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第一章 おけつの危機を回避したい
二十七話
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「イメチェンしたんだよ、イメチェン。ちょっと思うところあってさあ。俺って、眼鏡って顔でもなくね? って」
「なんでだよ」
照れたみたいに頬かいとる竹っちに、鈴木が突っ込んだ。
「おい、眼鏡が本体って言ってたじゃねーか! 竹っちを返せ!」
上杉が、竹っちに掴みかかる。
「うわあ、何だこいつ!」
「お、落ち着きぃ、上杉!」
がくがくと竹っちを揺さぶる上杉を、慌てて止める。上杉と竹っち、グループ内の眼鏡コンビやったから、寂しいんやろうか。
すると、竹っちの横顔をまじまじと見て、晴海が「ははあ」と頷いた。
「しかし、急に男ぶりあがったなあ。竹っち……さては女やろ?」
「はあ!?」
竹っちは、顔をボン! と赤らめる。上杉・鈴木・山田が驚愕して身を乗り出す。おれは、ぷっと噴き出した。
「いややなあ、晴海。竹っちは男の子やん」
「馬鹿、そういう意味じゃねえから! ――竹っちに、女が出来たってことだろ!」
「ええーっ! そうなん!?」
全員分の視線の砲火を浴びて、真っ赤な顔の竹っちは両手を突き出した。
「ちっげーし! まだ付き合ってねえから!」
「”まだ”。女は確定ってことね」
「恋でポリシーを捨てやがったか……眼鏡族の面汚し!」
「春やなあ、竹っち」
「あああ」
やんや、やんやと皆に肩を組まれ、竹っちは悲痛な叫び声を上げた。
そんな風に、賑やかに騒ぎながら教室に向かう。上杉が近寄ってきて、こそっとおれに耳打ちした。
「竹っち、イメチェンは意味わかんねえけどさ。元気出て良かったよ」
「えっ? 落ち込んでたん?」
おれは、目をまん丸にした。
「うん。あいつさあ、お前らの部屋から帰ったあとな。「俺のせいで悪い」って、凹んじまって。愛野はムカつくけど、シモの話を公言するのは良くなかった、ってさ」
「そうやったんや……」
竹っちも、罪悪感を抱えてたんや……。しんみりと口を噤むと、上杉が明るく言う。
「でも、もう立ち直ったらしーや。昨日、出かけてたみたいだけど、それで出会いがあったんかな? 恋でも何でも、元気になったなら良かったぜ!」
「上杉……そうやな!」
おれも、ほっこりと頷いた。
上杉、さっき一番からかっとったのに。おちゃらけやけど、友達思いの男やねんかなあ。
竹っちも、ほんまに元気になってくれて良かった。竹っちの恋、おれも応援するからな。
『へえ、今そんな事になってるんだ?』
電話ごしに、姉やんが相槌を打つ。昼休みの被服室で、おれと晴海は現状を報告しててん。
「姉やん。これ、どうかな? 会計ルート、順調に進んどる?」
『順調だと思うわ。愛野くんと藤崎くんに、悪役モブがクラス行事から追放されるイベント、ゲームで見たし』
「そうなんや……」
『でも、大丈夫よ。親衛隊のこととか、ゲームと違うところも沢山ある。この調子で、頑張って!』
「わかった!」
熱くエールを送られて、おれはこぶしを握って見せた。姉やんは、「それより……」と晴海に向き直った。
『晴海くん、怪我させちゃってごめんね。シゲルを守ってくれて、ありがとう』
「いやいや。シゲルがぶたれた方が、辛いんで」
「……っ」
『あら、まあ!』
晴海の返事に、姉やんが華やいだ声を上げた。
ニヨニヨとした笑みを浮かべて、こっちを見つめてくる。
おれは、慌てて晴海の後ろに回り込む。熱々のほっぺ、姉やんに見られたくないんやもん。
「どした、シゲル?」
「気にせんといてっ」
『うんうん、その調子でよろしくね。――そういえば、送ってくれた薬、分析してたんだけどさ。それに伴って、また少し記憶が戻ったの』
「えっ!」
おれと晴海は、驚愕の声を上げた。
ゲームの記憶が戻ったって、どういうこと?
『正確には、より鮮明になったって感じかな。そこで、結構有用な情報があったの。これさえ気をつけておけば、フラグ回避できそうなくらい』
「ほ、ホンマに?!」
『ええ。それで、確認のため聞きたいんだけど。二人は最近、化学教師と会った?』
おれと晴海は、顔を見合わせる。
「授業に会う以外、ないですよ。なあ?」
「うん」
『やった! それなら、まず第一関門突破だわ。あのね……化学教師が、「シゲル」を悪事に誘うタイミングがわかったの』
「えっ?!」
『ズバリ、悪役モブがクラス行事を追放された直後なの。落ち込んでる「シゲル」を、準備室に連れ込んで、誘いをかけてたわ。……もう声かけられてたら、どうしようかと思ったけど。ホッとしたわ!』
姉やんは、心から安心したように言う。おれも、ぱあっと陽が差した気分や。晴海が、がしっとおれの肩を抱く。
「やったな、シゲル! お姉さん、情報ありがとう!」
「うん! ありがとう、姉やんっ」
『やだ、良いのよ。……でも念のため、これから特に化学教師に注意してね。絶対、シゲルと二人きりにならないように』
「わかった!」
「俺がついてます。任せてください」
『うん……薬を分析するうちに、もっと記憶が戻るかもしれないわ。その都度、情報共有してくから、よろしくね!』
「はい!」
おれと晴海は、姉やんの言葉に力強く頷いた。
「なんでだよ」
照れたみたいに頬かいとる竹っちに、鈴木が突っ込んだ。
「おい、眼鏡が本体って言ってたじゃねーか! 竹っちを返せ!」
上杉が、竹っちに掴みかかる。
「うわあ、何だこいつ!」
「お、落ち着きぃ、上杉!」
がくがくと竹っちを揺さぶる上杉を、慌てて止める。上杉と竹っち、グループ内の眼鏡コンビやったから、寂しいんやろうか。
すると、竹っちの横顔をまじまじと見て、晴海が「ははあ」と頷いた。
「しかし、急に男ぶりあがったなあ。竹っち……さては女やろ?」
「はあ!?」
竹っちは、顔をボン! と赤らめる。上杉・鈴木・山田が驚愕して身を乗り出す。おれは、ぷっと噴き出した。
「いややなあ、晴海。竹っちは男の子やん」
「馬鹿、そういう意味じゃねえから! ――竹っちに、女が出来たってことだろ!」
「ええーっ! そうなん!?」
全員分の視線の砲火を浴びて、真っ赤な顔の竹っちは両手を突き出した。
「ちっげーし! まだ付き合ってねえから!」
「”まだ”。女は確定ってことね」
「恋でポリシーを捨てやがったか……眼鏡族の面汚し!」
「春やなあ、竹っち」
「あああ」
やんや、やんやと皆に肩を組まれ、竹っちは悲痛な叫び声を上げた。
そんな風に、賑やかに騒ぎながら教室に向かう。上杉が近寄ってきて、こそっとおれに耳打ちした。
「竹っち、イメチェンは意味わかんねえけどさ。元気出て良かったよ」
「えっ? 落ち込んでたん?」
おれは、目をまん丸にした。
「うん。あいつさあ、お前らの部屋から帰ったあとな。「俺のせいで悪い」って、凹んじまって。愛野はムカつくけど、シモの話を公言するのは良くなかった、ってさ」
「そうやったんや……」
竹っちも、罪悪感を抱えてたんや……。しんみりと口を噤むと、上杉が明るく言う。
「でも、もう立ち直ったらしーや。昨日、出かけてたみたいだけど、それで出会いがあったんかな? 恋でも何でも、元気になったなら良かったぜ!」
「上杉……そうやな!」
おれも、ほっこりと頷いた。
上杉、さっき一番からかっとったのに。おちゃらけやけど、友達思いの男やねんかなあ。
竹っちも、ほんまに元気になってくれて良かった。竹っちの恋、おれも応援するからな。
『へえ、今そんな事になってるんだ?』
電話ごしに、姉やんが相槌を打つ。昼休みの被服室で、おれと晴海は現状を報告しててん。
「姉やん。これ、どうかな? 会計ルート、順調に進んどる?」
『順調だと思うわ。愛野くんと藤崎くんに、悪役モブがクラス行事から追放されるイベント、ゲームで見たし』
「そうなんや……」
『でも、大丈夫よ。親衛隊のこととか、ゲームと違うところも沢山ある。この調子で、頑張って!』
「わかった!」
熱くエールを送られて、おれはこぶしを握って見せた。姉やんは、「それより……」と晴海に向き直った。
『晴海くん、怪我させちゃってごめんね。シゲルを守ってくれて、ありがとう』
「いやいや。シゲルがぶたれた方が、辛いんで」
「……っ」
『あら、まあ!』
晴海の返事に、姉やんが華やいだ声を上げた。
ニヨニヨとした笑みを浮かべて、こっちを見つめてくる。
おれは、慌てて晴海の後ろに回り込む。熱々のほっぺ、姉やんに見られたくないんやもん。
「どした、シゲル?」
「気にせんといてっ」
『うんうん、その調子でよろしくね。――そういえば、送ってくれた薬、分析してたんだけどさ。それに伴って、また少し記憶が戻ったの』
「えっ!」
おれと晴海は、驚愕の声を上げた。
ゲームの記憶が戻ったって、どういうこと?
『正確には、より鮮明になったって感じかな。そこで、結構有用な情報があったの。これさえ気をつけておけば、フラグ回避できそうなくらい』
「ほ、ホンマに?!」
『ええ。それで、確認のため聞きたいんだけど。二人は最近、化学教師と会った?』
おれと晴海は、顔を見合わせる。
「授業に会う以外、ないですよ。なあ?」
「うん」
『やった! それなら、まず第一関門突破だわ。あのね……化学教師が、「シゲル」を悪事に誘うタイミングがわかったの』
「えっ?!」
『ズバリ、悪役モブがクラス行事を追放された直後なの。落ち込んでる「シゲル」を、準備室に連れ込んで、誘いをかけてたわ。……もう声かけられてたら、どうしようかと思ったけど。ホッとしたわ!』
姉やんは、心から安心したように言う。おれも、ぱあっと陽が差した気分や。晴海が、がしっとおれの肩を抱く。
「やったな、シゲル! お姉さん、情報ありがとう!」
「うん! ありがとう、姉やんっ」
『やだ、良いのよ。……でも念のため、これから特に化学教師に注意してね。絶対、シゲルと二人きりにならないように』
「わかった!」
「俺がついてます。任せてください」
『うん……薬を分析するうちに、もっと記憶が戻るかもしれないわ。その都度、情報共有してくから、よろしくね!』
「はい!」
おれと晴海は、姉やんの言葉に力強く頷いた。
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