ザラがそんなことを聞いてきた。
俺は頷く。
「ああ、特に、変なことはないが……どうして?」
【いやいや、シノミヤさんはガルマとの戦闘後直ぐに気を失ってしまいましたので、はい】
そうらしい。
全く覚えていない。
ガルマを渾身の一撃でブン殴ったところまでは覚えているのだが……その後は、まあさっぱりだった。
【体を触った感じは大丈夫でしたので、シノミヤさんが平気なのであれば、それで構いません】
「あ、それでやけに触ってきたのか……なんか、悪いな。逆に殴ったりして」
ザラはにっこりと笑った。
【別にいいんですよぅ。スケベ心も半分ぐらいはありましたので、それでチャラってやつです】
そうかい。
とりあえず、もう一発ぐらいブン殴っておいてもいいだろうか?
「それでザラ、俺はどれくらい眠っていたんだ?」
【3日です】
「えっ、そんなに!?」
驚く俺に対し、ザラはえらくあっさりとした態度で「はい」と頷いた。
【あれ程の力を発動したのです。むしろ、反動が少なくて良かった思いましょう。魔物召喚は、身体的負荷が強いのです。シノミヤさんはまだ完全に力を制御出来ていないみたいですから、尚更にですね】
成る程な。
あの時は無意識だったから、自分がビルマ・マルクレイドの力を引き出している自覚はなかった。
でも確かにゴブリンたちやグレイウルフたちはあの場にいたしなあ……
俺は腕組みし、窓向こうの星空を見上げた。
「全く、俺は一体今後どうなっていくのやら」
【再び魔物たちを従え、人間たちに戦争を吹っかけましょう!】
「おい!」
【あはははは! 冗談ですよう! 本気にしないで下さい☆】
ほんとかよ。
と、俺が呆れ顔を作っていると、ザラは途端に難しい顔で俺を見てきた。
【でもですよシノミヤさん。もしかしたら、シノミヤさんの中に眠るビルマ・マルクレイドの力を利用とする輩がいるかもしれません】
俺は首を傾げた。
「なんだよ、それ」
【先日の一件で、気づいたことがあるのです】
と、ザラは深刻そうな口振りで語り始めた。
【あのガルマという男は、死体蘇生術を操るネクロマンサーでした。ですから、ここ最近この町を騒がしていた事件はガルマの仕業で間違いないと思います……】
(ああ、そうだったのか)
【ですが、それ自体がおかしな話なのです!】
ザラを声を荒げた。
【死体蘇生術は、そもそも人間が会得できるような術ではありません。いくらそれが、異世界転生者という特異な人間であってもです!】
【以上の理由から、私はこう判断しました。ガルマをネクロマンサーに仕立てた、何者かの存在がいると!】
ザラは声を低く落とし、言った。
【私が知ってる限りは、あの術を扱えるのは……この世でたった一人、奴しか考えられません】
俺は息を飲む。
【かつて、母であるザラトリアスと共にビルマ・マルクレイドを支えた四魔星の一人……霊界の帝王と言われ恐れられていた『ダスト・スモッグス』……奴だけです】
0
お気に入りに追加
289
あなたにおすすめの小説
転生したら、犬だったらよかったのに……9割は人間でした。
真白 悟
ファンタジー
なんかよくわからないけど、神さまの不手際で転生する世界を間違えられてしまった僕は、好きなものに生まれ変われることになった。
そのついでに、さまざまなチート能力を提示されるが、どれもチートすぎて、人生が面白く無くなりそうだ。そもそも、人間であることには先の人生で飽きている。
だから、僕は神さまに願った。犬になりたいと。犬になって、犬達と楽しい暮らしをしたい。
チート能力を無理やり授けられ、犬(獣人)になった僕は、世界の運命に、飲み込まれていく。
犬も人間もいない世界で、僕はどうすればいいのだろう……まあ、なんとかなるか……犬がいないのは残念極まりないけど
転生令嬢の幸福論
はなッぱち
ファンタジー
冒険者から英雄へ出世した婚約者に婚約破棄された商家の令嬢アリシアは、一途な想いを胸に人知の及ばぬ力を使い、自身を婚約破棄に追い込んだ女に転生を果たす。
復讐と執念が世界を救うかもしれない物語。
駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……
猫缶@睦月
ファンタジー
大学入試試験中の僕、「黒江 一(くろえ はじめ)」は、試験最後の一問を解き、過去最高の出来になるであろう試験結果に満足して、タイムアップの時を待ち軽く目をつぶった……はずだった。
真っ黒な空間で、三年前に死んだ幼馴染『斎藤 一葉(さいとう かずは)』の姿をしたそいつは、遅刻するからと、そのまま僕を引き連れてどこかへと移動していく。
そいつは女神候補生の『アリアンロッド』と名乗り、『アイオライト』という世界に僕を連れて行く。『アイオライト』は、女神への昇級試験なのだそうだ。『アリアンロッド』が管理し、うまく発展させられれば、試験は合格らしい。
そして、僕は遅刻しそうになって近道を通ろうとした『アリアンロッド』に引っ掛けられ、地球から消滅してしまったようだが、こいつ僕のことを蟻とかと一緒だと言い切り、『試験会場への移動中のトラブルマニュアル』に従って、僕を異世界『アイオライト』に転生させやがった。こちらの要望を何一つ聞かず、あいつ自身の都合によって。
大学に合格し、ノンビリするはずの僕は、この世界でどうなるんだろう……
※ 表紙画像は『プリ画像 yami』さん掲載の画像を使用させていただいております。
* エロはありません。グロもほとんど無いはず……
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル
14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった
とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり
奥さんも少女もいなくなっていた
若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました
いや~自炊をしていてよかったです
転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺はクギミヤ タツミ。
今年で33歳の社畜でございます
俺はとても運がない人間だったがこの日をもって異世界に転生しました
しかし、そこは牢屋で見事にくそまみれになってしまう
汚れた囚人服に嫌気がさして、母さんの服を思い出していたのだが、現実を受け止めて抗ってみた。
すると、ステータスウィンドウが開けることに気づく。
そして、チートに気付いて無事にこの世界を気ままに旅することとなる。楽しい旅にしなくちゃな
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる