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第一章 おけつの危機を回避したい
五十話
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「おーい、竹っち~!」
学校の自転車置き場で、竹っちは待っとった。(あ、うちは全寮制やけど、事情によって実家から通う子がおるから、ちゃんと駐輪場あんねんで)手ぇぶんぶん振って走ってくと、竹っちは歩いてくる。
「悪い、休みの日に呼び出しちまってさ」
「ええよ、ええよ。もともと準備出るつもりやったし、昨日の事とか気になってたし!」
「サンキュ。有村は?」
「一緒に来たけど、下駄箱で先生に捕まってたから、置いてきた」
晴海は医学部目指しとるから、先生らとよう話してるねん。
しっかりしとるよなぁ。おれなんか、まだ人生設計ノープランやけどさ。進路の話は後から混むから早い方がええって、姉やんも言ってたし、晴海はえらいと思う。
竹っちも感心したみたいに頷いて――ふいにため息を吐いた。
「なんでもガツッ! と決めててすげーよな、あいつ。好きなやつも、進路もさ。はー、俺もしっかりしねえとだ……」
「えっ。どしたん、なんかシリアスな感じちゃう?」
昨夜は、S・Yさんと楽しいご飯会やったんちゃうん。「S・Yのことで話したい」ってメッセ来てたし、てっきり、うきうきの恋バナを聞けるもんやと思ってたんやけど。……もしかして、なんか良くないことでもあったんかな。
竹っちは、頭をぽりぽり掻きながら話してくれた。
「んー、昨夜の事なんだけどさあ。S・Yにご飯ごちそうになるつったじゃん? オチから喋ると、俺だけじゃなかったんだよな」
「えっ?」
「俺以外にも、呼ばれてる人が三人くらい居てさ。みんなで楽しくメシを食ったわけ。リクエストしたホイコーロー作ってくれて、美味かったし? その人達とも顔見知りだったから、気まずいってことはなかったけどさ。「俺だけじゃなかったんかー!」とちょっとションボリつーかね。はは」
「……!」
竹っちは、明るい声で一気に喋ると、しょんぼりと眉を下げた。あからさまに空元気なんがわかって、おれは胸がしくしくした。
なんでや、S・Yさん。竹っち楽しみにしてたのに、ひどいやん。
そう言いたいのを堪えて、竹っちの背中をぽんぽんと叩いた。なんとなくやけど、竹っちはそういう事言われんの、望んでない気がしてんかな。
「そっかあ……それは、びっくりやな」
「おうよ。とはいえ、しょうがねえのはわかってんだ。男同士だしさ、俺が気になってるの、相手は察しようがねえんだもん」
「うん……」
「……だからさ。俺、告白してみようと思うんだ」
「へえっ!?」
爆弾発言に、ぎょっとして叫んだ。
告白!?
「えっ、えっ。こないだ、まだそういうのは早いって!」
「いや、のんびり構えんのはやめる! 俺はやっぱり、あの人と付き合いたいんだって、わかったんだ。昨日来てたの、かわいい生徒ばっかでさ。その人らにも、親切にして貰えて楽しかったけど――俺、あの人に構ってもらえねえことばっか、気にしてた」
「竹っち……」
真摯な言葉に、息を飲む。竹っち、なんて熱い目してるんや――
「だから……まず告白して、男として意識してもらう。相手が男も好きになれるからって、俺をそう言う目で見てくれるかはわかんねえし。脱・後輩して話はそれからだぜ!」
「おお!」
握りこぶしを掲げる竹っちのバックに、炎が燃えとる。その威勢に圧倒され、思わずおれも拳を握る。
「すごいぞ、竹っち! もちろん、応援するからなっ」
そう言うたら、竹っちはやる気に満ちた瞳で、おれの腕を掴んだ。
「サンキュ、今井! 実は、その言葉を待ってたぜ! 頼みてえことがあってさぁ」
「そうなん? 何でも言うてよ」
「実はさ――」
笑顔で頷いたおれは、持ち掛けられた提案に目をむいた。
「うーん」
うねうねと頭を揺らして、おれは唸る。すると、晴海がひょいと顔をのぞき込んできた。
「シゲル、どうした? ちゃんと温まってなかったんか?」
「う、ううん! 美味しいよ、ほらチーズもこーんなに伸びて」
「そら良かった」
笑って頭をポンポンされて、へらっとする。
そうそう。
今は、喫茶店で出すメニューの最後の試食会してるとこやねん。
当日の提供の練習も兼ねてお店形式でやってて、クラスは当日さながら、活気に満ちとった。
「らっしゃいらっしゃい! ハットクうまいよ! トッピングは三種類、好きなのかけてってくんな!」
「天使、ラーメン屋じゃないんだから」
威勢のいい愛野くんの接客に藤崎が突っ込んで、みんなどっと笑う。
うちは、チーズハットクのお店なんやで。調理の練習する時間もないから、「レンジでチンできるもんにして、トッピングをころうぜ!」と愛野くんが提案したそうな。
チーズのびるのおもろいし、いろんな味あんのも嬉しいなあ。
「うまーい。愛野くんやり手やねぇ」
「当日も楽しみやなー」
で、大道具のおれらは、一足先にお客さんの役やねん!
「初めて食ったけど、意外とうまいなコレ。お前のそれ、何味?」
既に一本食べ終わった上杉が、口の周りにケチャップつけて言う。
「これ? 黒蜜きなこやで」
「攻めたなおい。山田もクソ辛いやつ食ってたし。俺は定番が良いや」
「ははは。シゲル、食いきれへんだら言えよ」
「ありがとー」
笑って頷いて、離れたとこで鈴木・山田と喋ってた竹っちと目が合う。
その目が、「言ったか?」と尋ねて来てて、竹っちに課されたミッションを思い出してしもた。
あのとき――
「今井、俺はS・Yを花火に誘う。だから、お前も有村を誘ってくれ!」
「ええっ、なんで!?」
「俺だけが、後夜祭ぬけることになったんじゃ気まずいんだよ~! 頼む! お前も有村とぬけて、俺の罪を軽くしてくれ!」
友達に両手を合わして頼まれて、断れようか。
そういうことで、晴海を花火に誘うことになったけど……頼んだら来てくれるかなあ……
学校の自転車置き場で、竹っちは待っとった。(あ、うちは全寮制やけど、事情によって実家から通う子がおるから、ちゃんと駐輪場あんねんで)手ぇぶんぶん振って走ってくと、竹っちは歩いてくる。
「悪い、休みの日に呼び出しちまってさ」
「ええよ、ええよ。もともと準備出るつもりやったし、昨日の事とか気になってたし!」
「サンキュ。有村は?」
「一緒に来たけど、下駄箱で先生に捕まってたから、置いてきた」
晴海は医学部目指しとるから、先生らとよう話してるねん。
しっかりしとるよなぁ。おれなんか、まだ人生設計ノープランやけどさ。進路の話は後から混むから早い方がええって、姉やんも言ってたし、晴海はえらいと思う。
竹っちも感心したみたいに頷いて――ふいにため息を吐いた。
「なんでもガツッ! と決めててすげーよな、あいつ。好きなやつも、進路もさ。はー、俺もしっかりしねえとだ……」
「えっ。どしたん、なんかシリアスな感じちゃう?」
昨夜は、S・Yさんと楽しいご飯会やったんちゃうん。「S・Yのことで話したい」ってメッセ来てたし、てっきり、うきうきの恋バナを聞けるもんやと思ってたんやけど。……もしかして、なんか良くないことでもあったんかな。
竹っちは、頭をぽりぽり掻きながら話してくれた。
「んー、昨夜の事なんだけどさあ。S・Yにご飯ごちそうになるつったじゃん? オチから喋ると、俺だけじゃなかったんだよな」
「えっ?」
「俺以外にも、呼ばれてる人が三人くらい居てさ。みんなで楽しくメシを食ったわけ。リクエストしたホイコーロー作ってくれて、美味かったし? その人達とも顔見知りだったから、気まずいってことはなかったけどさ。「俺だけじゃなかったんかー!」とちょっとションボリつーかね。はは」
「……!」
竹っちは、明るい声で一気に喋ると、しょんぼりと眉を下げた。あからさまに空元気なんがわかって、おれは胸がしくしくした。
なんでや、S・Yさん。竹っち楽しみにしてたのに、ひどいやん。
そう言いたいのを堪えて、竹っちの背中をぽんぽんと叩いた。なんとなくやけど、竹っちはそういう事言われんの、望んでない気がしてんかな。
「そっかあ……それは、びっくりやな」
「おうよ。とはいえ、しょうがねえのはわかってんだ。男同士だしさ、俺が気になってるの、相手は察しようがねえんだもん」
「うん……」
「……だからさ。俺、告白してみようと思うんだ」
「へえっ!?」
爆弾発言に、ぎょっとして叫んだ。
告白!?
「えっ、えっ。こないだ、まだそういうのは早いって!」
「いや、のんびり構えんのはやめる! 俺はやっぱり、あの人と付き合いたいんだって、わかったんだ。昨日来てたの、かわいい生徒ばっかでさ。その人らにも、親切にして貰えて楽しかったけど――俺、あの人に構ってもらえねえことばっか、気にしてた」
「竹っち……」
真摯な言葉に、息を飲む。竹っち、なんて熱い目してるんや――
「だから……まず告白して、男として意識してもらう。相手が男も好きになれるからって、俺をそう言う目で見てくれるかはわかんねえし。脱・後輩して話はそれからだぜ!」
「おお!」
握りこぶしを掲げる竹っちのバックに、炎が燃えとる。その威勢に圧倒され、思わずおれも拳を握る。
「すごいぞ、竹っち! もちろん、応援するからなっ」
そう言うたら、竹っちはやる気に満ちた瞳で、おれの腕を掴んだ。
「サンキュ、今井! 実は、その言葉を待ってたぜ! 頼みてえことがあってさぁ」
「そうなん? 何でも言うてよ」
「実はさ――」
笑顔で頷いたおれは、持ち掛けられた提案に目をむいた。
「うーん」
うねうねと頭を揺らして、おれは唸る。すると、晴海がひょいと顔をのぞき込んできた。
「シゲル、どうした? ちゃんと温まってなかったんか?」
「う、ううん! 美味しいよ、ほらチーズもこーんなに伸びて」
「そら良かった」
笑って頭をポンポンされて、へらっとする。
そうそう。
今は、喫茶店で出すメニューの最後の試食会してるとこやねん。
当日の提供の練習も兼ねてお店形式でやってて、クラスは当日さながら、活気に満ちとった。
「らっしゃいらっしゃい! ハットクうまいよ! トッピングは三種類、好きなのかけてってくんな!」
「天使、ラーメン屋じゃないんだから」
威勢のいい愛野くんの接客に藤崎が突っ込んで、みんなどっと笑う。
うちは、チーズハットクのお店なんやで。調理の練習する時間もないから、「レンジでチンできるもんにして、トッピングをころうぜ!」と愛野くんが提案したそうな。
チーズのびるのおもろいし、いろんな味あんのも嬉しいなあ。
「うまーい。愛野くんやり手やねぇ」
「当日も楽しみやなー」
で、大道具のおれらは、一足先にお客さんの役やねん!
「初めて食ったけど、意外とうまいなコレ。お前のそれ、何味?」
既に一本食べ終わった上杉が、口の周りにケチャップつけて言う。
「これ? 黒蜜きなこやで」
「攻めたなおい。山田もクソ辛いやつ食ってたし。俺は定番が良いや」
「ははは。シゲル、食いきれへんだら言えよ」
「ありがとー」
笑って頷いて、離れたとこで鈴木・山田と喋ってた竹っちと目が合う。
その目が、「言ったか?」と尋ねて来てて、竹っちに課されたミッションを思い出してしもた。
あのとき――
「今井、俺はS・Yを花火に誘う。だから、お前も有村を誘ってくれ!」
「ええっ、なんで!?」
「俺だけが、後夜祭ぬけることになったんじゃ気まずいんだよ~! 頼む! お前も有村とぬけて、俺の罪を軽くしてくれ!」
友達に両手を合わして頼まれて、断れようか。
そういうことで、晴海を花火に誘うことになったけど……頼んだら来てくれるかなあ……
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