22 / 112
第一章 おけつの危機を回避したい
二十二話
しおりを挟む
「び、びっくりしたー! なあ、晴海? まさか、愛野くんと会計が」
「ああ。さすが18禁ゲーム、展開が早い……!」
晴海は、腕組みしてうんうん頷いとる。
おれはドキドキしながら、鞄からお弁当を取り出した。ひとのエッチしてるとこ見たん、初めてや。なんか、音とか匂いとか、生生しいんやなあ。
どっちも知ってる人やからか、興奮はせんけど――顔合わすとき、ちょっと気まずいわ。
ってぼやいたら、
「わかるわ。にしても、鍵もかけんとヤるとは、ロックな奴らやで」
「せやなあ。おれら、ちゃんと鍵かけとるもんな?」
「えっ?」
おれらも、「転生」とか「フラグ回避」とか喋っとんの、人に聞かれたらなんやと思われるもんな。
会計と愛野くんかて、まさか見られると思って無かったと思うし――いくら人の来ん場所やっても、用心せな。
そう肝に銘じて、笑顔で晴海を振り返る。
「晴海、今日のお弁当なぁ……どしたん?」
晴海、めっちゃスクワットしてるんやけど。なんか「フンフン」言うてるし、鬼気迫る感じで怖い。
「気にすんな、ただの修行や」
「えーっ? なんでごはん前に」
ビシ、て突っ込んだら「今、触るでねぇ!」て怒られた。何やねん!
今日、唐揚げ上手にできたから、早よ食べて欲しいのにっ。
「シゲルー」
「ふん」
晴海が、猫なで声で呼んでくる。おれは、ふいっと顔を背けて、廊下を足早に歩いた。
晴海のアホ。スクワットしてるから、ご飯ゆっくり食べる時間なかったやんけ。
「……」
今日がいちばん、美味しくできたと思うのに。むっと眉をよせると、目が熱くなった。
「シゲル、ごめんっ」
「!」
後ろから抱き寄せられて、目を見開く。
いつもみたいにギューされるんやなくて、布団で包まれるみたいにされて……頬がかーっとあつくなった。
「な、なんやねん。恥ずかしいやろっ」
じたばたしたら、ほっぺに晴海のほっぺがひっついた。
「ぴゃっ」
「シゲルの唐揚げ、めっちゃうまかった。慌てて食うて、アホやった」
「……! や、やから、早よ食べよって言うたやん」
「申し訳ない」
ほんまに残念そうに言われて、胸がむずむずする。
唐揚げ、美味いって言うてくれた……!
笑いそうになるんを堪えて、ぶっきらぼうに言う。
「じゃあ。また作るから、食べてな?」
「おう!」
振り返った先に、めっちゃ嬉しそうな笑顔があって。
おれも、ついにへらへらしてしもた。
「――仲いいね?」
「わあ!?」
笑い合うおれらの間に、静かな声が割って入る。
がばぁ、と声の方を向けば、優姫くんが立っとった。
慌てて、晴海と離れる。
「優姫くん、見てたん?」
「いや、廊下でイチャついてたの、君たちだから」
優姫くんは苦笑しながら、髪の毛耳にかけとる。そんな仕草も可愛らしい。
「君たち、こっちの棟に何か用?」
「俺ら、部活なんです。レトロゲーム部で」
「そんな部活、あったの……それなら、また来るかもしれないし、言っておくけど」
優姫くんは、きりっと顔つきを改めた。
「こっちの棟、レン様……劔谷くんの根城にしてる、空き教室があるから。間違って入らないようにね。怒られちゃうよ」
「あ、ありがとうございます」
危なっ。
今日、まさに間一髪やってんな。恐々としつつ、お礼を言う。
すると、優姫くんはニッコリ笑った。
「いいよ。君たちのお陰で、僕もだけど――仲間たちも冷静になれたから。せいぜい、仲良くやってよね」
ほんで、「バイバイ」言うて、去っていった。手を振りながら、晴海を振り返る。
「優姫くん、元気そうやったね」
「せやな。……そういや、会計の親衛隊、あの人が纏めたんやってよ。鈴木が言うてたで」
「そうなん?!」
そう言えば、親衛隊が急に解散になったのに。「暴れた」とか、そういうのあんまり聞いてへん。優姫くんのおかげやってんな。
「ゲーム的にも、ええ方向に進んどるんちゃうか? お姉さんは確か――親衛隊が暴れて、愛野に絡むって言うてたやろ。あの感じやと、ないかもしれんぞ」
「そっか……またゲームの物語が、歪んだってことやね!」
晴海と拳をぶつける。
バカップル作戦、どんどん上手いこといってるやん。やったで、晴海ー!
おれらは、嬉しい気分で教室に戻った。笑顔のまま、戸を開けて――
「わかった、俺は愛野を信じる。俺の絵を、喫茶店に役立ててくれ」
「大橋……! ありがとうっ」
片目から涙を零した大橋と、目を真っ赤にした愛野くんが、固い握手を交わしとった。
教室の隅で桃園が泣いてて、山田が肩を抱いとる。
――えっ、どゆこと?
「ああ。さすが18禁ゲーム、展開が早い……!」
晴海は、腕組みしてうんうん頷いとる。
おれはドキドキしながら、鞄からお弁当を取り出した。ひとのエッチしてるとこ見たん、初めてや。なんか、音とか匂いとか、生生しいんやなあ。
どっちも知ってる人やからか、興奮はせんけど――顔合わすとき、ちょっと気まずいわ。
ってぼやいたら、
「わかるわ。にしても、鍵もかけんとヤるとは、ロックな奴らやで」
「せやなあ。おれら、ちゃんと鍵かけとるもんな?」
「えっ?」
おれらも、「転生」とか「フラグ回避」とか喋っとんの、人に聞かれたらなんやと思われるもんな。
会計と愛野くんかて、まさか見られると思って無かったと思うし――いくら人の来ん場所やっても、用心せな。
そう肝に銘じて、笑顔で晴海を振り返る。
「晴海、今日のお弁当なぁ……どしたん?」
晴海、めっちゃスクワットしてるんやけど。なんか「フンフン」言うてるし、鬼気迫る感じで怖い。
「気にすんな、ただの修行や」
「えーっ? なんでごはん前に」
ビシ、て突っ込んだら「今、触るでねぇ!」て怒られた。何やねん!
今日、唐揚げ上手にできたから、早よ食べて欲しいのにっ。
「シゲルー」
「ふん」
晴海が、猫なで声で呼んでくる。おれは、ふいっと顔を背けて、廊下を足早に歩いた。
晴海のアホ。スクワットしてるから、ご飯ゆっくり食べる時間なかったやんけ。
「……」
今日がいちばん、美味しくできたと思うのに。むっと眉をよせると、目が熱くなった。
「シゲル、ごめんっ」
「!」
後ろから抱き寄せられて、目を見開く。
いつもみたいにギューされるんやなくて、布団で包まれるみたいにされて……頬がかーっとあつくなった。
「な、なんやねん。恥ずかしいやろっ」
じたばたしたら、ほっぺに晴海のほっぺがひっついた。
「ぴゃっ」
「シゲルの唐揚げ、めっちゃうまかった。慌てて食うて、アホやった」
「……! や、やから、早よ食べよって言うたやん」
「申し訳ない」
ほんまに残念そうに言われて、胸がむずむずする。
唐揚げ、美味いって言うてくれた……!
笑いそうになるんを堪えて、ぶっきらぼうに言う。
「じゃあ。また作るから、食べてな?」
「おう!」
振り返った先に、めっちゃ嬉しそうな笑顔があって。
おれも、ついにへらへらしてしもた。
「――仲いいね?」
「わあ!?」
笑い合うおれらの間に、静かな声が割って入る。
がばぁ、と声の方を向けば、優姫くんが立っとった。
慌てて、晴海と離れる。
「優姫くん、見てたん?」
「いや、廊下でイチャついてたの、君たちだから」
優姫くんは苦笑しながら、髪の毛耳にかけとる。そんな仕草も可愛らしい。
「君たち、こっちの棟に何か用?」
「俺ら、部活なんです。レトロゲーム部で」
「そんな部活、あったの……それなら、また来るかもしれないし、言っておくけど」
優姫くんは、きりっと顔つきを改めた。
「こっちの棟、レン様……劔谷くんの根城にしてる、空き教室があるから。間違って入らないようにね。怒られちゃうよ」
「あ、ありがとうございます」
危なっ。
今日、まさに間一髪やってんな。恐々としつつ、お礼を言う。
すると、優姫くんはニッコリ笑った。
「いいよ。君たちのお陰で、僕もだけど――仲間たちも冷静になれたから。せいぜい、仲良くやってよね」
ほんで、「バイバイ」言うて、去っていった。手を振りながら、晴海を振り返る。
「優姫くん、元気そうやったね」
「せやな。……そういや、会計の親衛隊、あの人が纏めたんやってよ。鈴木が言うてたで」
「そうなん?!」
そう言えば、親衛隊が急に解散になったのに。「暴れた」とか、そういうのあんまり聞いてへん。優姫くんのおかげやってんな。
「ゲーム的にも、ええ方向に進んどるんちゃうか? お姉さんは確か――親衛隊が暴れて、愛野に絡むって言うてたやろ。あの感じやと、ないかもしれんぞ」
「そっか……またゲームの物語が、歪んだってことやね!」
晴海と拳をぶつける。
バカップル作戦、どんどん上手いこといってるやん。やったで、晴海ー!
おれらは、嬉しい気分で教室に戻った。笑顔のまま、戸を開けて――
「わかった、俺は愛野を信じる。俺の絵を、喫茶店に役立ててくれ」
「大橋……! ありがとうっ」
片目から涙を零した大橋と、目を真っ赤にした愛野くんが、固い握手を交わしとった。
教室の隅で桃園が泣いてて、山田が肩を抱いとる。
――えっ、どゆこと?
11
お気に入りに追加
170
あなたにおすすめの小説
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
なんで俺の周りはイケメン高身長が多いんだ!!!!
柑橘
BL
王道詰め合わせ。
ジャンルをお確かめの上お進み下さい。
7/7以降、サブストーリー(土谷虹の隣は決まってる!!!!)を公開しました!!読んでいただけると嬉しいです!
※目線が度々変わります。
※登場人物の紹介が途中から増えるかもです。
※火曜日20:00
金曜日19:00
日曜日17:00更新
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる