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第一章 おけつの危機を回避したい
十二話
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翌朝――。
おれと晴海は、おててを繋いで登校した。しかも、昨日よりレベルアップして、恋人つなぎやで。
「晴海、おれらラブラブカップルかな?」
「おう、パーフェクトや!」
「よっしゃ!」
晴海が、力強く太鼓判を押してくれる。心強い。
さすが、「恋人みたいに握って?」て頼んだら、すぐ指絡めてくれる男やで……!
「あれっ。晴海、こんなとこにタコある」
「ゲームダコちゃうか? シゲルは指細いなー」
「あははっ。やめぇ、くすぐったい」
指にぎにぎするだけで、楽しいんやから不思議。
初めてしてみたんやけど、恋人つなぎっていいもんやね。普通に繋ぐよりくっつけるし、安心感あるみたい。
運よく愛野くんと会計と遭遇せんと、おれらは教室に入った。竹っちの席に、みんな集まっとる。
「おはよう」
「おす。今日は、子泣きじじ井じゃないのな」
上杉にからかわれて、ぎょっとする。
「何それ! おれ、妖怪ちゃうし」
「有村にひっついて、離れなかったじゃーん」
「うっ」
そこを言われると、弱いやん。「ぐぬぬ」と呻いたとき、晴海がおれの肩を引き寄せた。
「はは。俺の彼女、甘えん坊やねん」
「!」
は、晴海……すごい!
さらりと言われたノロケに、みんな目をむいた。一拍遅れて、やんややんやと囃し始める。
「おま、有村! 腕を上げたな」
晴海はおれの肩を抱いたまま、爽やかに笑う。
「はは。ところで、気になっとったんやけど……お前、竹っちやんな?」
「はん?! 友達がわからんか?」
「あ、おれも気になってた」
「今井まで!」
薄情者! と竹っちは憤慨する。
でもな、友達がいきなり茶髪になっとったら、誰でも驚くと思うねん。出会った中二の頃から、昨日まで黒髪やったやん。
かろうじて、眼鏡と声でわかったんやで。
「イメチェンしたんだよ、イメチェン!」
竹っちは、ぐんと胸を反らす。
「昨日、会計に睨まれたろ? 今井にああは言ったけど、何かの拍子に覚えられてたら怖いからさー。わかんねえように、雰囲気かえとくかと思って。昨日、風呂場で染めたんだ」
「自分でやったん? すごいやん」
「ふふん」
感心する晴海に、竹っちは得意そうや。なるほど、それで茶髪になっとたんやね。たしかに、効果はバツグンやで。友達のおれらでさえ、一瞬解らんくらいやもん。
「ええやん、竹っち! びっくりしたけど、茶色いのも似合うわ」
「サンキュ! そうだ、今井もやらん?」
「おれも?」
「昨日さ、すっげぇ怖がってたじゃん。いっそ金とかにしちまえばさ、会計も絶対わからないって!」
力強くすすめられ、おれは「へへへ」と頬をかく。
「そうかなあ? それやったら、おれも」
「あかん! お前、毛染め液でかぶれて、一回ハゲかけたやろっ」
「いたっ」
呆れ顔の晴海に、オデコをぺちんと叩かれる。
たしかに、あんときは酷いことになったけど……! たまたま、あの製品が合わへんかっただけかもしれへんし。おれは、晴海の肩をつついた。
「晴海~、今回は平気かも」
「やめとき。痛いって泣いてたやろ?」
「……どうしてもあかん?」
「そもそも、俺はいやや。せっかく綺麗やのに……」
「えっ?」
「ん?」
綺麗?
きょとんとしとったら、晴海は不思議そうにおれを見返した。すると、「ヒューッ!」と上杉が口笛を吹いた。
「よっ、束縛彼氏!」
「昭和の男~」
「なっ!?」
晴海がぎょっと目をむいた。みるみるうちに、顔が真っ赤になっていく。
「や、やかましい。お前ら、一々からかうなよ!」
「やだよ、面白いもん」
「仲間内で、最初に恋人作ったやつは玩具だろ」
「なんやその、悪魔の取り決め!」
やいやい言い合っとるんを、ポカンと口空けて見とったら、竹っちに肩叩かれる。
「わり。お前はそのままでいてやって。有村のために」
竹っちはウインク一つ残し、晴海をからかう輪に踊りこんでいった。
おれは、前髪をつまむ。ばあちゃん譲りの明るい色は、自分でも気に入っとる。でも、不良っぽいとか、いろいろ言われることも多かってん。
いっつも、晴海は庇ってくれて……なんて友達思いなんやと、てっきり。
――俺はいやや。せっかく綺麗やのに。
そんな風に、思ってくれてたん?
「……っ!」
やば。急に、ほっぺがかーって熱くなってきた。
晴海のアホ。
そんなん、いっつもみたいにふざけて言うてや。
恥ずかしくて、「何言うてんねん!」て言えへんやん……!
おれと晴海は、おててを繋いで登校した。しかも、昨日よりレベルアップして、恋人つなぎやで。
「晴海、おれらラブラブカップルかな?」
「おう、パーフェクトや!」
「よっしゃ!」
晴海が、力強く太鼓判を押してくれる。心強い。
さすが、「恋人みたいに握って?」て頼んだら、すぐ指絡めてくれる男やで……!
「あれっ。晴海、こんなとこにタコある」
「ゲームダコちゃうか? シゲルは指細いなー」
「あははっ。やめぇ、くすぐったい」
指にぎにぎするだけで、楽しいんやから不思議。
初めてしてみたんやけど、恋人つなぎっていいもんやね。普通に繋ぐよりくっつけるし、安心感あるみたい。
運よく愛野くんと会計と遭遇せんと、おれらは教室に入った。竹っちの席に、みんな集まっとる。
「おはよう」
「おす。今日は、子泣きじじ井じゃないのな」
上杉にからかわれて、ぎょっとする。
「何それ! おれ、妖怪ちゃうし」
「有村にひっついて、離れなかったじゃーん」
「うっ」
そこを言われると、弱いやん。「ぐぬぬ」と呻いたとき、晴海がおれの肩を引き寄せた。
「はは。俺の彼女、甘えん坊やねん」
「!」
は、晴海……すごい!
さらりと言われたノロケに、みんな目をむいた。一拍遅れて、やんややんやと囃し始める。
「おま、有村! 腕を上げたな」
晴海はおれの肩を抱いたまま、爽やかに笑う。
「はは。ところで、気になっとったんやけど……お前、竹っちやんな?」
「はん?! 友達がわからんか?」
「あ、おれも気になってた」
「今井まで!」
薄情者! と竹っちは憤慨する。
でもな、友達がいきなり茶髪になっとったら、誰でも驚くと思うねん。出会った中二の頃から、昨日まで黒髪やったやん。
かろうじて、眼鏡と声でわかったんやで。
「イメチェンしたんだよ、イメチェン!」
竹っちは、ぐんと胸を反らす。
「昨日、会計に睨まれたろ? 今井にああは言ったけど、何かの拍子に覚えられてたら怖いからさー。わかんねえように、雰囲気かえとくかと思って。昨日、風呂場で染めたんだ」
「自分でやったん? すごいやん」
「ふふん」
感心する晴海に、竹っちは得意そうや。なるほど、それで茶髪になっとたんやね。たしかに、効果はバツグンやで。友達のおれらでさえ、一瞬解らんくらいやもん。
「ええやん、竹っち! びっくりしたけど、茶色いのも似合うわ」
「サンキュ! そうだ、今井もやらん?」
「おれも?」
「昨日さ、すっげぇ怖がってたじゃん。いっそ金とかにしちまえばさ、会計も絶対わからないって!」
力強くすすめられ、おれは「へへへ」と頬をかく。
「そうかなあ? それやったら、おれも」
「あかん! お前、毛染め液でかぶれて、一回ハゲかけたやろっ」
「いたっ」
呆れ顔の晴海に、オデコをぺちんと叩かれる。
たしかに、あんときは酷いことになったけど……! たまたま、あの製品が合わへんかっただけかもしれへんし。おれは、晴海の肩をつついた。
「晴海~、今回は平気かも」
「やめとき。痛いって泣いてたやろ?」
「……どうしてもあかん?」
「そもそも、俺はいやや。せっかく綺麗やのに……」
「えっ?」
「ん?」
綺麗?
きょとんとしとったら、晴海は不思議そうにおれを見返した。すると、「ヒューッ!」と上杉が口笛を吹いた。
「よっ、束縛彼氏!」
「昭和の男~」
「なっ!?」
晴海がぎょっと目をむいた。みるみるうちに、顔が真っ赤になっていく。
「や、やかましい。お前ら、一々からかうなよ!」
「やだよ、面白いもん」
「仲間内で、最初に恋人作ったやつは玩具だろ」
「なんやその、悪魔の取り決め!」
やいやい言い合っとるんを、ポカンと口空けて見とったら、竹っちに肩叩かれる。
「わり。お前はそのままでいてやって。有村のために」
竹っちはウインク一つ残し、晴海をからかう輪に踊りこんでいった。
おれは、前髪をつまむ。ばあちゃん譲りの明るい色は、自分でも気に入っとる。でも、不良っぽいとか、いろいろ言われることも多かってん。
いっつも、晴海は庇ってくれて……なんて友達思いなんやと、てっきり。
――俺はいやや。せっかく綺麗やのに。
そんな風に、思ってくれてたん?
「……っ!」
やば。急に、ほっぺがかーって熱くなってきた。
晴海のアホ。
そんなん、いっつもみたいにふざけて言うてや。
恥ずかしくて、「何言うてんねん!」て言えへんやん……!
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