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第7話 ゴブリンの希望
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何か行動を起こさなければまずい。
ゴブリンのあまりの弱さに気づいた俺が思ったのがまずそれだった。
しかし一体何をすればいいのか。
鍛えたところで強くなれるのか?
俺の父であるラードのステータスを見る限り、とてもではないがそうは思えなかった。
聞くところによるとどうも彼の年齢は十歳らしいのだが、生まれて一年が経つ頃には、すでに狩りの戦力として普通に数えられるようになっていた、とも言っていたから、およそ九年の戦闘経験がある、と考えて間違いない。
にも関わらずあのステータスなのだ。
鍛え続けてもゴブリンはあれくらいにしかなれないのではないか。
そんな恐ろしい推測が俺の頭を過ぎった。
そしてそれが正しいとすると、俺も父と同じ程度のステータスにしかなれないということになる。
それではどう考えてもこの世界で生き残ることは難しく、女神の元に再度生まれ直しをするために行くことになるだろう。
考えようによっては、ゴブリンなどに生まれたのだから、もう一度チャンスをもらって人間になる機会をもらった方がいい、とも言えなくもない。
ただ、重要なのは、もう一度転生の機会を得たところで、ゴブリンよりもいい転生先に生まれられるとは限らない、ということだ。
虫などにはならないとは一応保証されているが……それくらいで、何かとんでもない生き物になる可能性はないではない。
それならばゴブリンの方がまだマシというものだろう。
とりあえず、ゴブリンとして生き残る努力をして、失敗したらまた転生するときに考えればいい。
そうした方が建設的だ。
ただ、せめてゴブリンとして頑張るにしても、何か指針が必要だ。
そのために俺は、ゴブリンたち全員を今一度しっかり《真実の目》で観察してみることにした。
他人のステータスは見れば分かるわけだが、称号や技能についてはさらにそれらについて意識するとその詳細がわかる。
この間、ゴブリン父たちを見たときにはステータスの低さに目がいってしまって、技能などについてはそこまで詳しくは見ていなかったので、今回はそれを確認した。
すると、面白いことが分かった。
ゴブリンにはほとんど全て《早熟》という技能がついているのだが、これの効果がかなり重要だったのだ。
その説明はこうだ。
早熟:成人になるまでの期間をおよそ一年に短縮する。その代わりに、成人になった後の成長率は極めて低くなる。
なるほどな、と思った。
ゴブリンが大人になってから狩りをいくら続けても大して強くなれない原因はこれなのだ。
考えてみれば、俺の一族のゴブリンたちのレベルは皆、一様に低い。
また技能の数も、そのレベルも低い。
これはゴブリンが、生まれて直後から成人になるまでの成長にその潜在能力の全てを注ぎ込んでいるからではないだろうか。
これさえなければ、ゴブリンは普通の人間と同じような成長が見込めるのではないか。
そう思った。
しかし、それは無理な相談だった。
一族にはポコポコと子供が産まれるので、彼らについてもステータスを観察してみたが、ほとんど全てのゴブリンに《早熟》スキルがついていたからだ。
スキルは基本的に外すことができず、これを持っている時点で今の俺にはどうしようもない。
幸い、というべきか、俺にはこれはついていなかったから成長はなんとか見込めそうだということはわかった。
それに、ごく稀にだが、《早熟》のついていない子供というのもいた。
なんでなのか不思議だったが、父や母の話によれば、ゴブリンの中にも稀に強力な戦士となれる才覚を持って産まれる者がいるのだという。
そういう者たちはいずれ、ゴブリンメイジやゴブリンファイターなどになり、最後にはゴブリンキングとなってゴブリン族の皆を率いる王になるのだ、という話だった。
ゴブリンの言い伝えである。
父や母は、この話を彼ら自身の両親や一族の者たちから教えられたのだろうが、俺はこれを聞いて思った。
そういう強力なゴブリンになるゴブリンというのは、《早熟》スキルを持たないゴブリンなのではないか、と。
俺は《真実の目》という特殊なスキルがあるから、《早熟》を持たないゴブリンが稀にいることを知っているが、他のゴブリンはそんなこと調べようがない。
だから気づかなかったのだろう。
そしてこの事実は俺にとってプラスに働くのではないか。
そんなことを思ったのは、生まれてひと月が経った頃、一族の子供たちが集められて、チームを組むように言われた時のことだ。
なんというか、五人組みたいな制度で、この時に組んだグループで死ぬまで一緒に狩りをするのがゴブリンの生き方だ、みたいなことを懇々と説明された。
メンバーのうちの誰かが魔王軍に呼ばれたらどうなるのか、と尋ねると、その場合はグループ全員で行くことになるから気にするなという。
まぁ、そもそも魔王軍に呼ばれるゴブリンなどこの一族には滅多にいないから本当に心配はいらない、と指導役のゴブリンが笑っていた。
そして、その場にいたゴブリンたちがグループを組もうとキョロキョロし始めたところで、俺は自らのスキル《真実の目》を使った。
それはもちろん、《早熟》スキルを持たないゴブリンと一緒に組むためだ。
この日のために、俺は毎日、子供を産む母ゴブリンたちのところを回って目をつけていたのだ。
この群には《早熟》スキルを持たないゴブリンが二匹いる。
俺はその二匹を見つけると、他の誰かが声をかける前にと一直線にその下へと走ったのだった。
ゴブリンのあまりの弱さに気づいた俺が思ったのがまずそれだった。
しかし一体何をすればいいのか。
鍛えたところで強くなれるのか?
俺の父であるラードのステータスを見る限り、とてもではないがそうは思えなかった。
聞くところによるとどうも彼の年齢は十歳らしいのだが、生まれて一年が経つ頃には、すでに狩りの戦力として普通に数えられるようになっていた、とも言っていたから、およそ九年の戦闘経験がある、と考えて間違いない。
にも関わらずあのステータスなのだ。
鍛え続けてもゴブリンはあれくらいにしかなれないのではないか。
そんな恐ろしい推測が俺の頭を過ぎった。
そしてそれが正しいとすると、俺も父と同じ程度のステータスにしかなれないということになる。
それではどう考えてもこの世界で生き残ることは難しく、女神の元に再度生まれ直しをするために行くことになるだろう。
考えようによっては、ゴブリンなどに生まれたのだから、もう一度チャンスをもらって人間になる機会をもらった方がいい、とも言えなくもない。
ただ、重要なのは、もう一度転生の機会を得たところで、ゴブリンよりもいい転生先に生まれられるとは限らない、ということだ。
虫などにはならないとは一応保証されているが……それくらいで、何かとんでもない生き物になる可能性はないではない。
それならばゴブリンの方がまだマシというものだろう。
とりあえず、ゴブリンとして生き残る努力をして、失敗したらまた転生するときに考えればいい。
そうした方が建設的だ。
ただ、せめてゴブリンとして頑張るにしても、何か指針が必要だ。
そのために俺は、ゴブリンたち全員を今一度しっかり《真実の目》で観察してみることにした。
他人のステータスは見れば分かるわけだが、称号や技能についてはさらにそれらについて意識するとその詳細がわかる。
この間、ゴブリン父たちを見たときにはステータスの低さに目がいってしまって、技能などについてはそこまで詳しくは見ていなかったので、今回はそれを確認した。
すると、面白いことが分かった。
ゴブリンにはほとんど全て《早熟》という技能がついているのだが、これの効果がかなり重要だったのだ。
その説明はこうだ。
早熟:成人になるまでの期間をおよそ一年に短縮する。その代わりに、成人になった後の成長率は極めて低くなる。
なるほどな、と思った。
ゴブリンが大人になってから狩りをいくら続けても大して強くなれない原因はこれなのだ。
考えてみれば、俺の一族のゴブリンたちのレベルは皆、一様に低い。
また技能の数も、そのレベルも低い。
これはゴブリンが、生まれて直後から成人になるまでの成長にその潜在能力の全てを注ぎ込んでいるからではないだろうか。
これさえなければ、ゴブリンは普通の人間と同じような成長が見込めるのではないか。
そう思った。
しかし、それは無理な相談だった。
一族にはポコポコと子供が産まれるので、彼らについてもステータスを観察してみたが、ほとんど全てのゴブリンに《早熟》スキルがついていたからだ。
スキルは基本的に外すことができず、これを持っている時点で今の俺にはどうしようもない。
幸い、というべきか、俺にはこれはついていなかったから成長はなんとか見込めそうだということはわかった。
それに、ごく稀にだが、《早熟》のついていない子供というのもいた。
なんでなのか不思議だったが、父や母の話によれば、ゴブリンの中にも稀に強力な戦士となれる才覚を持って産まれる者がいるのだという。
そういう者たちはいずれ、ゴブリンメイジやゴブリンファイターなどになり、最後にはゴブリンキングとなってゴブリン族の皆を率いる王になるのだ、という話だった。
ゴブリンの言い伝えである。
父や母は、この話を彼ら自身の両親や一族の者たちから教えられたのだろうが、俺はこれを聞いて思った。
そういう強力なゴブリンになるゴブリンというのは、《早熟》スキルを持たないゴブリンなのではないか、と。
俺は《真実の目》という特殊なスキルがあるから、《早熟》を持たないゴブリンが稀にいることを知っているが、他のゴブリンはそんなこと調べようがない。
だから気づかなかったのだろう。
そしてこの事実は俺にとってプラスに働くのではないか。
そんなことを思ったのは、生まれてひと月が経った頃、一族の子供たちが集められて、チームを組むように言われた時のことだ。
なんというか、五人組みたいな制度で、この時に組んだグループで死ぬまで一緒に狩りをするのがゴブリンの生き方だ、みたいなことを懇々と説明された。
メンバーのうちの誰かが魔王軍に呼ばれたらどうなるのか、と尋ねると、その場合はグループ全員で行くことになるから気にするなという。
まぁ、そもそも魔王軍に呼ばれるゴブリンなどこの一族には滅多にいないから本当に心配はいらない、と指導役のゴブリンが笑っていた。
そして、その場にいたゴブリンたちがグループを組もうとキョロキョロし始めたところで、俺は自らのスキル《真実の目》を使った。
それはもちろん、《早熟》スキルを持たないゴブリンと一緒に組むためだ。
この日のために、俺は毎日、子供を産む母ゴブリンたちのところを回って目をつけていたのだ。
この群には《早熟》スキルを持たないゴブリンが二匹いる。
俺はその二匹を見つけると、他の誰かが声をかける前にと一直線にその下へと走ったのだった。
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