上 下
64 / 112
第一章 おけつの危機を回避したい

六十四話

しおりを挟む
「学園の隠し通路を教えてほしい?」

 隊長さんは、目を丸くした。俺は頷いて、話を続ける。

「はい。生徒会の親衛隊は、警備のために学園の構造を熟知してますよね? 地下室とか――人を監禁出来そうな部屋を教えて欲しいんです」

 この学園の生徒会は、災害や強盗など――有事の際に生徒達を誘導出来るよう、隠し通路を知っていると聞いたことがある。生徒会の親衛隊の隊長も、その護衛として情報を共有している、とも……。
 つまり、隊長さんなら、シゲルの監禁されとる地下室の入口を、知っている可能性が高い――!
 隊長さんは、静かな目で頷く。

「有村くん、確かに僕は劔谷くんから教えて貰ったよ。でもね、あれは重要機密で――」
 
 俺は、深く頭を下げた。

「お願いします! シゲルが、榊原に攫われたんです!」

 シゲルのスマホを見せ、仲間の所にも帰ってへんことを訴える。

「この前、妙な薬を隠し持っとるんを見つけてしもて――捕まったら、どんな目に遭うか。一刻も早く助けたいんです!」

 今こうしてる時も、あいつがどんな目に遭っているか――そう考えるだけで、心臓が凍りつきそうや。ぶるぶる震える拳を握りしめ、頭を下げ続ける。
 竹っちが心配そうに俺の肩に手を置いた。

「先輩、俺からもお願いします……!」
「有村くん、今井くんの事情はわかった。心当たりの場所はいくつかあるから、急いで行こう」
「……!」

 弾かれたように顔を上げる。
 隊長さんは、苦笑した。

「君達は僕らの恩人だし、助けない理由はないよ。ただ、重要機密で口外できないから――僕が案内する事になる。そう言うつもりだったの」
「隊長さん……! ありがとうございます!」 

 感謝で胸が熱くなる。もう一度深く頭を下げた。――シゲル……! すぐに助けに行くからな。
 すると、隊長さんはスマホで何処かへ連絡しながら、微笑した。

「どういたしまして。でも、そろそろ隊長って呼ぶのやめてよね」



 
 俺達は、廊下を走りながら協議する。
 榊原がシゲルを準備室で攫ったのは間違いない。なら、台車か何かで運んだはずや。

「今日は学祭やし、ゴミの収集の為に業者が入っとる。その格好に扮すれば、まず怪しまれんだやろうからな」
「なるほど。コスプレしてる生徒も多いもんな」

 竹っちも走りながら、頷く。
 とはいえ、人力で運んだんやったら、敷地内の遠くの棟までは行けへんはず。この周辺におるはずや。
 斉藤先輩はスマホを確認して、決然と言う。

「仲間に連絡取ってみたけど、午前十時以降、駐車場から車の出入りは無いって。このまま、隠し通路に向かおう」
「はい!」

 俺らは足を速めた。
 先輩は、学祭で賑わう道を巧みに避け、人の少ないルートを誘導してくれる。

「流石ですね」
「大したことないよ。急いだ方がいいから。……ここだけの話、榊原と懇意にしていた生徒が学園からいなくなっちゃう事って、以前もあったんだよ」
「そうなんですか?!」

 竹っちが、驚愕の面持ちで隊長さんを振り返る。

「みんな、表向きは自主退学ってことになってるけどね。でも、僕の後輩にも被害に遭いかけた子がいるから……」
「そんな……!」

 苦苦しげに言われた言葉に、俺は息を呑む。竹っちは叫んだ。

「酷え。あいつ、そんなことして捕まんないんですか!?」
「……榊原は、理事長の親戚筋なんだ。余程の証拠が無い限り、問題にならないみたい。その上、事件の内容が内容で、被害に遭った子も騒ぎにしたくないって気持ちがあるし」
「汚え。許せません」

 竹っちが、憤怒の表情になる。隊長さんも厳しい目で頷き、俺を振り返った。

「今井くんのこと、必ず助けようね」
「はい!」

 力強く頷く。
 俺らは、用具倉庫にある隠し通路から、地下に下りた。非常灯が照らす廊下は、薄暗く静まり返っとる。片側にずらりと、非常食の保管室や、災害用の避難室と札のかかったドアが並んどった。

「念の為、地上の隠し部屋を真柴達に探してもらってるから」
「ありがとうございます!」
「よし、急ごう!」

 俺らは三手に別れて、部屋を確認して行った。




□□




「いややぁ……! 死にたくないっ」

 おれは泣きながら、必死にいきんだ。ちょっとでも、媚薬を外に出さないと。早く、はやく……!

――ぷちゅ……ぷちっ。

 おけつの穴が、くぱくぱと音を立てて媚薬を吐き出す。しかし――

「ひっ!?」
「馬鹿なことを。勿体ないでしょう」

 おけつの穴を、親指で思いっきり押される。抉られる痛みを思い出して、身が竦んだ。
 すると榊原は、三センチくらいの長さの円錐を取りだして、穴に宛てがった。
 ずぶ……とおけつの穴に、先細りの筒がめり込み始める。

「やあッ」
「零さないよう、栓をしてあげましょう」

 ブニブニした円錐が、進んでくる。……痛くないけど、異物感に冷や汗が浮かんだ。

「ゃ……うぁ……」

 ずぶぶ……と粘着質な音を立てて、丸っとおけつの穴に収まってしもた。
 榊原はガムテープを取り出して、おれのおけつにバッテンに貼り付ける。

「ふふ。これで、出せないでしょう?」
「ひどい……!」

 いきんでも、テープで止められたゴム栓が邪魔をする。ぐちぐちと肛門が刺激されて、気持ち悪くて涙目になる。

「さて、私は次の準備がありますから。一人で楽しんでいなさい」
「なっ……!」

 榊原は、立ち上がると部屋を出て行こうとする。おれは、ハッとして叫んだ。

「待って! これ、抜いてよっ」
「お断りです」

 ぱたん、と扉が閉まる。
 おれは、わっと泣き伏した。

「ひとでなし! わああん……!」

 泣きながら、必死にいきむ。べこべこ、とゴム栓の先がテープに当たる音が、何度もする。
 媚薬はわずかに溢れるだけで、お腹はまだぱんぱんや。

「うう……! 助けて、晴海~! 助けて~!」

 おれはいきみながら、晴海の名前を呼び続けた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

なんで俺の周りはイケメン高身長が多いんだ!!!!

柑橘
BL
王道詰め合わせ。 ジャンルをお確かめの上お進み下さい。 7/7以降、サブストーリー(土谷虹の隣は決まってる!!!!)を公開しました!!読んでいただけると嬉しいです! ※目線が度々変わります。 ※登場人物の紹介が途中から増えるかもです。 ※火曜日20:00  金曜日19:00  日曜日17:00更新

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

少年ペット契約

眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。 ↑上記作品を知らなくても読めます。  小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。  趣味は布団でゴロゴロする事。  ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。  文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。  文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。  文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。  三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。  文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。 ※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。 ※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。

とうふ
BL
題名そのままです。 クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

たとえ性別が変わっても

てと
BL
ある日。親友の性別が変わって──。 ※TS要素を含むBL作品です。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

処理中です...