平兵士は過去を夢見る

丘野 優

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6巻

6-3

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 どうしようかと思っていると、エレオノーラが言った。

「そのカサルシィ、というのはやめてください。貴方あなたはカレンのお友達なのですから、同じようにエレ、とお呼びくださいな。敬語もいりません。時と場所を選ぶことはできますでしょう?」

 突然、そんなことを言われて少し戸惑ったが、彼女の性格はなんとなく理解できた。俺の親友にも一人、似たようなのがいるからだ。
 彼女の言う通りにしても、問題ないだろう。

「……分かった。これでいいか、エレ」
「ええ。たいへんよろしいですわ。ところでジョン、先ほどの件ですが、わたくしが直接行かずとも、貴方あなたがわたくしにそう言われたとでも伝えれば問題ないのではありませんか? そんなものがあるかどうかは分かりませんけれど、要はわたくしの権威をお使いになれば、という話なのですが……」
「……いいのか?」

 確かにそれで解決する可能性は高いが、おかしな指示をすれば、エレオノーラの責任になってしまう。相手によほどの信頼がなければ、普通は言えない台詞せりふだ。
 しかしエレオノーラは、くすりと笑って答える。

「ええ。構いません。それに、貴方あなたもそれでいいのかしら? そうすると、おそらく手柄はわたくしのものになってしまいますわよ?」

 彼女の言う通りだ。
 崩れかけた戦況を、戦場を走り回って指揮し、持ち直させた。
 そのことは、後々かなり高く評価されることだろう。
 学院での成績だけでなく、卒業後の進路選択にも影響するはずだ。
 ただ、それはあくまですべて成功したときの話である。今のところ、捕らぬたぬきの皮算用でしかない。
 当然、あまりよくない結果になった場合には、彼女が責任を取ることになる。
 しかし、それも分かった上で言ったのだろう。
 エレオノーラの横顔を見ると、額には汗がにじんでいる。
 喋っている合間にもずっと魔法を放ち続けているので、疲労がたまってきているに違いない。
 彼女だけでなく、他の魔法学院生たちもそろそろ限界に近づいているはずだ。
 あまり時間はない。
 採れる選択肢は少なく、また彼女の提案はこの戦いを勝利に近づけるために、非常に合理的なものだった。

「別に、俺はどうでもいいんだ。エレ、あんたに大きな手柄を取らせてやることにする」

 そう言うと、エレオノーラは笑って返す。

「期待してますわ、ジョン。ではみんな、参りますわよ!」

 そして彼女は魔法の弾幕を増やし、魔物たちを押し始めた。
 俺は彼女の心意気を無駄にするまいと、急いでその場を後にする。

「頑張ってね! ジョン!」

 カレンの声が後ろから聞こえ、俺は振り返らないまま右腕を上げて応えた。



 第4話 撤退の可能性


「お前たちの班はもっと前に行ってくれ! 左方の班から離れすぎてる! このままじゃ、あいつらが孤立するぞ!」
「あぁ!? なんでお前が指示をしてる?」
「……エレオノーラ様のご指示だ! 聞け!」
「な、何っ!? わ、分かった……おい! 前、突っ込むぞ! 今周囲にいる魔物は魔法で吹き飛ばすから、神兵は前方の魔物をできるだけ押してくれ!」

 公爵家令嬢の名前の効果は絶大であった。
 先ほどまで一切俺の言葉など聞こうともしなかった貴族たちが、素直に従っている。
 全体的に見て陣形は崩れがちだったが、別にそれは魔法学院生の実力が低いからではない。
 貴族たちも含め、俺たちの戦力はそれなりのもので、魔法による火力も高いのだ。
 陣形を細かく立て直しつつ、セオリー通りに攻めていけば、今襲ってきている程度の魔物の数ならどうにか対処できる。
 懸念であった統制不足も、エレオノーラの名前のおかげで解決した。
 このままいけば何とかなる……かもしれない。
 かもしれない、というのは戦いの勝敗に「絶対」はないからだ。それに、この戦いでは最前線……というか、敵軍のど真ん中で暴れ回っている学院教授陣の活躍にかかっている部分が大きい。
 俺たち魔法学院生は神兵たちと協力して何とか戦線を維持できているが、それもこれもすべて、敵の主力を学院教授陣が抑えてくれているからにほかならない。
 敵の主力――つまりは、魔物たちを率いている魔人たちを、である。
 魔人たちが魔法学院教授陣との戦いにその全力を注いでいるため、魔物たちは統制が全くとれておらず、ばらばらに向かってきているような有様なのだ。
 さらに、魔物たちも寄せ集めなのか、さほど強力なものはいない。そのおかげで俺たちでもどうにか戦えている、という状態なのである。
 だからこそ、学院教師陣には頑張ってもらわなければならなかった。
 ただ、いくら学院教師たちが皆、歴戦の古豪ばかりだといっても、過信はできない。
 どんな勝負にも「絶対」はあり得ない以上、万が一彼らがやられてしまった場合のことも考えておく必要がある。
 大体の班に指示を出し終わった時点で、俺は後方に戻り、神都の正門を守っている神官たちに近づいていった。
 すると、彼らのほうから話しかけてきた。

「戦況はいかがですか? 重傷者がおりましたら、すぐに連れてきてください。治癒術師がここにも控えておりますゆえ」

 前線の神兵たちの中にも治癒術師はいるのだが、戦えないほどの怪我を負ったときはここに連れてくるようにと言われていた。
 まだ、ここに運ばれてきている魔法学院生はいないようだが、神兵たちは何人か倒れてうなっている。

「分かりました。戦況は……今のところは悪くないですが、最悪の事態も考えなければならないと思っています」
「と、申しますと?」

 不思議そうに首を傾げる神官に、俺は言った。

「撤退です」
「それは……しかしそうなると、ろうじょうしかなくなりますが」

 困ったような顔をして神官は言う。
 彼の立場からしてみれば、当然かもしれない。
 神都にろうじょうするとなると、かなり厳しい戦いを強いられることが目に見えているからだ。
 一般的に、ろうじょう戦と言えばろうじょうする側が有利とされている。
 それは攻める側がろうじょう側よりはるかに多くの戦力を必要とし、敵地においてその戦力を維持し続けることが難しいからだ。
 しかし魔人たちは、一度に統制できる魔物の数に限りがあるものの、基本的に際限なく魔物を呼ぶことができると言われている。
 それが事実であれば、こちらがろうじょうした場合、魔人は延々と神都が落ちるまで魔物を呼び続けるだろう。
 そんなことになったら、最終的に神都を捨てるほかない。
 つまり、この場から撤退して神都にろうじょうするということは、神都からいずれ脱出することも意味するのである。
 神官からしてみれば、そんなことを許容できるわけがない。何としてでも今、目の前に見える魔物の軍勢を魔人諸共滅ぼし尽くさなければならないと考えているはずだ。
 けれど、仮に神都を捨てることになるとしても、最悪の事態に陥る可能性は考えておかなければならない。

「そうです。ですが、ここで全滅するわけにはいきません。ここにいるのは……将来的に重要な戦力になる人々です。特に、魔法学院教授陣を失うわけにはいきません。生徒たちも、今はさしたる力を持ちませんが、いずれ魔術師として成長すれば強力な戦力になる。ですから……」
「神都を見捨てろと、そう仰るのですか」

 この質問には、重みがあった。
 神都は、彼ら神官にとって何よりの拠りどころなのだ。
 見捨てる、という選択肢は絶対に採りたくないに違いない。
 けれど、俺はあえて言う。

「心苦しいですが……そう言わざるを得ません。それに、魔法学院関係者だけじゃない。神官の皆さんにも逃げていただかなければなりません。皆さんは治癒術が使える。神に仕える方々に、神都を見捨てろなど、ひどいことを言っているのは承知していますが……」

 俺は「街を捨てる」という判断が相当に辛いものだということは十分に分かっている。
 過去、王都を捨てざるを得なかったあのとき、本当に身を切られるような思いがしたからだ。
 それを人に強いるというのは、できることならしたくない。
 けれど、それでもしなければならないときがある。
 今がそうだ。
 だから何とか説得しようと口を開きかけたそのとき、神官の手がすっと上がった。

「……いえ、お話、よく分かりました。貴方あなたが安易な考えで言っているわけではないことも。ですから、そんな辛そうな顔をするのはやめてください」

 意外な言葉がかけられた。

「……辛そうな顔を、俺はしていますか?」
「ええ。私たちよりもよほど、ね。大切なものを失った経験がおありと見える。貴方あなたがそこまで言うのであれば……仕方がありません。可能性として、考えておきましょう」
「……ありがとうございます」

 どうやら、昔のことを思い出している俺の顔はよほどひどいものだったらしい。むしろ心配そうに言われてしまった。
 説得の手間が省けたと考えればいいのだろうが、これから自分の拠りどころを捨てることも視野に入れなければならない人にそんな気遣いをさせてしまい、申し訳なく思った。
 神官は、俺に首を振って言う。

「いえ。こちらこそ。さて……では、そろそろ貴方あなたも前線に戻られたほうがよろしいでしょう」

 神官につられて、俺も前線に視線を向けた。
 確かに、また陣形が崩れ始めている。全体のバランスを再度整えるために、指示を出しに行く必要があるだろう。

「ええ。では……行きます。怪我人が来たら、よろしくお願いします!」

 そう言って、俺は駆け出した。


 ◇◆◇◆◇


「撤退!? 何を言ってるんだ! そんなこと考える必要はないだろう!」
「俺たちはまだまだ戦えるぜ! 教授たちだって今も戦ってるだろうが!」

 戦場に散らばった各班に、指示を与えるのに加えて撤退する可能性についても伝えると、抗議の声が上がった。
 それも当然だ。今のところ、少なくとも俺たちは負けていない。
 教授たちの活躍を見れば、むしろこちらが押していると言っても間違いではないだろう。
 けれど……

「俺は今すぐ撤退すると言ってるわけじゃない! その可能性も考えておけと言ってるんだ! 教授たちは確かに強いが、魔力は無尽蔵じゃない! 俺たちもだ。だが、あいつらは……魔人たちの魔力は底なしだ。それに、魔物もいくらでも呼んでくる! それを考えると、今の状況は必ずしも有利とは言えない!」

 俺の反論に、抗議していた者たちの多くは口をつぐんだ。俺の言うことにも一理ある、と認めたわけだ。
 それに、戦況は流動的であり、常に色々な可能性を考えておく必要があるということは、学院で学んだ鉄則でもある。
 そんなことは絶対にあり得ないと最初から可能性を排除してしまったら、回避できたはずの危機に陥ることだってあるのだ。
 それを魔法学院生は誰もが分かっている。だからこそ、渋々、皆は俺の言葉に頷いた。

「くそっ! 仕方ねぇな! 退路は確保しておく!」
「教授たちが負けるとは思えないがなぁ……分かったよ! 撤退の可能性も考えておくって!」

 苦い顔をしながらも、それぞれが納得してくれたようだった。
 そうして、ほぼすべての班を回り指示を伝え終えたところで、俺はノールたちのもとに向かって走った。
 ノールたちのところにたどり着くと、そこではぎりぎりの戦いが繰り広げられていた。
 今はまだ神兵たちが何とか抑えているが、前方からは豚鬼オークの集団が向かってきている。
 それだけならまだよかったが、その奥には大豚鬼グランドオークと呼ばれる豚鬼オークの上位個体がいた。
 そのせいか、統制が怪しかった魔物たちの集団の中では珍しく、かなり整った陣形を作ってこちらに向かってきている。
 あれは間違いなく手強い。それが遠くから見ただけで分かった。

「……ジョン! 戻ったか」

 ノールが合流した俺に言う。

「あぁ……あいつはやばそうだな。神兵たちに任せて何とかなるか……?」

 すると、ノールは険しい表情ながらも冷静に言う。

豚鬼オークたちは何とか大丈夫だと思う。だけど、大豚鬼グランドオークは損害を覚悟しないと難しいかもしれない」
「損害……それはダメだ。仕方ないな。俺が倒す」

 これだけの戦いだ、死者が一人も出ないなんてことは土台無理な話だと、分かってはいた。
 けれど、目の前でその可能性があると改めて言われて、それは仕方ないと見捨てることなど、やはり俺にはできない。
 幸い、俺には大豚鬼グランドオークくらいなら何とかできる力がある。だったら、その力を使うだけの話だ。
 言い切った俺に、ノールは呆れた顔をした。

「……お前なぁ……」

 けれど、すぐにふっと笑う。

「仕方ないな。行って来いよ。さっきまでは俺たちだけで何とかしてたんだ。今度だって支えてやるさ」

 トリスとフィーも、諦めたように笑って言う。

「無理ばっかりして、結構ええかっこしいよね、ジョンって」
「それがジョンのいいところだよ! 僕も大豚鬼グランドオークと戦いたかったけど、ここは譲ることにする!」

 皆、快く送り出してくれた。理解がある仲間というわけである。
 神兵たちは、大豚鬼グランドオークを確認した時点で死も覚悟していたらしく、表情をこわらせて俺たちに言う。

「俺たちが当たって何とか隙を作るから、お前たちはそこを狙って魔法を叩き込んでくれ! それで倒せる!」

 しかし、それでは神兵に負傷者が出てしまう。だからこそ、俺は自分の考えを伝える。

「いえ、俺が直接一騎打ちで倒します。ですから皆さんは周りの豚鬼オークたちを引きつけておいてください!」

 神兵たちは、目を見開いて口々に心配してくれた。

「若いんだから命を大事にしろ!」
「魔術師が前に出てどうすんだ! あいつ滅茶苦茶強いんだぞ!」

 彼らの言うことは、普通に考えればごくもっともだ。
 しかし俺は反論する。

「これで剣には自信があるんです! 俺の親父はアレン・セリアスですからね。親父仕込みの剣は、あんなでかい豚なんかにやられたりはしませんよ!」

 すると神兵たちは驚いたような顔をした。

「あの魔剣士の息子!?」
「それなら、何とかなる……のか?」
「いや、だが大豚鬼グランドオークだぞ!? 上位の魔物相手に魔法学院生が太刀打ちできるか!? 魔法じゃなくて腕っぷしで!」

 様々な声が上がったが、もう彼らを説得するような時間はない。

「……行きます! お願いしますよ!」

 俺はそれだけ言って、豚鬼オークの群れに向かって走り始めた。
 口で説明しても分かってもらえないだろうから、実際に見せて納得させるしかない。そう考えての突撃だ。
 そんな俺の無謀とも思える行動を見た人々から驚きと制止の声が聞こえてきたが、現実的に考えてこの方法が最も死者が出る可能性が低いのだ。
 目の前に、豚鬼オークの群れが迫る。
 俺は剣を構え、静かにささやいた。

「……少し、力を貸してくれ。ファレーナ」

 前世から付き合いのある、何者か分からない少女。
 俺は魂の一部をファレーナに与えて契約し、その代わりに彼女から力を借りることができる。
 この状況を確実に切り抜けるには、ファレーナにも手伝ってもらうしかない。
 そして、耳に声が聞こえる。
 姿は見えない。隠れているから。
 しかし、俺の相棒の声は確かに俺の耳に響いた。

「すこし、ね……わかった。だいいちのせいげんかいじょミール・リーモ・イベリゴ……こんなものでどうかな?」

 身体に力が満ちた。
 大豚鬼グランドオークくらいなら、これで十分だ。
 俺は、再度足に力を込める。
 負ける気が、しなかった。



 第5話 大豚鬼グランドオークとの戦い


 大豚鬼グランドオーク。それは、まるで巨大な豚が二本足で立ちあがったような姿をした醜悪な魔物で、豚鬼オークの上位個体である。
 豚鬼オークとの違いは、まず第一に身体の大きさにあった。
 通常の豚鬼オークも人間と比べると相当な巨体を誇り、二メルテ近くあるのだが、大豚鬼グランドオークはそれよりもさらに巨大で三メルテ近くある奴が多い。
 俺の目の前にいる個体もその例に漏れず、かなり大きな身体をしていた。
 一般的な大豚鬼グランドオークよりも大きい気がする。三メルテ半はあるのではないだろうか。
 豚鬼オークは基本的に身体が大きくなればなるほど、強力な個体だと言われている。
 そこから考えると、目の前の個体は一般的な大豚鬼グランドオークと比べても強い可能性が高い。
 さらに違いを挙げるなら、その体型だ。
 一般的に豚鬼オークと言えば、かなりふくよかというか、腹が出ているだらしない体型をしていることが多い。
 けれど、大豚鬼グランドオークの体は引き締まっていて、筋肉の鎧をまとっているようなのである。それも、瞬発力とともに持久力も兼ね備えた理想的な筋肉だ。
 実際、大豚鬼グランドオークは普通の豚鬼オークよりもずっと俊敏な動作をするし、力もある。
 足の速さだけは通常の豚鬼オークとさして変わらないのだが、それ以外はもはや完全に別種の生き物と言っていいくらいに強い。
 それが、大豚鬼グランドオークと呼ばれる魔物だった。
 当然のことながら、前世において、一兵卒はこいつを見かけたら絶対に戦うな、逃げろと言われた。
 ある程度強力な騎士や魔術師がいないのであれば、勝つことは難しいからである。
 個体での戦闘力もさることながら、周囲の豚鬼オークを統率する力も有するので、こいつらの一団だけでもかなり厄介だ。できれば一般兵だけで行軍しているときには出会いたくない魔物の一種だったと記憶している。
 しかし、今はそんなことは言っていられない。
 基本的に退却は最後の手段に取っておくべきこの戦いで、目の前に現れてしまった大豚鬼グランドオークと戦わないという選択肢を易々と選ぶわけにはいかない。
 もし大豚鬼グランドオークから逃げるにしても、ある程度向こうを消耗させておかなければ、全体の撤退のときに支障が出るかもしれないのだ。
 そんな強力な大豚鬼グランドオークとの戦いを神兵に任せたら、彼らは死ぬだろう。
 だから、俺が戦う以外に方法はない。
 幸い、俺にはファレーナがついている。彼女の力によって底上げされた身体能力、それにファレーナによる援護があれば、十分に戦うことは可能だ。
 俺は地面を蹴り、大豚鬼グランドオークに向かい剣を構えて近づく。

「うぉぉぉぉぉッ!!」

 叫びながら突っ込んだために、大豚鬼グランドオークは俺の存在に気づいて振り向いた。
 そして、手に持った巨大なこんぼうを構え、こちらに向かって振り上げる。

「ブモォォォォォォ!」

 動物的な叫び声が辺りに響き渡り、びりびりと俺の腹が震える。
 しかし、大豚鬼グランドオークの瞳には理知の輝きがある。ただの動物ではないのだ。
 魔物は会話できないものが多いが、豚鬼オークたぐいは同種同士で会話するための言語らしきものを持っている。
 まれに人語を解することもある、というくらいに、人に近いところのある魔物だ。
 そういった知恵があるからには、当然、戦いにおいて相手の行動を読むことも普通に行うため、ただの動物に近い魔物たちよりよほど厄介とされていた。
 事実、目の前の大豚鬼グランドオークは俺の方を見て、動きを観察している。
 どう動き、どう攻撃してくるのか、しっかりと見極めようとしているのだ。
 これは時間がかかるかもしれないな、と思った。
 しかし、周囲の状況はかんばしくない。
 俺たちの班やそれと組んでいる神兵たちもそうだが、この戦場において俺たちは決して有利とはいえない状態なのである。
 できる限り、目の前に存在している敵は早めに倒していかなければ、どこから崩れるか分かったものではない。
 だから、俺は大豚鬼グランドオークをさっさと片付けるべく、初めから全力の戦いを挑む。
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