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しおりを挟む道なりの途中です。私達は、そのモンスターと出会ってしまいました。
「グ、グリーズ……」
ピコの表情が、一気に暗く沈みました。
それもそのはず、私達の視線の先でニジマスをムシャムシャと咀嚼するそのモンスターとは、『山の暴君』との異名で恐れられるグリーズであるからです。
グリーズは異名通りの獰猛なモンスターです。目にするグリーズの全長は大体3メートルでありますが、成体にもなれば5メートルはくだらないされます。つまりですよ、あれは成熟期と予測されます。因みに、成体のグリーズは呼称が変わり『ジャイアントグリーズ』と呼ばれます。
柴犬のような可愛らしい顔をしていますが、言って、あれは列記とした化け物です。
腕の一振りは人間の顔面を一瞬で吹っ飛ばしてしまう程で、且つ好戦的で、尚且つ狙った獲物に対して異常な執着心を見せます。
「ハイエンド、迂回しよう……ありゃあ、やばい」
「ですね。触らぬ神に祟りなし、というやつでしょう」
幸い、グリーズは私達の存在に気付いてはいません。
食らうニジマスに夢中のようです。
「ニジマスを食らっているという事は、上流も近いということですのに……」
まさかこんな形で足止めをくらうとは、残念で仕方がありません。
「ん?でも待って下さいピコ。もしかしたら、ニジマスを絶滅の危機に陥れている犯人とは、あのグリーズだったりするのではありませんか?」
「仮にそうだとしても、俺はあんなモンスターと関わるなんてゴメンだぜ?」
至極当然だと言いたげなピコは早速迂回を始めてました。
「命が幾つあっても足りないからな~」
「……ピコ、貴方それでもハンターですか?」
「ああ、もちろん。ハンターとはな、お前のようにただモンスターを狩るだけのものではないのだよ?俺ぐらい優秀なハンターにもなれば、退き際もちゃんと考えてーー」
と、ピコは言いけて。
盛大にコケました。
いや見事なコケっぷりでした。点数をつけるとしたら、100点満点中120点ぐらいのコケ上手です。
コケ上手なピコとは、ズサァと大きな物音を立てて、また「痛ってぇなぁ!」とはコケ慣れた口振りを発するのです。
さすがの私も苦笑いです。
「ピコ、悲報です」
「ちょ、待て……凄く痛いの。見て見て、膝を擦りむいたの。手当てプリーズ」
「いやいや、そんな悠長な事言ってる場合ですか?」
「ん?何で?」
「いや、完全にグリーズの存在を忘れてはいませんかね?」
と、私は指差してあげます。
指差した先で、ドッサドッサと駆け寄ってくるグリーズの目は酷く血走っています。
どうやら、私達を殺す気マンマンと言った様子ですね。
「せ、先生~」
ピコが私の膝に縋り付きます。泣いています。カッコ悪いです。
「はぁ、やれやれですよ?」
かくも、戦闘の火蓋は切って落とされたのです。
私は剣を抜きました。
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