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第一章 おけつの危機を回避したい
三十七話
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今世紀最大級に意味わからん発言をして、藤崎は「どうだ」と言うた。
「どうも何も、それが何やねん」
晴海が不審そうに問い返す。おれ含む仲間一同「うんうん」と頷くと、藤崎は米神を引きつらせた。
すると、愛野くんが困り顔で藤崎の腕をぐいっと掴んだ。
「良太。俺がレンと付き合ってるからって、どういうことだ? どうしてそれが、俺を嫌う理由になるんだ?」
「……純粋な天使には、わからないかもしれないな。以前、会計は人気があるって話をしたよな。あいつと付き合えば、醜い嫉妬の対象になるって。つまり――今井も、その手合いなんだ」
「ええっ!?」
「はあ?!」
こ、こいつ。大真面目な顔で、なにを素っ頓狂なこと言うてんの?
ぎょっとするおれらをよそに、愛野くんは稲妻に打たれたように、全身を震わせた。
「そうか……そういうことだったのか! そう言えば、今井がいつも絡んでくるって、レンも言ってた! ――今井、お前レンのことが好きで、俺に……!」
「全然違うし! 謎は解けた、みたいな顔せんといて!」
全身がぞぞぞーっと竦み上がる。とんだ風評被害や。おれが、なんで会計の事なんか、好きにならなあかんねん!
ほとんど反射的に、隣におる晴海の手をギュッと握りしめた。すると晴海も我に返ったようで、強い声で反論した。
「おい藤崎! 俺の恋人に、アホな言いがかりつけんなや!」
「ああ……有村は、今井と付き合ってるんだったか? 可哀そうにな、不貞をされて」
藤崎は、哀れんだ目で晴海を見る。かああっと頭に血が上った。
「恋人に浮気をされたやつ」なんて、男の沽券を最高に傷つける悪口やないか。
藤崎、よくも晴海に一度ならず、二度までも――!
「晴海を侮辱すんなっ!」
おれはわっと怒鳴って、藤崎の前に躍り出た。
「おれは、晴海の彼女やもん! 会計の事なんか、ちら~っとも好きやないわい!」
「なにっ?! 今井、有村と付き合ってたのか?! そのくせ、レンのことを……! さいってーだな!」
藤崎に言うてんのに、すぐさま愛野くんがしゃしゃり出てくる。おれは地団駄を踏んだ。
「ひ、人の話聞けよ、もう! 好きやないって言うてるやろッ!? なんで、いっつも周回遅れでリアクションすんねんっ! この、アホぼけなすっ!」
「何だとぉ!?」
顔を真っ赤にした愛野くんが、お猿のように飛びかかってきた。シャツの襟をちっさい手が万力で掴んできて、「オエッ」とえづく。――こいつ! おれかて、やられっぱなしやないんやからなっ……!
手を振り上げかけたとき、後ろから腕が伸びてきた。
「シゲルッ!」
「天使!」
どやどやと両陣営の仲間から、ストップがかかる。おれと愛野くんは引き剥がされて、それぞれの仲間に囲まれた。
晴海に羽交い締めにされて、おれはジタバタ暴れた。
「放して~!」
「シゲル、落ち着け! お前は殴ったらあかん!」
「そうだ、気持ちはわかるけどやめとけ! 手の骨折れんぞ!」
やんややんやと大騒ぎしとったら、藤崎に抱きすくめられた愛野くんが叫ぶ。
「お前みたいな浮気者に、レンは渡さねぇからなっ!」
「いらんわ、そんなもん!」
「落ち着けって!……愛野、あと藤崎も勘繰りはよせ。シゲルはなぁ、純な男なんや。浮気なんかするか!」
「晴海……!」
晴海がきっぱりと宣言してくれて、目が潤んだ。竹っちと上杉も、「そうだ!」と続いてくれる。
「今井と有村はなぁ、マジ好き合ってんだよ!」
「毎日イチャイチャしやがって、当てられまくってんだからな!」
しかし、ここまで来ても藤崎は揺るがんかった。むしろ、引っ込みがつかんのか、ヒートアップさえしてるみたいやった。
奴は、デカい足で一歩踏み出して、俳優みたいな身振りで腕を払う。
「そこまで言うなら、証拠を見せてもらおうか。今井と有村が、想い合っているという証拠を――!」
「は?」
証拠って。そんなもん、こんだけ言うてわからへんのに、どうやって解らせるって――
もっけとしたとき、愛野くんが人差し指を、鋭くおれに突きつけた。
「そうだ! そんなに好きだって言うなら、今ここでキスしろよ!」
「え」
きす。
キス。
キスって……!?
言葉の意味を理解して、おれはよろけた。おれを抱える晴海も、「な……!」と叫んだっきり絶句しとる。
「アホかあ! そんな人前で出来るわけないやろ……!」
「本当に好きなら出来るはずだっ。俺は出来るぜ! レンへの気持ちの証明になるなら!」
「ななな……!?」
嘘や。キスなんて、恋人同士のだいじな秘密のはずやんかぁ!
「どうも何も、それが何やねん」
晴海が不審そうに問い返す。おれ含む仲間一同「うんうん」と頷くと、藤崎は米神を引きつらせた。
すると、愛野くんが困り顔で藤崎の腕をぐいっと掴んだ。
「良太。俺がレンと付き合ってるからって、どういうことだ? どうしてそれが、俺を嫌う理由になるんだ?」
「……純粋な天使には、わからないかもしれないな。以前、会計は人気があるって話をしたよな。あいつと付き合えば、醜い嫉妬の対象になるって。つまり――今井も、その手合いなんだ」
「ええっ!?」
「はあ?!」
こ、こいつ。大真面目な顔で、なにを素っ頓狂なこと言うてんの?
ぎょっとするおれらをよそに、愛野くんは稲妻に打たれたように、全身を震わせた。
「そうか……そういうことだったのか! そう言えば、今井がいつも絡んでくるって、レンも言ってた! ――今井、お前レンのことが好きで、俺に……!」
「全然違うし! 謎は解けた、みたいな顔せんといて!」
全身がぞぞぞーっと竦み上がる。とんだ風評被害や。おれが、なんで会計の事なんか、好きにならなあかんねん!
ほとんど反射的に、隣におる晴海の手をギュッと握りしめた。すると晴海も我に返ったようで、強い声で反論した。
「おい藤崎! 俺の恋人に、アホな言いがかりつけんなや!」
「ああ……有村は、今井と付き合ってるんだったか? 可哀そうにな、不貞をされて」
藤崎は、哀れんだ目で晴海を見る。かああっと頭に血が上った。
「恋人に浮気をされたやつ」なんて、男の沽券を最高に傷つける悪口やないか。
藤崎、よくも晴海に一度ならず、二度までも――!
「晴海を侮辱すんなっ!」
おれはわっと怒鳴って、藤崎の前に躍り出た。
「おれは、晴海の彼女やもん! 会計の事なんか、ちら~っとも好きやないわい!」
「なにっ?! 今井、有村と付き合ってたのか?! そのくせ、レンのことを……! さいってーだな!」
藤崎に言うてんのに、すぐさま愛野くんがしゃしゃり出てくる。おれは地団駄を踏んだ。
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顔を真っ赤にした愛野くんが、お猿のように飛びかかってきた。シャツの襟をちっさい手が万力で掴んできて、「オエッ」とえづく。――こいつ! おれかて、やられっぱなしやないんやからなっ……!
手を振り上げかけたとき、後ろから腕が伸びてきた。
「シゲルッ!」
「天使!」
どやどやと両陣営の仲間から、ストップがかかる。おれと愛野くんは引き剥がされて、それぞれの仲間に囲まれた。
晴海に羽交い締めにされて、おれはジタバタ暴れた。
「放して~!」
「シゲル、落ち着け! お前は殴ったらあかん!」
「そうだ、気持ちはわかるけどやめとけ! 手の骨折れんぞ!」
やんややんやと大騒ぎしとったら、藤崎に抱きすくめられた愛野くんが叫ぶ。
「お前みたいな浮気者に、レンは渡さねぇからなっ!」
「いらんわ、そんなもん!」
「落ち着けって!……愛野、あと藤崎も勘繰りはよせ。シゲルはなぁ、純な男なんや。浮気なんかするか!」
「晴海……!」
晴海がきっぱりと宣言してくれて、目が潤んだ。竹っちと上杉も、「そうだ!」と続いてくれる。
「今井と有村はなぁ、マジ好き合ってんだよ!」
「毎日イチャイチャしやがって、当てられまくってんだからな!」
しかし、ここまで来ても藤崎は揺るがんかった。むしろ、引っ込みがつかんのか、ヒートアップさえしてるみたいやった。
奴は、デカい足で一歩踏み出して、俳優みたいな身振りで腕を払う。
「そこまで言うなら、証拠を見せてもらおうか。今井と有村が、想い合っているという証拠を――!」
「は?」
証拠って。そんなもん、こんだけ言うてわからへんのに、どうやって解らせるって――
もっけとしたとき、愛野くんが人差し指を、鋭くおれに突きつけた。
「そうだ! そんなに好きだって言うなら、今ここでキスしろよ!」
「え」
きす。
キス。
キスって……!?
言葉の意味を理解して、おれはよろけた。おれを抱える晴海も、「な……!」と叫んだっきり絶句しとる。
「アホかあ! そんな人前で出来るわけないやろ……!」
「本当に好きなら出来るはずだっ。俺は出来るぜ! レンへの気持ちの証明になるなら!」
「ななな……!?」
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