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第一章 おけつの危機を回避したい

六十四話

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「学園の隠し通路を教えてほしい?」

 隊長さんは、目を丸くした。俺は頷いて、話を続ける。

「はい。生徒会の親衛隊は、警備のために学園の構造を熟知してますよね? 地下室とか――人を監禁出来そうな部屋を教えて欲しいんです」

 この学園の生徒会は、災害や強盗など――有事の際に生徒達を誘導出来るよう、隠し通路を知っていると聞いたことがある。生徒会の親衛隊の隊長も、その護衛として情報を共有している、とも……。
 つまり、隊長さんなら、シゲルの監禁されとる地下室の入口を、知っている可能性が高い――!
 隊長さんは、静かな目で頷く。

「有村くん、確かに僕は劔谷くんから教えて貰ったよ。でもね、あれは重要機密で――」
 
 俺は、深く頭を下げた。

「お願いします! シゲルが、榊原に攫われたんです!」

 シゲルのスマホを見せ、仲間の所にも帰ってへんことを訴える。

「この前、妙な薬を隠し持っとるんを見つけてしもて――捕まったら、どんな目に遭うか。一刻も早く助けたいんです!」

 今こうしてる時も、あいつがどんな目に遭っているか――そう考えるだけで、心臓が凍りつきそうや。ぶるぶる震える拳を握りしめ、頭を下げ続ける。
 竹っちが心配そうに俺の肩に手を置いた。

「先輩、俺からもお願いします……!」
「有村くん、今井くんの事情はわかった。心当たりの場所はいくつかあるから、急いで行こう」
「……!」

 弾かれたように顔を上げる。
 隊長さんは、苦笑した。

「君達は僕らの恩人だし、助けない理由はないよ。ただ、重要機密で口外できないから――僕が案内する事になる。そう言うつもりだったの」
「隊長さん……! ありがとうございます!」 

 感謝で胸が熱くなる。もう一度深く頭を下げた。――シゲル……! すぐに助けに行くからな。
 すると、隊長さんはスマホで何処かへ連絡しながら、微笑した。

「どういたしまして。でも、そろそろ隊長って呼ぶのやめてよね」



 
 俺達は、廊下を走りながら協議する。
 榊原がシゲルを準備室で攫ったのは間違いない。なら、台車か何かで運んだはずや。

「今日は学祭やし、ゴミの収集の為に業者が入っとる。その格好に扮すれば、まず怪しまれんだやろうからな」
「なるほど。コスプレしてる生徒も多いもんな」

 竹っちも走りながら、頷く。
 とはいえ、人力で運んだんやったら、敷地内の遠くの棟までは行けへんはず。この周辺におるはずや。
 斉藤先輩はスマホを確認して、決然と言う。

「仲間に連絡取ってみたけど、午前十時以降、駐車場から車の出入りは無いって。このまま、隠し通路に向かおう」
「はい!」

 俺らは足を速めた。
 先輩は、学祭で賑わう道を巧みに避け、人の少ないルートを誘導してくれる。

「流石ですね」
「大したことないよ。急いだ方がいいから。……ここだけの話、榊原と懇意にしていた生徒が学園からいなくなっちゃう事って、以前もあったんだよ」
「そうなんですか?!」

 竹っちが、驚愕の面持ちで隊長さんを振り返る。

「みんな、表向きは自主退学ってことになってるけどね。でも、僕の後輩にも被害に遭いかけた子がいるから……」
「そんな……!」

 苦苦しげに言われた言葉に、俺は息を呑む。竹っちは叫んだ。

「酷え。あいつ、そんなことして捕まんないんですか!?」
「……榊原は、理事長の親戚筋なんだ。余程の証拠が無い限り、問題にならないみたい。その上、事件の内容が内容で、被害に遭った子も騒ぎにしたくないって気持ちがあるし」
「汚え。許せません」

 竹っちが、憤怒の表情になる。隊長さんも厳しい目で頷き、俺を振り返った。

「今井くんのこと、必ず助けようね」
「はい!」

 力強く頷く。
 俺らは、用具倉庫にある隠し通路から、地下に下りた。非常灯が照らす廊下は、薄暗く静まり返っとる。片側にずらりと、非常食の保管室や、災害用の避難室と札のかかったドアが並んどった。

「念の為、地上の隠し部屋を真柴達に探してもらってるから」
「ありがとうございます!」
「よし、急ごう!」

 俺らは三手に別れて、部屋を確認して行った。




□□




「いややぁ……! 死にたくないっ」

 おれは泣きながら、必死にいきんだ。ちょっとでも、媚薬を外に出さないと。早く、はやく……!

――ぷちゅ……ぷちっ。

 おけつの穴が、くぱくぱと音を立てて媚薬を吐き出す。しかし――

「ひっ!?」
「馬鹿なことを。勿体ないでしょう」

 おけつの穴を、親指で思いっきり押される。抉られる痛みを思い出して、身が竦んだ。
 すると榊原は、三センチくらいの長さの円錐を取りだして、穴に宛てがった。
 ずぶ……とおけつの穴に、先細りの筒がめり込み始める。

「やあッ」
「零さないよう、栓をしてあげましょう」

 ブニブニした円錐が、進んでくる。……痛くないけど、異物感に冷や汗が浮かんだ。

「ゃ……うぁ……」

 ずぶぶ……と粘着質な音を立てて、丸っとおけつの穴に収まってしもた。
 榊原はガムテープを取り出して、おれのおけつにバッテンに貼り付ける。

「ふふ。これで、出せないでしょう?」
「ひどい……!」

 いきんでも、テープで止められたゴム栓が邪魔をする。ぐちぐちと肛門が刺激されて、気持ち悪くて涙目になる。

「さて、私は次の準備がありますから。一人で楽しんでいなさい」
「なっ……!」

 榊原は、立ち上がると部屋を出て行こうとする。おれは、ハッとして叫んだ。

「待って! これ、抜いてよっ」
「お断りです」

 ぱたん、と扉が閉まる。
 おれは、わっと泣き伏した。

「ひとでなし! わああん……!」

 泣きながら、必死にいきむ。べこべこ、とゴム栓の先がテープに当たる音が、何度もする。
 媚薬はわずかに溢れるだけで、お腹はまだぱんぱんや。

「うう……! 助けて、晴海~! 助けて~!」

 おれはいきみながら、晴海の名前を呼び続けた。


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